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ドライアドさんのお茶ポーション  作者: べべ
 第一章:「ドライアドさんと大きな熊さん」
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第6話:管理人のお仕事

どもどもべべでございます!

また熱ですよ……9度とか勘弁してほしいです。

ですがこれを機会にご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~


 ドライアドの朝は早い。

 私のお家として見事この世に現界した大樹、世間樹くんの中で目が覚めた所で活動スタートです。

 お家と言われたらこう、リビングがあって~の、テレビがあり~のと考えられるでしょうが、樹の中というのはわりとそんなことありません。

 そうですね~……わかりやすく言うと、私が世間樹の中に溶け込んでいると言いますか。息のできる水底みなそこに沈んでいる感覚ですね。


 これが中々どうして心地よいのですよ。

 ……うん、凄く気持ちいいです。まるで、冬場のお布団のような抱擁感です。

 ……こんなに気持ちいいんですから、もう少しくらいこうしていたいと思うのは仕方ないです、よね?

 というわけで、朝は早いという言葉を撤回します!


『させてたまるかうつけ』


 おごほおぉぉう!?

 世間樹の幹にえげつない衝撃が走りましたよ!? ついたばかりの葉がボロボロ落ちていっているのがわかります!

 こ、こんなバカげた打撃を放てるのは……。


『今すぐ出てこい。そして魔力の操作訓練だちんくしゃ。3つ数える前に出てこねば、この大層な神木を今宵の晩飯調理に使うたきぎにしてやるぞ』


 ひ、ひえぇぇ、ゴンさん!

 有言実行の代名詞のような霊獣様のことです、出てこなければ真面目に幹から綺麗に伐採されて乾燥の末にキャンプファイアーされてしまうに決まっています!


「ご、ご勘弁を~、勘弁ですだよ~?」


 このままではヤバイというのは既にわかっておりますので、白旗をパタパタさせながら顔を出しつつ、ご機嫌を伺ってみます。

 うぅん、今日も今日とて白銀の毛並みが美しゅう存じます。それでいて凛々しいお顔、たくましさしかない体躯。妖精から見て100点の殿方ですねぇ。


『ふんっ、我手ずから訓練を施してやろうと言うに、二度寝をカマそうとは……よい度胸でかないか』


「うひぃっ、い、いえいえ、そんな二度寝だなんて……!」


『喜べ。そんなちんくしゃには、我が手取り足取り付きっきりでみっちりとしごいてやろう。感涙に咽ぶがいい』


「疲労困憊からくる嘔吐感に咽ぶ未来しか見えない!?」


 慌てて世間樹の中に逃げようとしますが、一度顔を出してしまった状態ではゴンさんから逃げられません。

 即座に頭を捕まれ、引きずり出されてしまいます。


『遠慮するな。貴様の膨大な魔力量で繊細なコントロールを行うにはそもそも生半可な訓練では足りぬ故な』


「お心遣いに感謝しますがせめて小まめな休憩を取り入れて欲しく存じますー!」


『安心しろ……昼には終わらせてやる』


「今朝日が昇ったんですがそれはぁぁぁぁ!?」


 私の管理者プログラムの1つ、魔力のコントロール訓練。これが朝の日課なのでした。

 ですが、日に日にゴンさんが厳しくなっていくのがいただけません!!





