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番外編:儲けの匂いは逃しません

どもどもべべでございます!

さてさて、ここ10日ばかし毎日投稿していましたが……そろそろ卒園式が近いもんで、準備のためにもう連日は無理そうですw

説明文の通り、一週間に数度のテンポに戻らせていただきますねー!

というわけでご投稿! どうぞ、お楽しみあれーっ

 

 雪解けの季節から、命の育みを過ぎ、やがて恵みの時期が近づく昨今。

 これらの変化は、森から生まれるっつうふうに俺らの爺様婆様は宣っていたが……だとしたらあの森は早々に焼き払った方がいいと、王族は考えるだろう。


 4つに分けて季節が変わり、それら一つ一つに対応しなくちゃなんねぇなんて、治世する側にゃ悩みの種でしかねぇんだからよ。

 おそらく、5つの国の内、3つはそう結論付けるだろうさ。


 だが、商人は違う。

 それぞれの季節毎に儲け話が変わり、どれだけ似通った商品でも長いスパンで見れて、顧客の飽きが遅れる……四季なんてもんを作ってくれたお方なら、神様だろうが森様だろうが崇め奉るってもんだ。

 それ故に、冬が終わり、春から夏にかけてのこの短い期間は、商人にとっての戦争と言っていい。


「【ヴァナ】への使者はちゃんと出したか?」


「はい。近日中には返事が届くかと」


「じゃあその件はお前に任せる。獣共から出来る限りふんだくってくれ」


「かしこまりました」


 お気に入りの執務机の上で書類にペンを走らせつつ、俺ことグラハムは部下に命令を下す。

 ヴァナ族……あの獣耳共は野蛮な戦争屋だが、あいつらの作る染め物や小物は独特のデザイン性で需要が高い。眼の前にいるこの女なら、しっかりと媚を売ってブツを仕入れてくれるだろう。

