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ドライアドさんのお茶ポーション  作者: べべ
第二章:「ドライアドさんとショタにポーション」
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第15話:モンキーマジック

どもどもべべでございます!

忙しいよぅ……イベントと発表会が連日で重なるよぅ。

誰か、おらにもうひとりの体を恵んでくれぇ!

まぁそんなこんなでご投稿。どうぞ、お楽しみあれ~

 

 ビッグエイプ。

 その名の通り、見た目はでっかいお猿さんです。

 大きいと言ってもゴリラとは違い、スマートで機動性に富んだフォルムをしています。

 見た目からして大きいだけの動物に見えますが、その本質はしっかりと魔物。

 周囲の仲間と連携を取る術を持ち、突出した能力を持たない故に堅実で数を利用した狩猟を行ってきます。


 彼らの一番の特徴は、「やられたらやり返す」の精神。

 群れの一匹が殴られれば、やれ正当防衛じゃと主張するかのように全軍で取り囲み、殴る蹴るの暴行をくわえてくるのです。

 あな恐ろしや、いと恐ろしや。

 まるで相手の事務所にダンプを突っ込ませるイズムに満ち溢れたYAKUZA屋さんの如き彼らに、私は今取り囲まれそうなのでありまして……。


「だから早く助けてくださいよぉぉ!?」


「「「ホァァァァァァァァ!!」」」


「ひぃぃぃぃ!?」


 そんな私を是非とも助けていただきたく存じますがいかに!?


「流石にこれ以上はイジメですな! では守護者様、私はお先に行かせていただきます!」


『ふん、好きにせよ』


 おぉ、ようやっとノーデさんが動いてくれました!

 腰に差した剣を抜き、颯爽と私とビッグエイプ達の間に割って入ります!


「さぁココナ様、ここは私に任せてお離れください!」


「ありがとうございますぅぅ!」


 即座にほうほうの体で逃げ出す私。恥も外聞もあったもんじゃありませんが、命あっての物種です。

 それに、私がいつまでも近くにいたら足を引っ張ってしまいますしねっ。

 こそこそと近くの草場に潜り込み、スニーキングに努めます。


「……おぉ……」


 ようやく一心地ついた所でノーデさんの方を覗いてみて、私は思わず声を漏らしてしまいました。

 ノーデさんの動きは、まるで剣舞でも嗜んでいるかのように優雅なそれです。

 ビッグエイプ達の攻撃を寸前で回避し、剣で受け流し、反らす。

 体の小ささを利用し、まるで集団を縫うかのように場所を変え、狙いを絞らせないように動いているのがわかります。


 これは、ビッグエイプの復讐対象にならないよう、相手を傷つけずにこの場を収めようとしているのでしょうか?

 なんにしたって、こんな芸当は相当な実力がなくては出来ないことでしょうね。およそ10匹程もいるビッグエイプを相手に、一匹も傷つけずに体力を消耗させているのですから。

 あんな事ができるのに、どうして先日血みどろさん状態だったのでしょう?


「ホァッホホホホ!!」


「キャァァァァ!」


「アォッォッォッオ!!」


 ビッグエイプ達はひらひらと当たらないノーデさんに業を煮やしているのか、奇声を発しながら腕を振り回しています。

 いい加減、諦めたりしないんですかねぇ……。


『ふむ、厄介なことだな』


「あ、ゴンさんっ。助けにいかないんです?」


 気づけば、私の後ろにはゴンさんがいました。

 どうやら、見ているだけの様子でしたが……。


『うむ、ビッグエイプが群れるのは当然故、我が間引く必要はないと思って見ておった。森の中では当たり前の光景であったからな』


「相変わらず基準が森に異常がないかどうかなんですねぇ」


『当然よ……しかし、今回の奴等は通常とは違った行動を取っておる』


 違う行動?

 ノーデさんを追い回している光景を見るに、そんなおかしな点は見られないような気がしますけど……。


『あの猛る奇声よ。あれは、仲間を呼んでおる』


「そうなんですか? ……いやでも、ビッグエイプってそういう魔物じゃないんですか?」


『否、やつらは群れの1つ1つが独立しておる。その中で営み、その中でのみ復讐を完結させる。……そうでなければ、1匹殺めただけで森全体に生息するビッグエイプと渡り合わねばならんからな』


「た、確かに……なんて恐ろしい……!」


『何匹来ようと取るに足らん雑魚なれど、数でこられると鬱陶しい。ましてや、そんな事をすれば種の絶滅もありえる……やつらのしていることは、おおよそ自然なことではない』