    ◆  ◆  ◆





「ふぅ……落ち着きます……やはりこれが無いとですねぇ」


『うむ、これはこれで良いな』


 お昼。訓練が終われば、本格的に管理者活動開始です。

 魔力の障壁を完璧に使えるようになるまで寸止め正拳突きを繰り出され続けるのが本当に訓練であるのかは非情に怪しいですが、それでも私は元気です(ランナーズハイ)。


 とりあえず、訓練の消耗を癒やす為に、私は今お茶を嗜んでいます。

 中身は、ドライアドの実り能力を使って収穫した、麦から作った麦茶です。

 シンプルかつ香ばしい味わい。日本のご家庭でも気軽に作られているであろう庶民派お茶の代表格ですね。

 私の魔力で作ったお茶なので、こうして作り置きしておけばいざという時に飲んで魔力回復できるのです。


「さて、それでは行きましょうゴンさん!」


『……思うのだが、貴様の仕事に我がついていくのは必要なことか?』


「何を言っていますか! ゴンさんがいないと魔物とか出てきた時に詰むでしょう!?」


『だから、貴様の魔力があれば大抵のやつには負けんと何度も……』


「聞きたくないです怖いんです! 付いてこないとゴンさんの体にアジサイ芽吹かせますよ!?」


『なんと恐ろしいこと考えおるかこのちんくしゃ! えぇい、わかったから縋り付くなっ』


 私のクレバーなネゴシエイトにより、ゴンさんは快く同行してくれました。

 そんな二人で向かうのは、世間樹から南へ進んだ所にある、果実系の木が群生している空間です。

 このバウムの森、こういう風に似た性質の木々がエリア別に固まって生えてるんですよね……ゴンさんが言うには、元は違う森同士が繋ぎ合ってできた森なんだとか。


「さて、という訳で、早速検診していきますよ~」


『うむ、我はウイの芽でも摘んでおこう。春の味覚よな』


 ウイの芽とは、ウイという木に生えるつぼみのことです。

 薄い黄色をしており、とにかく大量に生えるのが特徴ですね。見た目はあれです、ちっちゃいドリルみたいです。


「あ、それ天ぷらにしたら美味しいと思うんで、マンドラツバキの種から油取っててもらえます?」


『てんぷら……?』


「お野菜やお肉に衣を付けて、カラッと揚げたものです~。熱々なそれに岩塩つけて食べたら絶対いけますよ~」


 ゴンさんの洞窟探せば鍋くらいありそうですし、岩塩もあそこなら取れそうですよね~。


『……我をその気にさせたからには、必ずその天ぷらとやらを食わせろよちんくしゃ』


「あはは、任せてくださいって~」


 まぁウイの芽天ぷらは置いといて、今は検診です。

 管理者の仕事の1つは、こうして木々が病気になっていないかを見て回るお医者さん的なものがあります。

 特に果実系の木は病気に弱いので、こうして小まめに見るのが大事なのですね。

 ドライアドは周囲の植物の健康状態がわかる能力を持っているので、ぐるっと見回せばのどの木がまずいのかは一目瞭然です。


「ふむ……特に問題はないですかねぇ。弱ってる子もいませんし」


 病気の何が怖いって、集団感染するようなケースもありますからね。

 現に、この森の西側は病気にやられてハゲちゃってる区画があります。私が来る前の出来事で、ゴンさんが適度に燃やして病気自体は蔓延しなかったらしいです。

 そこも後々対処しないとですねぇ。……ですが、今は健康診断です。


「木は問題ないですけど……あぁ、ちょっと草が密集し過ぎですねぇ。養分取り合ってます」


 彼らもどこかで居場所を無くしたのでしょうか? 固まって草が生えてるせいで、育ちが悪くなってるところがありますね。


「ほ~らほら、そんな固まってないで、もう少し広がるんですよ~」


 私が命令を下すと、草達はプルプルと震え、根を動かし移動し始めます。

 基本動けない植物達をこうして動けるようにするのも管理者の特権ですねぇ。


「よしよし、この区画はこんなもんでしょ~」


『おい、油が採れたぞ。我の爪を犠牲にした価値はあるんだろうな』


 私が振り返ると、ゴンさんが岩で作った即席ボウルの中にナミナミ入った油を見せていました。

 この短時間に、どんだけ搾ったんですか、ゴンさん……?


「え、えぇまぁ……ちょっとドン引きですけど、えぇ。こんだけあれば天ぷら、作れると思います……麦も余ってるし、挽いて小麦粉にして……」


『よし、早速作るがいい』


「ま、まだ仕事が残ってますよ!?」


『むぅ……ダメか?』


「ぅ……!?」


 ぐぁぁぁぁ!! イケメン熊がしゅんとしながら見つめてくるぅぅぅ!!

 やめろぉ、普段生意気な先輩がふとした拍子に甘えてくるシチュエーションを私に見せつけるんじゃない……!


「……だ、ダメじゃないですよぉぉぉ? うぇへへ、私がす~ぐ美味しい天ぷら作ってあげますからねぇ~?」


 当然のように私、陥落。

 この後植林についてのプランを練る予定でしたけど、まずはゴンさんを優先しますとも、えぇ!


『む、そうか? うむ、では疾く戻るぞちんくしゃ』


「はいな~」


 その日の晩。

 初めての天ぷらにゴンさんは大満足。今度はいろんな食材で作るように厳命されてしまいました。

 よほど気に入ったんですねぇ……。

 

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