第44話:ガジガジガジ
どもどもべべでございます!
ここ最近、心和ちゃんがぶれなすぎて怖い時があります。
やはり彼女の根本は人外なんだなぁって、思いますね。
そんなこんなでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!
「え~、それでは皆さん改めましててててて痛てててててて」
「ココナ様! ご無理をなさいませぬよう! 守護者様もどうかご容赦をー!?」
『ならん、まったくもってこやつときたら! 我との特訓を全てパぁにしおってからに!』
「あ、あ、あ、樹液漏れる、痛い、あ、あ……あふん」
『甘い声を洩らすでないわたわけぇ!!』
あれから。
アオノイさんを寝かせた寝室にて、私たちはとりあえずのネタばらしをせざるを得なくなっていました。
グラハムさんは粛々と、サエナさんはやや呆れ顔で私たちの痴態を見ています。
ふふふ、ですが今の私は無敵ですよ? ついにゴンさんの牙から快楽を得るにまで至ったのです。つまりオーディエンスのいる状況でのこの行為は、もはや結婚式と言っても過言ではな……
『言葉が漏れておるぞ。過言だうつけ!』
「あばばばばば!? 牙から直接魔力を流し込んじゃらめぇぇぇぇ!?」
ゴンさんのお仕置きはまさに日進月歩。いろんなジャンルで私を熱く責め立てます!
なんか頭の奥がパチパチ言ってますぅぅ!
「……あ~……そろそろ話をまとめていいですか?」
そんな中で、グラハムさんが挙手の元私に話しかけてきます。いや、これ多分ノーデさんに言ってますかね?
私の方を必死に見ないようにしている様子です。
「つまり……貴方達は俺が、今の回復するお茶や木の実の事を知ってると思い、それを誤魔化すために一芝居売ってた……って事ですね?」
「あ、あはは……申し訳ございません。まさか普通に、ご挨拶に来ただけだったとは……」
「いや、警戒は正しいさ。俺だってその状況なら何かしらの対策はしますからな……方法はともかくとして」
それに、結果としてアオノイを助けてくれたし……と自分に言い聞かせてるグラハムさん。
ご自身の中で崩壊した私のイメージを、必死に再認識しようとしているのでしょう。でなければうっかり敬語を捨ててしまいそうになりますもんねわかります。
「確かに、管理者様の作った茶葉に人を癒す効能がある事はわかりました。そして、それが周辺各国に広まったらどんな影響があるかも……商人として、理解します」
「はい。この森を戦火で包む訳にはいきません。なので、極力情報を外に漏らしたくないのです」
「……お言葉ながら、情報を規制するのは、フィルボの民では難しいかと存じますよ? 素直過ぎます」
グラハムさんの言葉にノーデさんがムッとします。可愛い。
ひぃん!? なんでか噛む力が増したような気がします!?
「俺……私のように、森に単身調査に赴く者も、そろそろ増えてくる事でしょう。ならば、これから先はより一層の警戒が必要かと存じます。……少なくとも、演技以外の方向がいいでしょう」
『なんだ若白髪。我らの策が不満か』
「わか……!? そ、そりゃまぁそうですよ。演技でカバーするって事は、結局ここで対談するって事じゃないですか。それだとまた、今回みたいにバレるかもしれないって可能性があるでしょう?」
『……ちんくしゃが穏便に事を済ませたいと言ったからこうなったのだ。そうでなければ、貴様らが森に入った時点で我が駆逐しておる』
「そりゃまた、情報を洩らさないって意味では最高の警備ですがね……それだと、いつかは森の守護者討つべしと戦団が組まれるでしょうな」
ふむふむ、あれもダメ、これもダメ。
だとしたら、私はどうすればいいんでしょう?
このままだと、遅かれ早かれ戦争的サムシングがこの森に迫るって言われてるんです。なんとかしないとまずそうですよこれは。
なので、素直にきいてみます。
「はいっ、でしたらどうすれば良いのでしょう?」
『貴様、まだ余裕がありそうだな……』
「ま、まじめに言ってるんですから、魔力ビリビリはやめてくださいよぅ?」
「はぁ……この際、各国に己の存在をアピールするのが一番かもしれません」
お、お? どういう事でしょう?
「森の守護者と、森の管理者。この両名が今後、バウムの森を統治する王だと宣言するんです。この大陸は戦乱の最中ですので、新勢力が台頭してきたとあれば否が応でも注目せざるをえないでしょう」
「すると、どうなるんです?」
『噛まれたまま普通に会話するのだな……』
「そうですね。まずは使者が各国から送られてくるでしょう。そこで会談を開き、森に争いを持ち込むことは許さない旨を伝えて、この森を【聖域化】するんです。森の守護者の存在はこの大陸で知らぬ者はおりません。そんなお方が正式に人間たちに下す言葉ならば、まず通るのでは?」
えっと、つまり、ひた隠しにするよりも、一回バーン! と表舞台に出て、目立ちつつ大事な部分を隠す感じなんです?
なんか、メディアでは破天荒キャラで通しつつも、家に帰れば足の爪切るのが趣味な芸能人みたいなニュアンスですね。
『くだらん。その様な事をすれば、余計に人間共が増長し攻め入ってくるに決まっておる』
「確かに、北の鬼人、【ドゥーア】や、獣人ヴァナあたりは血気盛んですからな。しかし、森人【エルフ】は思慮深く、優民フィルボは平和を好む。つまり……2つの種族をどうにかできれば、森は間違いなく平和でしょう」
私は、ノーデさんと顔を見合わせます。
ここにきて、私が歴史の表舞台に立つ? なんともよくわからない気持ちです。
しかし、現在の森が人で溢れたら、何が起こるかわかりません。
賢しいゴースト、集団リンチビッグエイプ。森の生態系はじわじわと謎の変化を見せていると、ゴンさんは言います。
確かに、今の人類には危険かも……ならば、私という名前が盾になれば、森に入る者は制限できるかもしれません。
「グラハム殿。ヒュリンはその際、どのような立ち位置を取ると思われます?」
「……我が王は【なぁなぁな平和】を望むが、利益に最も敏感だ。管理者様の稀有な能力が漏れなければ、フィルボに賛同してくれるはずだ」
それ一番信用できないやつー!?
利益が出るってわかったら強い国に加担するって事じゃないですかやだー!
『ちんくしゃ、やはりこやつらは消そう』
『駄目です! 彼らには今後、コーヒーを定期的に持ってきてもらう使命があるんです!』
『貴様が何も反省していない事はわかった』
「あぁぁ力込めないで樹液がぁぁぁぁ!?」
頭の痛みに悶えつつも、私はどこか頭の片隅で考えていました。
……つまり、各国のお茶を試飲できるチャンスなんじゃね? と……