第74話:キノコパンデミック
どもどもべべでございます!
モフモフ兎を更新しまくったせいで、こっちが圧迫されましたねw
均等に、均等に~
というわけで、ご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~
「えぇ……というわけでキノコ農家さん達のために、新しいキノコ作りが出来る環境を作って行きたく存じます!」
「わ~、パチパチ」
ワタクシ、心和は反省しました。
もう、目から鱗ですとも。あれほどの純粋な刃で胸を貫かれれば、目も覚めるというもの。
そう、いくら世界樹に呑まれていたとはいえ!(重要)
いくら世界樹が全部悪いとはいえ!(超重要)
なのでせめてもの罪滅ぼしに、エルフのキノコ農家さん達をお手伝いすべく、こうして馳せ参じさせていただきましたとも。
皆さんかなり訝しげでしたけど、そこはそれ!デノンさんがお顔を貸してくれたので問題なしでございます!
「……うちの畑を元に戻すってのは、本当かい?」
私の目の前には、畑の持ち主であるエルフさん達。
その瞳は、ダメになった原木達を憂いているご様子……彼らの涙を、私は早々に拭ってあげねばなりません。
それが、今の私の使命なのです!
「えぇ、お詫びの印として、私の気持ちを貴方達に!」
「で、でも、森の管理者はとてつもなくスケールのでかいやらかしをするって、もっぱらの噂だぞ?」
誰ですかそんな噂ばら撒いたの。
今すぐに訂正して欲しいものです。私ってばこうしてフォローできる範囲のやらかししかしませんよ!?
「ま、まぁまぁ……管理者様は植物は操れても、キノコは操れねぇ。あんたらのキノコがマンドラゴラになるなんて事は、万が一にもないはずだ」
「……フィルボの王が保証してくれるってんなら、いいんだけどさ……」
うんうん、やはりデノンさんにお願いして正解でしたね。
私だけでは、門前払いどころかお城まで強制送還だったことでしょう。
「まぁ、ご説明の通り私は、植物を生み出せますからね〜。改めて、ダメになった原木を補完しておこうという訳です!」
「それだけなら、まぁ……いいかな」
世界樹が生命力を吸い上げたあの日、ダメになった原木は、畑一面分くらいでした。
キノコの栽培に原木は必須。それを今から補完して、改めてキノコを作っていただこうという事ですね。原木くらいなら、私簡単に作れますし。
「……で、なんで俺まで呼ばれてるんだ?」
私の横から、お声がかかります。
どこか不満げで、どこか知ったような生意気な声色です。
「そりゃあ、キノコに詳しい知人がひとりでも欲しかったので~」
「俺は、茶を保存できるように加工する事だけが得意だって、言っただろう?」
ずんぐりした体型。
不機嫌そうながらも、整った美形パーツ。それを中心に抑え込んで行く、脂肪の本流。
エルフでこんな体型している人を、私は1人しか知りません。
「まぁまぁ、店主さんの知恵もお借りしたいのですよ~」
「はぁ……まぁ、キノコをどうにかせんと、俺も商売あがったりだからな。やぶさかじゃないが……」
そう、キノコ茶屋さんの店主さんです。
彼もまた、キノコに対して知恵のある一人ですからね~。私が知ってる人という事もあり、速攻で連行させていただきました!
「で? どうするんだい」
「とりあえず、原木は私が生やしちゃいます。でもキノコには詳しくないので、どの種類の木が良いのかわからないのです~」
「ふむ、榾木を作るにしても、種類がわからにゃどうにもならなんな。わかった。その辺は俺らでフォローしよう」
榾木? っていうのは、私がそのまま原木って呼んでるあれの事らしいですね。こう、木を切って細長くして置いてる奴の事です。
「しかし……今から本当にどうにかなるのか? 榾木って言っても、ただ生やして切ってハイお終いじゃねぇんだぞ?」
「え? そうなんですか?」
「そうなんだよ……」
そこで私、初めて原木栽培について聞きました。
なんでも、生の木は木材腐朽菌の成長を阻害する物質を含むんだとか。つまり、菌が繁殖しづらい。
イコール、キノコが生えづらいって事ですね。
原木の伐採後は数ヶ月間乾燥させ、種菌を接種し天然と同じ様な環境に置き、翌年秋の発生を待つんだそうです。そうして初めて、キノコが生えてくるんだとか。
うぅん、ここまでの手間暇がかかってたから、あの子はあんなにも私を責め立てたのですね……反省。
「でもでも大丈夫です~! 数か月放置した感じに木を操作すればいいんでしょう? 余裕ですよ~」
「まぁ、一から御茶作る人だもんな、管理者様……そらできるか」
「おいおい、化け物かよ」
「妖精ですよ~」
さて、あとは種類ですね。
私の記憶がたしかならば、使う原木によってキノコの相性が決まったはずですが。
「そうだな。……おい、お前んとこのキノコって、たしか椎茸だったよな?」
「あぁ、そうだ」
おぉ、椎茸! それは素敵!