 あぁ、なるほど。

 ノーデさんがこの前血みどろさんだったのは、今回みたいに想像以上の軍隊が出来上がったからだったんですね。

 そして、今も仲間を呼んで袋叩きにしようとしている……ノーデさんは手を出していないのに、なんという残虐性。

 確かに、この森の生態系には似つかわしくない変化かもしれません。凶暴さが増していると言えましょう。


『と、なると……あれは我にとっても看過できるものではない』


 私の後ろで、ゴンさんが立ち上がります。

 その顔は下から覗くと、キリリとしていて大変なイケメンベアっぷりです。


『種を滅ぼし、森を侵す変質だ。故に間引く必要がある……おそらく、奴等にこのような知恵を植え付けた者もいるはずだが……今から探すには時間がないか』


 一歩、また一歩と群れへ近づいていくゴンさん。

 その存在に気づかない程に、ボルテージと言う名の愚かさが上がっているお猿さんたち。彼らの視線は、未だにノーデさんに向いています。


「「ホァッ! ホァ……ホァァァァァ!?」」


 あ、呼ばれて合流しようとしていた数匹が逃げました。

 まぁ無理もないですね。ゴンさん見ちゃったら勝てないって悟りますよそりゃ。


「ホ?」


「キャア! ガッ、ホッホッ!」


「マキィィィ!!」


 逃げた連中を非難するように、ビッグエイプ達は声をあげています。

 その様子にゴンさんは目元をひくつかせ、明らかに不快なご様子。

 そして……


『邪魔だ』


 近くにいたビッグエイプの顔面を、バシンと一発。

 それだけで、哀れなお猿さんは地面とキッス。それだけでは飽き足らずに数mもの距離を滑走し、近くの樹に頭からハグをしてようやく止まりました。

 ……うん、あっちはもう見ないでおきましょう。


「おぉ、守護者様! ご助力感謝いたします!」


『勘違いするな。こやつらを間引く必要が出てきただけよ』


「「ホァ……?」」


 復讐の対象などはもはや関係なく、いたぶる為に獲物を取り囲んでいたビッグエイプ達。

 そんな野盗のごときかれらは、一匹の犠牲によってようやく本来の冷静さを取り戻していました。

 この世から他界他界してしまったお仲間を一瞥し、現世からフライトするまでの滑走路を目で追い、ようやく全員の眼がゴンさんを捉えます。


「……グルルル……」


「「ホ、ホ、ホギャアアアアア!?」」


 後の祭り。そんなことわざが頭を横切るナイスリアクション。

 そこから先は、蹂躙劇と相成りました。

 私、ゴンさんが戦うところって、マンティコアの顔面に一撃叩き込むところしか見たことなかったんですけども……いやぁ、強いのなんのって。


 まず、逃げようとしたお猿さん達の周りを一周して恐怖を与えて足を止めていました。なんですかあの瞬発力、あの大きさで……反則でしょ。

 その後は一匹に頭から噛み付いて振り回し、吐き出して眼の前の数匹にプレゼント。激突させて動きを封じます。

 未だ無事ながらも恐慌状態になったお相手に対しては、軽く爪を振るってスライスし、残った面子が横切って逃げようとしているのに気づけば、前足を軸にグルンと一回転。下半身で薙ぎ払うという、どこぞの狩りゲーでクマ型モンスターがやってたみたいな攻撃で仕留めていました。


 あとは、最初に人間(猿)砲弾で動きを封じた子たちを丁寧に一匹ずつ仕留めていくだけ……シロアリ駆除専門員のごとき、手慣れた職人の作業がごときスムーズさ。

 逃げることすら叶わない。まさに知恵ある暴風です。


「いやぁ……鬼神のごとしとはまさにこの事ですな」


「ノーデさん、お疲れ様でしたっ」


「いえいえ、お恥ずかしい。かつてはビッグエイプなど、あぁしておれば勝手に諦めていたのですが……やはり今回もダメでした」


「という事は、やっぱりこの前のも?」


「えぇ、凌いでいる内に数を増やされましてな。前回だけの異例ではなかったご様子……守護者様がいてくれてよかった」


 避難してきたノーデさんのお話しも、大変興味深かったです。

 うーん……コカトリスの大量発生、ビッグエイプの生態変化。

 この森に、何が起こっているのでしょう?


『……終わったぞ』


「ゴンさん! カッコ良かったですよー!」


『わかりきった事を申すな。だが良い、受け取ろう』


 とても気になる所ではありますが、森全域を調査していたらピット国が保たないかもしれません。

 ここは優先順位を変えずに、一度ピット国へ向かいましょう。

 私がちゃんと一緒にいる状態での、初めての戦闘。

 それは、疑念を残しつつも無事に終わったのでありました。

 

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