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ドライアドさんのお茶ポーション  作者: べべ
第二章:「ドライアドさんとショタにポーション」
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第22話:少々無茶な精霊様

どもどもべべでございます!

せっかくなので、恋愛小説の応募にだしてみましょう。

頑張って書き上げるぞ~。

というわけでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~

 

 えっちゃんのお部屋は、とても素敵な所でした。

 保育園内と同じく、丁寧に磨き上げられた床と壁。シックな雰囲気の中に散りばめられた、女性チックな小物達。来客用に置かれたテーブルには真っ白なクロスが敷かれ、その上に置かれた観葉植物が目を癒やしてくれます。

 窓は構造上見当たりませんが、魔力の籠もったランプが柔らかな光で室内を照らしており、視界は全く問題ありません。むしろ、この明かりが部屋をよりおしゃれに彩ってくれているようです。

 木製の建物である事を意識しつつ、最大限に活かした構造。乙女心と男心が入り混じったナイスルームと言えましょう。


「んふふ~! それでねそれでねっ、私ったらフィルボの子達に一目惚れしちゃったのよねっ」


「ほうほう、そんな経緯で~!」


「もう森には戻れないわよ、こんなカワイイ子達を見ちゃったらっ」


「わかります! カワイイですよねあの張りのあるぷにぷにホッペとか! ひそひそ話してたり、短い手足で荷物を運ぶ姿とか見たらもう!」


「あらぁ、貴女ったら通な所見てるのね? いいわよいいわよぉ~最高よぉ!」


「…………」


 そんなえっちゃんルームの机を挟み、私とえっちゃんは完全に意気投合しておりました。

 最初の不安? そんなもんえっちゃんがフィルボを保護する過程を聞いたら吹き飛びましたとも!

 えっちゃんたら、森を離れてこのピット国に来て、フィルボの見た目に完全に陥落して守護を誓ったそうなのです。完璧にその筋の性癖に目覚めていますね!


 なんで森を離れたかは教えてくださいませんでしたが……まぁ、そこんとこはゴンさんが言ってた通り気にしない方向でいきましょう。

 だって、フィルボについて語るえっちゃんは後悔なんてまるでなさそうな笑顔なんですもの。デノンさんが死んだ魚の目をしていようがお構いなしです。すげぇメンタルです。

 こんな顔ができる人が、後ろ暗い事を抱えている訳がない! と、思います。


「はぁ……嬉しいわぁ。私、こういうお話しって滅多に出来ないの。デノンちゃんから威厳を保って欲しいって言われるもんだから」


「……子供らに悪影響を与えるわけにはいかんでしょう……」


「んまっ! 悪影響なんて与えてるわけないでしょう? もし私がそんな玉だったら、デノンちゃんだって無事で済んでないんだから!」


「気持ち悪いこと言わんでくださいよ」


「いやねぇこの子ったら。オシメだって変えたことある私にこんなに冷たくするなんて……!」


「気持ち悪いこと言わんでくださいよ!」


 あはは、デノンさんとの付き合いもそんなに長いんですねぇ。すっかり遊ばれてます。

 こんなやり取りの中でも、お二人の信頼関係が見え隠れしていますね。

 うんうん、こんな精霊様がいるんなら、この国は安泰ですねぇ。

 ……あんたい?


「じゃねぇですよぉぉぉ!?」


「キャッ」


 そうです! このままでは国の土がダメになってしまうのでした!

 フィルボ談義に花が咲いて、すっかり忘れてしまっていました。


「……ココナ、忘れてたな」


「そ、そったらことないですよ?」


「なぁに? 突然どうしたの?」


 キョトンとするえっちゃんですが、彼は……彼女は? ……えっちゃんはそれを把握しているのでしょうか?

 いえ、把握していないはずがありません。何者かの攻撃を、この人が見落とすはずがない……と、思いますもの。


「えっちゃん、私が来た目的をお教えします!」


「えぇ、是非聞かせてほしいわ? 私達がもっと仲良くなるためにも、お互いを知っていきましょう?」


 輝かしい美貌と魅惑の低音ボイスでこちらの言葉を待つえっちゃんからは、お話しできる楽しみが浮かんでいます。

 私が妖精だから、対等に話せる相手として認識してくれているのでしょうか? しかし、その楽しみはお預けしないといけません。


「よく聞いてください、えっちゃん。この国の土は、少しずつ蝕まれているのです!」


「……えぇと?」


 目をぱちくりさせるえっちゃんに、私はこれまでの事をお話ししました。

 管理者としての生活、お茶への熱い想い。

 ノーデさんとの出会い、ヤテンから受け継いだメッセージ。

 それら全てを話し終え、改めてえっちゃんに向き直ります。


「このままでは、ピット国の土はダメになってしまうでしょう。草木が枯れ、じわじわと崩壊していきかねないのです!」


「……まぁ、にわかには信じられない話なんだがな。この嬢ちゃんの性格上、嘘ついてるとも思えん。しかし、アンタがそんな事を見逃しているとも思えないんだ、俺は」


「…………」


「なんでも良いんです! えっちゃんが知っていることを、教えてくれませんか?」


 じっと私が見つめていると……これまで楽しそうだったえっちゃんに、変化が見られました。

 なんというか……あからさまといいますか。

 そっぽを向き、口元を抑え、冷や汗をダラダラ流しながらブツブツと何かしら呟いているという……完全に後ろめたさしかない感じになってしまっています。


「なななななななんでもないととと思うわよぉ?」


 凄いです。いっそ清々しい程にドヘタなしらばっくれ方してますこの人。

 目、めっちゃ泳ぎ過ぎて魚になってますよ!? 貧乏ゆすりでタップダンスまで披露してます!