 俺の商会は旅商人を多く抱えているからな。冬はそいつらの足が止まっちまうもんだから、立て直しには結構な労力を使うんだ。


 若白髪の混ざってきた頭を軽くかき上げながら、一度書類から目を離す。まだ26だってのに、この頭髪じゃ老けて見えちまうな。

 せっかくの男前も、仕事に忙殺されちまったら影を潜めるってもんだ。

 まぁ、忙しさで老けるってんなら商人冥利に尽きる。勲章として胸を張っておこう。


「会頭、ピットへの商売はいかがなさるので?」


「あぁ、それは俺が行くつもりだ」


「っ、正気ですか?」


「わりぃが冗談は商談の時以外言いたくねぇ質でね」


「ピットは森に面しています。今は手を引くべきですよ」


 俺の商会があるのは、【アーガイム】っつう国の、【ウォレス】って都市だ。

 森から一番近い都市で、危険が多いが旨味も大きい。そんな場所でね。だからこそ、ここ最近では森に生えた【化け物大樹】の話題で持ち切りだった。


 春と同時に、突然としか言いようのない速度で出現したあの大樹。俺らヒュリンは巨大なエントが出現したかと泡を食ったが、どうやらそうではないらしい。

 何もないならと、情報収集に使いを出せば、森ん中はコカトリスがうようよと来たもんだ。そんな場所を調べられるはずもない。

 だが、知らないままってことはあり得ねぇ。あんなもんが出現して、何も変化が起きないってんなら、この大陸から戦争がなくなる日は近いだろうよ。


「森に面してるから行くんだよ。フィルボがそろそろ、情報仕入れてる頃合いだろうからな……情報面で後手に回るのは痛手だが、相手がコカトリスじゃしかたねぇ」


「……貴方が行かずとも、他の者を使えば良いでしょうに」


「嫌だね。俺以上に適任がいねぇ。俺ならフィルボの王に顔を通してもらえるからな」


 俺とデノン王は、毎年のように交易を行ってきた仲だ。関係も良好を保ってきた。他の奴らとは引き出せる情報の質が違う。

 あの大樹は絶対に今後の利益に繋がるという確信がある。危険な代物ならば情報が売れるからな、俺達商人があれを知らないままってのは断じてありえねぇ。


「……わかりました。これ以上は何も言いません」


「おう、まぁ吉報を待っときな。それより、ヴァナは任せたぜ」


 こうして俺は護衛と共に、商品を積んだ馬車を走らせることになったのだった。

 会頭だからって、現場に行かねぇなんてこたぁねぇのさ。





    ◆  ◆  ◆





 さて、結論から言えば……デノン王は確実にあの樹について知っていた。

 しかし、その情報を俺たちに漏らすつもりはないらしい。

 情報の秘匿……その意味は一体何か? 俺はそれを考える。


 危険故の情報規制? いや、違うな。フィルボはこの時代を生き残れるか怪しいくらいのお人好し集団だ。あれが危険なものであるならば、敵対や同盟など関係なしに各国に情報をばらまく位はやってのけるだろう。

 

 ならば、利益の独占……これはあり得る。フィルボとて国の存続は必須だしな。少しでも自分たちの手札は多い方が良いだろう。

 彼らの凄い所は、その手札が他国の損害にならないように動こうとすることだ。それが純粋な金銭などの、他国に害を及ぼさない利益ならば、独占はしたいはずだ。


 特産品であるヤテン茶が例年よりも少なかったのも気にかかる。今回の冬は平均的な寒さだったからな、天候的に不作だったとは思えねぇ。

 とはいえ、デノン王はあまりがめつく金かねカネと宣う者ではない。今回のケースでは候補としちゃ二番手だ。


 俺としては、そうだな……秘匿しないとヤバい情報だった、という線を押したいね。

 この情報が広まれば、大陸の根幹が覆る……そんな情報を握ってしまい、ひた隠しにしている。そんな予感がする。


「だからって言っても、それが何なのかはわかんねぇかなぁ……」


 ピット国の王都を散策しながら、俺は愚痴を洩らす。

 王都と言っても、この国はアーガイムと比べて質素な国だからな。まるで雰囲気が違う。

 のんびりと時間に追われぬ生活をしたいのなら、間違いなくこの国を選ぶべきだろう。


「わーい! 今度は私ね!」


「うんっ、次はみーちゃん!」


「クマだぁぁぁぁあああ!!」


 ふと声に釣られれば、そこには三人の少年少女がいた。

 珍しい。フィルボは保育園なる設備でまとめて子どもを見ていると聞いていたんだがな。


「じゃあ、私がここな様ね!」


「ボクがせいれい様!」


「クマだぁぁぁああ!!」


 ここな様?

 精霊がこの国を守ってるってのは、周知の事実だ。しかし、そんな名前してたか?

 いや、そもそもネームドの精霊なんて考えたくもねぇ。それに、子供たちの配役からすると、精霊とここな様ってのは別だ。

 しかも、遊びの内容はたどたどしいが、そのここな様が精霊を救うっつうお芝居じゃねぇか。クマはよくわからんが。


 ……こいつぁ、もしかしたらもしかするぜ?

 俺の商人としての勘が、ここで働きやがった。


「いやぁ、君たち役者になれるんじゃねぇか?」


「ふぇ?」


 俺は拍手をしながら、警戒されない程度の距離まで近づいていく。

 子どもたちはきょとんとしており、なんともあどけない。


「いい演技を見せてくれた礼をさせてくれ。お菓子でいいか?」


「いいの!?」


「くれるの?」


「クマだぁぁぁああ!」


 そろそろこの少年をどこかに診せた方がいいかもしれない。そんな気がしたが、まぁ今は情報だ。


「あぁ、是非貰ってくれ。……所で、その【ここな様】についてなんだが……」


 そして、俺は子供たちから荒唐無稽なおとぎ話を聞いた。

 精霊と仲良くなり、一瞬で樹を成長させ、保育園なる施設を巨大化させたという、巨大な熊を連れた聖なる乙女。

 精霊は彼女に恋をし、彼女が加護を与えた花のお茶を毎日飲んでは恋慕に浸る時間ができたという。


「……なるほどねぇ」


 普通なら一蹴するような陳腐な物語だが、これは去年までは無かった話だ。

 色々探ってみるのもありかもしれねぇな。

 

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