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第71話:結論

どもどもべべでございます!

さぁ、ようやく元のプロットまできました!

ここからエルフ編の終わりまで、ガンガンいきますよ~!

というわけでご投稿! どうぞお楽しみあれ~


「……いかがです? あの霊獣が私達エルフに対し何をしたか……そして、この大陸に何をしたか、理解できましたか?」


 文献を読み終え、ほふぅと息を吐いた私に向けて、女王様が語り掛けてきました。


「あれらは森を浸食し、暴れ回った粗骨者……その上、勝手に仲違いした挙句森の生態系を大きく崩した愚か者です。挙句は仲間割れを棚に上げて森の守護者などという立ち位置になり上がり、論点を挿げ替え森に居座っている……許せようはずもありません」


 文献にもう一度目を通し、視線を上に上げます。

 頭の中で、当時のゴンさんを反芻中……。


「あの熊に対する見方が変わりましたか? その印象こそが本当のあの者です。これまではうまくやってきたようですが、今からは注意して……」


「めっちゃ……カッコいい……」


「おい待ちやがってください」


 え~? かっこよくないです?

 この、数多の種族を生み出した相棒と袂を別ってしまった流れなんて、かなり私涙腺にくるのですが……!


「……え、えぇぇ……?」


「ネグノッテ女王……無駄だよ、これ……」


 デノンさんが女王様に向かって首を振ります。

 その顔には、どこか諦めの色が見えていました。


「この人、守護者様に対し謎の全肯定感があるから……」


「んふふ、恋は盲目って奴ねぇ? 妬けちゃうわぁ」


「いやぁ、えへへ~」


「いや褒めてねぇよ?」


 うそん?


「……ふ、ふふ……」


 女王様は、私達のやり取りを見ながらプルプルと震えています。トイレかしら。

 あ、違いますね。漏れてるのは魔力ですから。なんかこう、怒ってる? え、なんで?


「どこまでも、思い通りにならない方々ですね……あの熊も、貴女も……!」


 笑顔コワイ!?


「この森は、大陸は! 元々エルフだけのものだったんです! それをあの熊達が奪ったんですよ!? 普通怒るのは理解していただきますか!?」


「え、あ、はぁ、まぁ」


「でしたら! なんで結論がそうなるんです!? もっとこう、あの熊に対して疑問を抱くとかあるのでは!? 今この大陸は、あの熊達のせいで戦乱の最中にあるのですよ!」


「え、だって……ゴンさん達悪くないじゃないですか」


「は?」


「え?」


「「…………」」


 うぅん、これ、噛みあってないです?

 仕方ないですね。ならば、説明しなければなりますまい~。

 私は巻物をバサッと広げ、床に広げます。司書さんが「あぁ!」って言ってましたけど、後で謝っておきましょう。


「だって、2頭の熊……つまり、ゴンさんとじゃじゅーさんに先に手を出したのは、エルフの皆さんでしょう?」


「っ」


「ゴンさん達は森を荒らした……つまり、狩りや採取で沢山食べて大きくなった、って感じですよね?」


 外から来た、まぁそれは最初あんまり気にしないでしょ。監視するくらい。

 でも、そこから自分たちの食べ物に影響が出始めた。

 だから武器を手に取り、駆除を始めた。

 知恵ある者だからこそ至る考えです。奪われる前に奪う、知恵持ちの結論です。


「あいつら追い出すべ~ってちょっかいかけて、やたら強くて逃げだした……つまり、生存競争に負けたって事ですよね? 恨めしいとは思いますが、自然の摂理です」


「……それ、は……」


「そして、じゃじゅーさんが生み出した知恵ある種族。これらも元々は、争う概念も無かったはずです。しかし、知恵ある者だから覚えたのです。奪うという行為を」


 最初から、悪意のみを持って生まれた者など決していません。

 でなければ、赤子があれ程に清んだ瞳をしているはずもない。

 育ち、覚え、恵まれ、喜び、怒って、泣いて。

 そうして培い、子々孫々に数多の感情が伝えられ。そして至ったはずなのです。

 闘争という、知恵持ちの結論に。


「そこに、ゴンさん達の介入があったと何故、言い切れるのです?」


「…………」


「貴女たちエルフも、ゴンさん達に教えられずとも、武器を手に取ったと書いてあるではないですか」


「ぁぅ……」


「知恵ある者を生み出した。なるほどそれはじゃじゅーさんの罪になるやもしれません。しかし、彼はこれを見る限り、争いに気を病んで狂気に堕ちています。この責は己にあると、悩みに悩み、己を攻め抜いて狂っています」


