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ドライアドさんのお茶ポーション  作者: べべ
第二章:「ドライアドさんとショタにポーション」
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第23話:親心

どもどもべべでございます!

せっかくなので恋愛系の応募にも載せてみました。妖精とくまの恋愛ですけどね!w

というわけでご投稿、お楽しみあれ~

 

 長年国を守ってきた、精霊様の消滅。

 そのアリエヘンお話しに、デノンさんは口を抑えて目を見開きます。

 対して、えっちゃんは0点のテスト用紙がバレた子どものように口をつぐんでそっぽを向いていました。完全に図星突かれたそれです。


『大方、これからも豊穣が続くという発言も、消滅の瞬間に最後の力を使い、国に潤いを残して逝こうというつもりなのだろう。貴様のやりそうな事よ』


 鼻で笑うゴンさんですが、テーブルの上に何もないのを見て明らかにムスッとしています。

 この場にお茶が無いことに落胆しましたね? まぁお気持ちはわかりますが。


「……精霊様。俺らに長年与えてきた加護ってのは……」


「……えっと、そのぉ……あれよ? ほんの少しだけ、私の力をあなた達に分け与えるだけ。元気な子に育ちますようにって、ね?」


「少しずつでも、100年も続けりゃあどうなるかなんて、知らねぇアンタじゃないだろう!」


 勢いよく立ち上がったデノンさんに驚き、キャッと悲鳴をあげるえっちゃん。

 なんて庇護欲をソソる姿でしょう。私も今度ゴンさんにやってみましょう。


「な、何よぅ、私が勝手にやってた事でしょう? なんでそんなに怒るのよぅ……」


「はぁ……自分をガキの頃から見てくれてた恩人が、自分らが原因で死ぬって状況を知ったら、誰だってそうなるに決まってるだろうが……!」


「あなた達が原因? 変なこと言わないでちょうだいな」


『チビ王、こやつは精霊だぞ。100年の間に人間の感情などのことは学んでいようが、価値観に関しては自然と同一だ。自身の消滅に頓着などせん』


 うぅん、そこに関しては……私も、心和と混ざるまで特に気にしたことなかったかもしれません。

 確かに、自然は常に移ろうもの。自身の身がまた何かの糧になることは自明の理。恐れるものなど何もなく、また次の世を待てばよいのです。

 ですが、えっちゃんは他者に関してのみ優しさが向いてしまった珍しい精霊なのでしょう。自分のことは顧みず、与えられるものは全て与えてきたに違いありません。


 ヤテン達が教えてくれたのは、【敵】の存在では無かったのです。この、自己犠牲を繰り返す聖人が傷つき、消えていく事を良しとせずに私に訴えかけていたのだと確信しました。

 草木にとっても、えっちゃんは親と同義なのでしょう。


「……俺らがこの100年で力をつけられたのも、全部アンタの犠牲の上に成り立ってたって訳だ」


「えぇ? 違うわよっ、皆が頑張ってた結果でしょう? 私、皆に強くなって欲しいから加護を与えていたわけじゃないんだからっ」


「結果としてそうなってるんだよ……」


 うぅん……話しがもつれていますねぇ。

 ……うん……。

 口寂しいですね!(唐突)

 皆が真面目なお話しをしているのはわかりますが、聞き担当まで落とされた私としてはこの時間をどう過ごそうかと悩ましいわけで。こうしていると、ゴンさんではないですが……欲しくなりません? お茶。

 ん~、いけません、我慢出来ないじゃないですか……!


「…………」


 というわけで、こっそりと頭の中でチャンネルを回してみます。

 え~と、え~と……いましたね、ノーデさん。ここから結構近くにいるみたいで、念話の範囲内でした。僥倖です。


『ノーデさん、ノーデさん~』


『っ、これは……ココナ様ではありませんか! 念話とは、いかがなさいました?』


『いえいえ~、緊急ではないのでご安心を~。実はですねぇ、持ってきて欲しい物があるんですよ~』


『はぁ、ココナ様は現在、精霊様の元にいるのですよね? たまたま近くにおります故、すぐにでも馳せ参じることは可能ですが……』


 それは重畳。素晴らしい。

 では、遠慮なく持ってきてもらいましょうか。




    ◆  ◆  ◆




「失礼いたします! 悠然なる大樹の騎士団、団長ノーデ! ただいま馳せ参じました!」


 それから五分ほどして、ノーデさんは約束通り来てくれました。

 いやぁお仕事が早いのは素晴らしいですねぇ。


「……ノーデ? 俺、呼んでねぇんだが?」


「あらぁん、ノーデちゃん久しぶりねぇ?」


「ハッ、精霊様もお変わりなく! ちなみに今回は、王ではなくココナ様に招集された次第です!」


「あにぃ?」


 デノンさんがジトっと私を見ていますが、そんなことはもはや気になりません。

 さぁノーデさん、ハリィ、ハリィです! 私に礼のブツを!


