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ドライアドさんのお茶ポーション  作者: べべ
第6章:「ドライアドさんと日常生活」
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第77話:彼のお茶

どもどもべべでございます!

例によってギリギリです! 申し訳ない!

モフウサを最近重視しすぎてるなぁ、前にもこう書いた気がする。

バランス、バランスやで……。

そんなこんなでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!

 

 ふくよかな畳の香り。

 まだまだ新しいため、それは自然の強さがでた青々しいものです。

 その香りをどこか懐かしく感じてしまうのは、やはり私がここを大いに気に入っているからでしょう。

 浮遊をやめ、うつ伏せに寝転がってみます。

 小さな網目が程よく肌にフィットし、キュッと吸い付くような感覚。あまり寝すぎると畳の跡がつくんですが、そのくらいの周知は甘受しようと思えるほどにしっくりきます。


 寝転がったまま、深呼吸。

 畳の香り以外にも、どこかゴンさんの香りがしたり、ノーデさんの香りがしたり、お茶の香りがしたり。

 生活臭も彩ってくれるのが畳の良いところですよねぇ。


「ふふふ、くつろいでおられますね。管理者様」


「あっ、ノーデさん!」


 声のした先に視線を向けると、そこには見送りの時と変わらぬ笑顔の素敵なあの子がいました。

 ノーデさんは、やはりカワイイですねぇ。あの笑顔を見るだけで、心が晴れやかな気分になりますよぉ。

 そんな笑顔のノーデさんと、うつ伏せで寝転がる私。きっちり服を着ているので何とも言えませんが、これがデノンさんとかならお腹周りが覗けそうなのになぁとか思ってしまいますね。

 うん、ですがそれでもノーデさんはカワイイ。少し残念な気分だけど、ノーデさん見てるだけでご飯いけちゃう気分です。


「……やはり痛みます? お尻」


「それはもう!」


 というか、ノーデさんとか愛でて気分を紛らわせないと痛くてしょうがないのです!

 ゴンさんのお仕置きお尻ぺんぺんをしっかりいただいた私のお尻は、今や限界寸前の水風船。ちょっとの刺激でペットボトルロケットもかくやという勢いで飛び立てる自信がありますとも!


「いやぁ、容赦しながらもしっかりとダメージを与えつつ、回復を禁止するだなんて……はぁ、はぁ……流石ゴンさん……♪」


「管理者様が良いのでしたならば、このノーデめから申す事は何もございません。守護者様もまた、『下手に動けるからやらかすのだ。しばらく動かすな』と言われておりました故」


「あはは~。まぁこの体勢のままなら浮いて移動できますし、ノーデさんが気にしなくても大丈夫ですよ~」


 こう言えば、ノーデさんはゴンさんのお言葉を優先して私には気を使いすぎないでしょうしね。


「ところでノーデさん? 私としては、ノーデさんが持っているものの方が気になるのですが~」


「ふふ、流石は管理者様。帰ってきたお祝いといたしまして、ひとまずはひさしぶりに飲むであろう物をご用意いたしました」


 そういうノーデさんは、手にお盆を持ってきておりました。

 この家でお盆って言うと、もはや考えられるのは1つしかありません。

 ずばり、お茶でしょう!


「どうぞ、ヤテン茶でございます」


「わは~い! ヤテン茶だ~!」


 サイシャリィでは結局飲んでいないお茶ですね! 嬉しくて目から樹液が溢れそうです。

 ふわりと漂う花の香り。しかし、同時に感じる薬膳っぽさ。

 元々が薬として作られ、飲みやすさの為に花を追加した由来があるため、この香りが伝統であるのは当然です。


「改めて、ピットでもガラス製のポットが広まりつつありまして。これはその試作として作られております。まだまだ透明度は足りませんが、色を見て判断できる点では十分に通用するでしょう」


 そう言ってノーデさんは、お盆をちゃぶ台に乗せました。

 私はこの体勢では見えないので、ふわりと浮いてティーポットを確認してみます。

 ふむん、確かに透明なガラスのポットにヤテン茶が入っていますねぇ。やや白みが入っていますが、むしろこのくらいの塩梅でもデザイン的にグーなのでは?