……私、椎茸ダメにしちゃったのか……残念。
「だったら、コナラやシラカバ、クヌギ、アッシモとか、ロンデの樹が代表だな」
ほうほう、シラカバとかクヌギは、心和の知識にもありますねぇ。
この畑では、元々ロンデの樹を使ってたそうですし……その辺から持ってきちゃいますか。
ロンデはいわゆる落葉広葉樹なので、キノコにも相性がいいとかなんとか。よくわかんないですが、管理し慣れた樹のがいいでしょ。
「じゃあ、生やしますよ~」
私は皆さんから離れると、体に魔力を循環させます。
うん、世界樹と繋がってから、こういう魔力操作がかなりスムーズですね~。なんかこう、今までの魔力操作が児戯だったってくらいに精密に動かせます。
世界樹の魔力を扱う時、かなり難しかったですからねぇ……あれに比べたらこんくらい、どおってことないですね~。
「というわけで、一本~、二本~」
ロンデの樹を、2本。その場に生やします。
周囲がどよめきますが、気にしない。その樹を操作して、魔力で包み、丸太状態になるよう命令。
スパスパと切れて行き、原木サイズになっていくそれら。うんうん、いい感じ。
「あとは、これを数か月放置した感じにして~」
ふふふん、お茶作りでその辺りの作業はお手のものですとも。
丸太たちは、粛々と時間を経過させていきます。あまりやり過ぎたら枯れるので、いい感じの所まで……
「……どうです?」
「あ、あぁ……このくらいなら、充分だ……」
畑の持ち主であったエルフさんが見ても、問題ないらしいですね。
じゃあ、この感覚でガンガン作ってしまいましょう。
「……フィルボの王」
「……ん?」
「森の管理者は、なんでこの大陸を統一しようとしないんだ? そんくらいの魔力、持ってるだろ。あいつ……」
「う~ん……管理者様、だから? お茶以外ホント興味ないんだよ、あの人……」
「……はぁ、神でも相手してる気分だ」
「気持ちはわからんでもない」
むぅ、デノンさん達も少しは手伝って欲しいのです。アイディア貰ったけど、それで仕事お終いでは私の労力が半端ではないですからね。
とりあえず、2人には作った原木を持ってく作業をお願いしました。げんなりしながら、2人は素直に言う事聞いてくれましたとも。
うん、なんでか意気投合してましたけど。
「さぁ、どんどん作っていきますよ~!」
◆ ◆ ◆
「信じられん……もう、今年は駄目だと思ってたのに……」
「これなら、今から植菌すれば、間に合うかも……!」
一時間後。
そこには、畑一面に敷き詰められた、原木の姿がありました。
んふふふ、これなら罪滅ぼしになったでしょうか?
「あ、ありがとう、森の管理者! これならなんとかなりそうだ!」
「いえいえ~。私が自分でやった事なので、お礼を言われると困ってしまいます~」
ほんと、ね! もうむしろ踏んでくれていいのよ?
あ、でもゴンさん以外には踏まれたくないかな~。
「とにかく、これなら問題なく、キノコ作れますね?」
「あぁ!」
「良かった……本当に」
生やしたロンデは今、切り株になっていますが、生命力を付与しておきました。
これなら、早めに生え戻って森を満たしてくれるでしょう。
うんうん、一石二鳥!
「少しでも皆さんへのお詫びになったなら、幸いです!」
「おれら、あんたを少し警戒しすぎだったのかもしれないな……皆にも、このことは伝えておくよ」
おぉ、これは嬉しい!
これで皆さんが御茶売ってくれるようになったら、幸いですとも~。
「……管理者様、そろそろ城に戻らんと、ネグノッテ女王に怒られないか?」
「え? もうそんな時間です?」
「元々長居しない約束だろ?」
うぅん、残念。植菌の光景、見たかったんですが。
ま、仕方ないですね!
「では皆さん、私はこれで!」
「あぁ、またな!」
「ありがとうな!」
「店主さんも、ありがとうございます~!」
「……あぁ」
んっふ、良い事した後は気持ちいいなぁ。
私は充実感に包まれながら、意気揚々とその場を後にします。
店主さんがなんか釈然としない顔してましたけど、今の私は全然気にしていないのでありました。
……その後。
お茶の原理で魔力使って原木作ったせいで、この原木に生命力が溢れており……秋に区画一帯が椎茸で埋まったという報告がくるのですが……まぁ、それは今の私が知る事ではありませんでした~。