「ココナ様、どうぞ! お持ちいたしました!」


「ありがとうございます! また今度代わりの届けますね? 今はとにかく飲みたくて飲みたくて~」


 そう、ノーデさんに頼んだのは、出発前に差し上げていた麦茶です。

 手元にお茶がないならば、持ってきてもらえばいいじゃな~い。まぁノーデさんにはもっと良いお茶を今度届けることにしましょう。

 精霊様、基本何も食べたりしないもので、こういう場所にお茶がないのがネックですねぇ~。


『……ちんくしゃ。貴様、そのためだけにチビ助を呼びつけたのか』


「そうですよ~? ダメでした?」


『否、でかした』


「いやいやいや、俺の騎士なんですけどね」


 釈然としていないデノンさんですが、ノーデさんはドヤ顔で「ほめれ!」って感じにフンスフンスしてます。なので、頭をなでてあげると「んふーっ」と満面の笑顔になってくれました。

 ……人さらいって、こういうの見て衝動的にやっちゃうんだなぁ……。


「いやいや……ノーデ、お前……」


「ココナ様は、命の恩人ですから!」


「はぁ……まぁ、いいわ」


 そう、そうですとも!

 今はあらゆるわだかまりなんて意味をなしません! ここにこうして、お茶が来てくれたのです!

 ならば当然、かたっ苦しいお話しはライトスタンドにホームランして憩いの一時ひとときを紡ごうではありませんか!


『当然我の分もあるんだろうな?』


「えぇ! いただいた麦茶を全て持ってきましたから、全員分ございます!」


『ふむ、せっかくだし温めなおすか。しばし待て』


 ゴンさんは、水筒に入った麦茶を魔法で浮かせ、水球にしました。そして、そのまま火の魔力を通し麦茶を温めて行きます。

 周囲には麦の香ばしい香りが漂い、なんとも落ち着いた雰囲気です。


「あら、いい香りねぇ」


『ふん、特別だ。貴様にも味わわせてやろうではないか』


 お茶を温め終えると、ノーデさんが即座に4人分のティーカップを準備してくれていました。

 なんて空気の読める人でしょう。ですが、自分の分も用意していいんですよ?

 私がそんな視線を送っていると、ノーデさんは困ったようにデノンさんの後ろにつきました。今は立場的にやめときたいんですね。ならば仕方ありません。


『ほれ、しばし話は休んで、嗜め』


 ゴンさんが、水球を分裂させてそれぞれのティーカップを満たしていきます。

 うぇへへへ、やったぁ、お茶だぁ~!


「早速いただきましょう~!」


「はぁ……そんな場合じゃねぇんだが……」


「まぁまぁ良いじゃない? 私としても、デノンちゃんとはもっと落ち着いて話し合いたいわん?」


「……しゃあねぇなぁ……」


 満場一致で始まったティータイム。

 まずは立ち上る麦の香りを堪能……うんうん、やはり損なわれていませんね。私印のお茶は保存に優れているのです。


「いただきま~す」


 うぅん……香ばしい麦の風味!

 口いっぱいに麦畑が広がっていく感覚、たまりません!

 もちろん、1から作った物ではないので満足の行く一品ではありません。しかし、ここでしか味わえないので貴重も貴重。じっくり堪能しなければ。


『うむ、冷やしも良いが、やはり熱してこその香りよな』


 ゴンさんも、小さなカップを傾けてじっくりと味わっている様子。お鼻がひくひくしてて大変可愛らしく存じます。

 ふふふ、ゴンさんですら多少の評価をくだしてくれるのです。初めて味わう2人はどんな反応をしてくれるのでしょう?



「……ねぇ、ココナちゃん?」


「ん~? 美味しいですか、えっちゃん?」


「えぇと……これ、何が入ってるの?」


 私の期待とは裏腹に、えっちゃんの声には困惑が見え隠れしていました。

 はて、何がもなにも、麦が入っているのですが?


「えぇと、これは麦茶です。麦を使ったお茶で、香ばしい風味が特徴でして……」


「うん、うん、そうじゃないの! いえ、美味しいのよ? ただ……ね?」


 ん~?

 ただ、なんでしょう?


「……なんだか、私の体から魔力が溢れてしょうがないのだけれども……!」


 ……あ。


『……おぉ、そうであった』


「お、おい、なんだこのお茶!? なんでこんなに魔力が渦巻いてるんだよ!」


 あ~、そうですよ。なんで気づかなかったのでしょう。

 簡単なお話しだったのです。それこそ、朝茶漬け前の話だったのです。答えは、こんな近くにありました。

 そう……精霊の魔力がなくなってるなら、満たしてしまえばいいのですよ~!

 

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