 ならば、彼はとても優しかったのでしょう。

 知らぬ者に、毒の草の見分け方を教えたりしたのでしょう。

 覚えぬ者に、根気を強くし教えたのでしょう。

 全ての命を我が子のように思っていたからこそ、狂ったのでしょう。

 ならば、どうして彼を責められましょう。


「戦火に巻き込まれた。それは確かに怒る理由になりえます。しかし、論点のすり替えはいただけません。戦争が起こったのはじゃじゅーさんとゴンさんのせい? 何百年前の話してるんですか」


「か、管理者様? なんかキャラ違……」


「おんぶに抱っこで一から十までなんでもしてもらっていた訳でもあるまいに、親元離れたその人の責任を、当人達を責めるでもなくルーツに恨みがあるからと! やれ根本が悪い生み出した奴が悪いとガタガタガタガタ見苦しい!!」


「見てもいない癖に偉そうに! ならば何を恨めと言うのです! 鬼人と獣人を恨めと!?」


「エルフは恨みでしか動かないのですか! それとも、この歴史の過程でその他の感情を捨てたのですか!?」


「な……!」


「右の頬を張られたならば、左の頬を差し出せなんて聖人君主みたいな事は言いません。しかし、右の頬を張られたならば、一発やり返して前向きに話し合いくらいしてもいいでしょう! 頭を冷やしなさい!」


 ネグノッテ女王の体から、魔力が溢れます。

 もちろん、私の体からも。

 えっちゃんは薄く笑い、デノンさんは女の争いに引いているご様子。

 ……そして、ここまで言って、私の頭も冷えました。


「……はぁ……つまり、やられたからやり返すってプロセスは終わったって事ですよ~。ゴンさん達に昔やられた仕返しに、私を利用して色々考えてたんでしょう?」


「そ、それは……」


「それはもう、終わったじゃないですか~。その上でこの文献見せて、答え合わせしたんでしょう? そして、私のゴンさんに対する想いは変わりません。……ここまで答えは出ましたよ~?」


 そう、そうです。喧嘩はいけません。

 私としたことが、ついつい妖精的感情の爆発を見せてしまいました~。

 ここに来た目的は、ケンカではない。論点が変わっては、いけません。


「ゴンさん達とエルフの間に、何があったかは把握しました。そして、互いに擦り合わせが足りない事も理解しました。なるほど同盟なんてできるはずもありません~」


「…………」


「だから、私についてきてください」


「……どういう、事です?」


「ゴンさんと話す場所を設けますから、一度会話をしてください」


 そうですよ。最初からそれが一番です。

 根本と根本が茶々入れ合ってて、戦争はおまけなんです、このお話。

 そんなん上手くいく筈ないですよ~。これが本だったら、ストーリーのボタンが最初から掛け違ってて構成めちゃくちゃです。キャラだって暴走しますよこんな物語。


「本気ですか?」


「大丈夫、お茶なら最高のものをご用意できます」


「いやそうでなく! あぁもう、せっかくまともに会話出来てたのにまたお茶の話題に!」


「あらぁ、素敵じゃないっ」


 かなり拒否感マックスの女王様でしたが、その声を聞いた途端に固まりました。

 私達がそちらに目を向けると、手を合わせて小首を傾げるえっちゃんが。


「つまり、皆でお茶会ね? 妖精と精霊、エルフ、フィルボと霊獣でお茶会なんて、こんなのまず実現しないわよぉ?」


「あ、あぅ、アースエレメンタル様……」


「セッティングなら任せてちょうだい! べアルゴンをこちらに呼びたくもないし、あっちに行きたくもないんでしょう? だったら、私達の国で開けばいいわっ」


「はぁ!? 精霊様!?」


 お~、ナイスアイディアですね~。

 それなら、互いにアウェー。優劣なんて無しに話し合いできるってもんですよ~。


「し、しかし、アースエレメンタル様、それは……!」


「ねぇ、ネグちゃん、お願ぁい?」


「ぅ……!」


「私、皆で美味しい楽しいお茶会したいわぁ?」


「……うぅ……!」


「ね? ね?」


 沈黙は、数秒。

 しばらくの葛藤の後、顔を上げた女王様は……。


「し、しかたない、ですねぇ?」


 見事に、目にハートを浮かべておりました。

 うぅん、恋は盲目とはよく言ったものですね~。

 

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