第57話:エルフのお茶
どもどもべべでございます!
エルフの里のお茶は何にするか悩みましたが、基本的なシンプルなものにしました!
というわけでご投稿! どうぞお楽しみあれ~!
「え~、というわけで、騎士の皆さんは軒並み倒れてしまいましたので~。ここからはお偉いさん達だけの腹割って話そう会になりました~」
「10割、管理者様が悪いんだけどな……すまんな、ネグノッテ女王」
「いえいえ、あらましはお聞きしましたので、納得はしておりますよ」
現在私達は、世界樹の中にある会議室みたいな部屋にいます。まぁ、会議室の5倍は豪華な空間なので、多分王族同士とかの話し合いの場なのでしょう。
世界樹は、根に近い幹以外はもうほとんどが空洞らしいです。なので、お城の中は縦に広い、ビルのような構造をしています。
たとえスッカスカになったとしても、世界樹を傷つけるなんてそうそうできません。なので、このお城は出来た穴に合わせて通路や部屋を決めているみたいですね。
現に、この部屋もかっちり四角ではなく、アリさんが堀った穴みたいに丸みを帯びています。
「そ、それに……アースエレメンタル様が、こんなに近いんですものっ。文句を言ってはバチが当たりますわ♪」
「あらやだ、嬉しい事言ってくれるじゃないのん♪ すっかり落ち着いたと思ってたけど、まだまだネグちゃんのお転婆は治ってないみたいね?」
「い、嫌ですわアースエレメンタル様っ、そんな昔のお話し……!」
「私のお嫁さんになるって、いっつも言ってたものねぇ?」
「現在進行形の野望ですが?」
「あらやだっ藪蛇♪」
あぁ、デノンさんの背中がすすけている。
なんて可哀想な空気……まるで、バリバリのキャリアウーマンが家では下着姿でうろつくような干物女であることを知ってしまったかのような幻滅感が伺えます。
え? それを知って滾る人もいる? まぁ趣味は人それぞれですよね(←熊コン&ショタコン)。
「……さて、では改めて、管理者さんに名乗らせていただきましょうか」
おぉ、ようやく女王様がまともな雰囲気に。
机を挟んで向き合っている私達。私の隣はデノンさん、その隣にえっちゃん。
で、女王様はデノンさんの正面です。自己紹介と言うことで、体を私に向けてくださいました。面接か。
「ネグノッテ・フォレス・ヒューン。それが私の名前です。長いのでネグノッテでも、ネグでも構いませんよ?」
「あ、ご丁寧にど~も~、先ほども名乗らせていただきました、光中心和です~」
いやぁ、改めて見てもすごいロイヤルオーラですねぇ。デノンさんから漂う胃痛の気配とは大違いですよ。
目とか鼻とかしっかりしてるし……こうして見てしまうと、心和の顔は日本人系の醤油顔なんだなぁって思ってしまいますね。私は好きですけど。
「ふふ……しかし驚きましたよデノン王。まさか貴方から、森の管理者を紹介したいという便りが届くなんて」
「話せば長くなりすぎるから省略するけど、まぁ出会うきっかけがあったんだよ。で、そこから仲良くしてもらってる感じだな」
「不思議な縁ですこと……アースエレメンタル様だけでなく、森の管理者とまで交友を持つだなんて」
「自分でもフィルボの因果が怖くて仕方ねぇ。他の連中があっけらかんとしてる分、特にな」
デノンさんの態度は、とても王様としてのそれではありません。なんのかんの言って、彼もフィルボ族。あまり硬い口調は苦手なのでしょう。
しかし、それを邪険にするでもなく、女王様はお話ししています。既に慣れているのでしょうね。
「まぁ、なんだ。俺はいつも通り同盟を持ち掛けにきたんだが、管理者様は別件でエルフに用があって俺を頼ってきたんだ」
「それでご一緒していらしたのですね? なるほど……」
そこまで情報を擦り合わせた所で、ドアがノックされました。ドアの形も通路に合わせてるから、凄く独特な形です。
女王様が入室を許可すると、給仕服に身を包んだエルフさんが「失礼いたします」と言って入ってきます。
その手はカートに伸びており、押してあるカートには……
「(ガタン)」
「管理者さん?」
「げっ……」
あれ、あれは……
「お茶……お茶ですね?」
「え? あ、はい……お茶をお持ちいたしました」
きましたきましたきましたよー!
エルフのお茶です! ここに来て私のテンションが最高潮!
一体どんなお茶なのでしょう? 楽しみ過ぎて体が揺れてしまいますっ!
「おい、おいっ、興奮すんな! 座ってろって!」
「え~、え~、見てみたいです見てみたいですっ、淹れ方から何から全て注視していたいです~っ」
「何しにここに来たかわかってんのかアンタ!?」
「エルフのお茶を味わうためですが?」
「違うだろうがー!」
私達のコントに女王様がきょとんとしていたため、えっちゃんが色々説明してくれていますね。
私がどれだけお茶が好きかを、それはもう大袈裟に語ってくれていますとも。
「なるほど。管理者さんはお茶が大好きなのですね」
「えぇ! よければどんなお茶なのか教えていただけませんか~?」
「論点をずらすなって!」
「まぁまぁ、今教えた方が今後の話に集中できるでしょうし、教えておきますよデノン王」
「……はぁ、すまんなぁ」
やふー! エルフのお茶、ゲットだぜ!
そうこうしてる間にも、メイドさんは私の視線に緊張した様子でお茶を淹れていきます。
ふむ……既にポットに入っているという事は、紅茶のようにその場で淹れた方が美味しいお茶という訳ではなさそうです。
つまり、事前に成分を抽出した方が良いお茶だという事。そうなってくると、候補は限られてきますね。
「……すんすん」
「ひえっ」
それでいて、この独特な香り……なるほど。
「キノコ茶、ですね?」
「えぇ、ご名答です」
女王様がチパチパと拍手してくれました。まぁ香りでまるわかりですよね!
キノコ茶、良いですね~。森ならば豊富なキノコが採れますし、私もいずれ試したかったのですよ。
「エルフの里では、キノコの栽培に成功しております。そのキノコを使って、お茶を作っているのですよ」
「素敵ですね~! どんなキノコなのです?」
「色々ありますが……このお茶は何を使ってるのですか?」
「は、はいっ、今回は、モスマッシュを使用しております……!」
ほうほうほう、モスマッシュ! これは初めて聞きました!
一体どんなキノコなのでしょう!
「あぁ、モスマッシュですね。虫や獣の体表で育つ、肉食のキノコですよ。風味が豊でお茶に合うんです」
「なるほど~! 栽培って獣を使う時もあるんですねっ!」
「えぇ、原木を使わずとも、肉が手に入ってキノコも手に入る。家畜に寄生させることで一石二鳥なんですよ?」
「いいですね~。さっそくお茶を味わいたいところです! ……ところで、なんでデノンさんはそんな顔をしてるのですか?」
「察してくれないか……?」
出されたお茶を見ながらげんなりしてるデノンさんを見て、私と女王様は小首をかしげるのでありました。
えっちゃんがクスクスしながらデノンさんの背中をさすってるのは、何の意味があったのでしょう?