 なにより、中は確認できますからね。ヤテン茶がもっとも鮮やかな色合いの時に淹れる事ができるのは大きいです。


「いやぁ、これは大したものですよ~。ピットの職人さん達は、相変わらず良い仕事してますね~」


「皆にそう伝えておきましょう。……さ、どうぞ冷めない内に」


 そう言ってノーデさんは、カップに注いだヤテン茶をそっと置いてくれます。

 寝ながらの格好でティータイムなんてあまりに無礼ですね。ここは浮いたままでも、座った格好でいただきましょう。

 まずは、目で楽しみます。ヤテンの美しい桃色が、残暑を少しでも華やかなものにしようとしてくれているかのよう。

 香りも……うん、やはり素敵です。この薬草の独特な香りがないと、ヤテン茶とは言えませんよねぇ。


「では、いただきま~すっ」


 充分に堪能した所で、一口。

 舌先に感じるのは、苦み。舌が大人な感じの演出を受け入れて、背伸びをしているかのような気分になります。

 しかし、その苦みは永遠には続きません。すぐに広がるヤテンの甘さと、香りが苦みを軽減し、リセットしてくれるのです。

 苦みも甘みも、スッと抜けて行くのはある意味残念かもしれません。しかし、後に引かないからこそ、長く楽しまれるお茶なんだという事実もあるのです。


「うん……美味しい。やはり良いですねぇ」


「恐縮でございます」


 しかもこぉんなカワイイ子が淹れてくれたってんだから最高ですよねぇぇ?

 うぇへへへ、美味しさ倍率ドン! ですとも~。


「ん……ところで、ゴンさんの姿が見えませんが、どうしたんですかね?」


「あぁ、守護者様でしたら、今は洞窟にいらっしゃいますよ」


「洞窟にですか?」


 元はゴンさんの住処であり、今でも盗賊から奪ったいろんなお宝が眠ってるあそこで、一体何をされているのやら?


「はい、なんでも、封印しなければならないものがあるとか」


「おや、封印ですか?」


 一体なんでしょう。

 ゴンさんが言うからには、結構ヤバ目の雰囲気ですが……さて?


「はい、なんでも守護者様の力を内包したものだとか」


「……ほう?」


 あれ? 嫌な予感ですよ?


「それって……どんな見た目でした?」


「はい? あぁ、守護者様によく似た人形でしたね」


 ぶぅ!?

 いやぁぁ! それって、私が夜なべして作ったゴンさんぬいぐるみじゃないですかぁ!

 確かにあの中に入れたお茶はヤバい級のドーピング剤になりますが、何も封印しなくても!?


「と、と、と、止めないとっ」


「あ、管理者様……」


 いけません、いけませんとも!

 あのぬいぐるみを抱いて寝るのは、私の楽しみ! それを奪われてはたまりませんっ。

 即座に追いかけて、奪還を……


「あの、そんなに急がれては……」


「あっ!」


 ノーデさんの忠告は、一手遅かったようです。

 私は即座に旋回しようとして、ヤテン茶をこぼしそうになってしまいます。

 慌ててカップを水平にしようとし、同時に体の高度を下げて安定化を図り……


「ピッ」


 思い切り。

 尻もちを。

 ついて、しまいました。


「……か、管理者様……!」


「っ、っ……!」


 必死に堪えながら、カップをテーブルへ。

 良かった。零れてない……じゃあ……もう、ゴールしても、いいよね?


「っ、っ……あ、あひぃぃぃぃぃん!?」


 私は、空気を一杯に詰め込んだペットボトルロケットが如く、飛び出しました。

 その後、勢いそのままにゴンさんのいる洞窟にホールインワン。

 ぬいぐるみを燃やそうとしていたゴンさんに衝突し、2人して火だるまになるという三段落ちを披露してしまったのでありました。

 なお、ぬいぐるみはどさくさに紛れて無事だったことを、ここに明記しておきます。

 

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