「……精霊様……アンタ、俺らになに隠してる」


「い、いやぁねぇデノンちゃん。私はなぁんにも知らないわ?」


「……国王権限で保育園を長期休園にしてほしいらしいな?」


「ひぃん!? そんな意地悪言わないでちょうだいよぉ!」


「嫌ならさっさと吐きやがれ。俺らに隠れてアンタ何してる」


「うぅ……コ、ココナちゃぁん……」


 デノンさんの氷の視線に当てられ、涙目で私に助けを求めるえっちゃん。いやだソソるじゃないですか。

 しかし、私もピット国の現状を知るために来た身。ここは心を鬼にしちゃいます。


「えっちゃん……私は、お茶の味方ですよ?」


「あぁん、いけずぅ!」


 私にも見放され、味方のいなくなったえっちゃんは、ぴぴぷーっと頭から湯気を出しつつ反論を始めました。


「私はホントに、なにもしてないんだからぁ! この国は攻撃なんてされてないし、土も水も問題ないわ! ホントにホントよ? 今の国民は私の子どもみたいなものなのっ、苦労なんて絶対にさせないんだから!」


「……だ、そうだが?」


「うむぅ……」


 弱りました。えっちゃんから何も聞けないのでは、対策の立てようもありません。

 一体、この人は何を隠して……いや、隠してはいないんでしょうか。自然そのものである精霊が、嘘をつくとは考えにくいのですが……。


『……ふん、なんてざまだ、アースエレメンタルよ』


 ふと、そんな感じに膠着してしまった私達の後ろから、一つの念話が届きました。

 全員がそちらに目を向けると……そこには、全身をリボンで装飾されたゴンさんの姿が!

 か、カワイイです!


「……なんて様なのよ、霊獣」


『黙れ! 貴様の教育が悪いからこのようなハメになったと知るがいい!』


「カワイイです!」


『黙れ! 貴様が我を見捨てるからこのようなハメになったと知るがいい!』


 明らかに不機嫌なゴンさん。しかしそれをひっくるめてカワイイだなんてなんて罪なくまさんでしょう。

 思わず抱きついてもふもふしてしまいます。


『まったく……まぁそれはそれとしてだ。アースエレメンタルよ。貴様がこの地を守護していると聞いて来てみれば、そのみすぼらしい姿はなんだ? どうりでこの土地も痩せると宣告されるはずよ』


「……? ゴンさん、やっぱり知り合いなんですか?」


『昔少々馴染みがあっただけだ。向こう百年会ってもおらぬ赤の他人よ。……しかし、むかしのあれはもっと強大であったがな』


 なにそれ詳しく。ゴンさんとえっちゃんの昔話超聞きたいんですけど。

 どこで会ってどんな馴れ初めでどんな展開こんな展開が発展されていたので!?


「落ち着いてココナちゃん! 妄想で鼻から樹液が溢れてるわ!? 私達そういう関係じゃないから!」


「はぁ! い、いけないいけない……!」


「ココナ、お前もう座ってろ……話進まねぇ!」


『同感だ』


「そんなヒドイ!?」


 それから二分後。

 結局私は、椅子に座って3人のお話しを黙って聞く係になってしまいました。

 むぅ、私だけ仲間はずれです。


「……で、話しを戻しますが……」


 改めて、デノンさんがテーブルの上座に付き、互いに見つめあうゴンさんとえっちゃんを取り持ってます。

 イケメンが三人……非常に絵になりますねぇ。


「守護者様。土地が痩せるという原因は、精霊様にあるんで?」


『ふん、然り。そこな精霊の自己管理がなっておらぬが故にこの国は危機に瀕しているのだ』


「瀕してまーせーんー! 土地も枯れないし、これからも発展するわよんっ」


 ゴンさんの言葉を頑なに否定するえっちゃん。

 自己管理不足とは、どういう意味でしょう?


『……己が消滅したとしても、と言葉を紡がぬのか? アースエレメンタルよ』


「っ」


「…………」


 ……え?


『貴様は、己の存在をフィルボに注ぎ過ぎておる。あれほどの力がもはや残り滓程しか残っておらぬのがなによりの証拠よ。……このままだと、近く貴様は消滅するだろう。気づいておらぬ訳でもあるまい』


 ゴンさんの放った、爆弾発言。

 それは、ピット国の根底を覆しかねないものでした。

 

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