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ドライアドさんのお茶ポーション  作者: べべ
第二章:「ドライアドさんとショタにポーション」
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第10話:良い子にねんねしてたショタ

どもどもべべでございます!

福岡楽しかったです! 次は地元で大きいイベント2つこなさねば……!

頑張るぞーっ。

という訳でご投稿。どうぞ、お楽しみあれ~


「う、む……」


 ゆっくりと、血みどろさんが目を開けます。

 ここはゴンさんの洞窟なので、天井はむき出しの岩です。少々戸惑うでしょうが、まぁ野ざらしで目覚めるよりはいいでしょう。

 布団代わりに被せていた。結び合わせた草のシートを腕でどかしつつ、血みどろさんは周囲を見回しました。

 その過程で、すぐ近くに座っている私達と目が合います。


「おはようございます。体、大丈夫ですか~?」


「貴女は……先程の! あれは夢ではなかったのですねっ、つつ……」


「あぁ、まだ動いたら傷に触りますよ~」


「い、いえ……私の体などより、まずは……!」


 そう言って、血みどろさんは体を無理やり気味に起こし、片膝をついた形になると目を伏せて硬直してしまいました。

 はて、なんでしょうこのポーズ。


『フィルボ族が祈りを捧げる時に、こういう体勢を取るらしいぞ』


「祈りですか……?」


『大方、我や貴様を見て祈るべき存在だと感じたのであろう。ふんっ、その着眼点は褒めてやらんこともない』


 おぉ……祈られるなんて初めての経験ですよ!

 なんかえらくなった気分……ん? 森の管理者って普通偉い気が……まぁ、いいか。


「……ふぅ。いやぁ、手厚い看護痛み入ります!」


 祈りが終わったのか、腰を落ち着けて私達2人に頭を下げるフィルボ族の血みどろさん。

 うぅむ、どうやら本当に、性根が真っ直ぐな人のようです。

 というか、見ず知らずの場所に見ず知らずの人がいるのに警戒しないっていうのは……少々不安になるくらいの純朴さと言いますか。


「改めまして、私の名はノーデ! ピット国が誇る悠然なる大樹の騎士団にて、団長を努めさせていただいております!」


「あ、あぁ、これはこれはご丁寧に~。私は光中心和、ドライアドです。こちらはゴンさんです~」


 ノーデさん、良いお名前ですねぇ。

 しかも、自己紹介の時点で結構な立場の人っぽいのがわかってしまいました。これは助けて正解でしたね~。


「ドライアド……妖精様ですか! なんという……しかもそちらにおわしますは、伝説に語られる森の守護者様では! その輝かんばかりの白銀の体毛、伝承の通りです!」


「……グルゥ」


 あぁっ、なんと煩わしそうなゴンさん……。

 血みどろ……もとい、ノーデさんのキラキラした視線に耐えかねているご様子です。

 なんとかしてくれっていう視線が、こちらにめっちゃ飛んできてるのがわかりますよ。


「えぁっと、確かにゴンさんは守護者様で間違いないですよ?」


『おいうつけ! 肯定したら余計に騒ぐであろうが!』


 あ、ダメでした?

 う~ん、確かにノーデさんの目が眩しいくらいにキラッキラしてしまっています。これはやってしまいました。


「おぉぉ……! 今日という日は、我が今生において最上の瞬間となりえましょう! よもや、伝説の守護者様にお会いできたのみならず、バウムの森に顕現した妖精様に助けていただけるとは……!」


「え、え~と、とりあえずご無事で何よりです~。ですが、そんなに興奮なさいますとお体に触りますよ?」


『それ以前に気色が悪いわ』


 ゴンさん、なんで私にだけ聞こえるようにそういう事言うんですか……?

 私だけ気をつかってしまうではないですか……!


「これは失礼を! ですが、私自身今の状況が夢のようでして……!」


「えぇ、えぇ、詳しいお話は私も聞きたいところでして~。ですが、まぁ今は一杯飲んでから落ち着いてくださいな~」


 とりあえず、テンション上がりすぎて痛みが麻痺してるみたいなんで、今のうちに体は治してしまいましょう。

 麦茶を一杯カップに注ぎ、ノーデさんに差し出してみます。


「おぉ、ありがたい! 実はちょうど喉が乾いて……、っ、これは……」


「? どうしました?」


「あ、あぁいえ! いただきます!」


 カップを受け取り、自分の目線までそれを持ってくると、ノーデさんはまた祈りを捧げ始めます。

 フィルボ族って、みんなこんな感じなんでしょうか?

 というか、さっきのお茶見て出てきた変なリアクションは一体……? そう思ってる内に、ノーデさんは麦茶を一口含み、ゆっくりと味わい始めました。


「……美味しゅうございます。この口の中で広がる香ばしい風味。麦を使っているのですね? 里のご隠居様方が似たような茶を作っておりました」


 なんと! フィルボの里でも麦茶は作られているのですね!

 これは是非とも美味しい淹れ方や育てる時の知恵をお聞きしなければ!


「おぉ……これは! 私の傷が……!」


 そうこうしている内に、麦茶の効果が発揮されていっているご様子。

 ノーデさんの傷が、みるみる癒えていくのが見て取れます。

 よかったです。これで彼の痛々しい姿をじっと見つめるという苦行を行わなくてすみそうです。


「なんという事でしょう……! まさかとは思っていましたが、予想以上に素晴らしい効能です!」


「うふふ、これでもう痛くないでしょう? ゆっくりお話できますね」


「おぉ、まさに聖女のごとき笑顔! このノーデ、一生のご恩をお受けいたしました! 感謝いたします!」


 うんうん、そんなに喜ばれて、私もお鼻が高いです。


「えぇ、うふふ、良いんですよ? では、そろそろ……」


「ココナ様! 貴方様は私の命の恩人です! このノーデ、受けたご恩を百倍で返していく所存にございます!」


「いえいえそんな、良いんですよ? ですので、何故貴方がここに来たのか説明を……」


「あぁ、この気持をどう表現いたしましょう! そうだ、今ここで一曲歌を送らせていただければ――――」


「ゴンさん、チョ~ップ」


「フンッ」


「げぶはぁ!?」


 あぁっ!? しまった、話しが進まないものだからイラっときてゴンさんに指示をだしてしまった!

 ノーデさんがキリモミ回転して顔面でトリプルアクセル決めてしまいました!?


「お、おぉ……我が生涯に、一片の悔いなし……」


「あわわわ! ごめんなさい~! お茶、お茶飲んで~!」


 結局、落ち着いて話しができるようになったのは、それから五分位たってからでした。




    ◆  ◆  ◆




「そもそも、私がこの場に派遣されたのは、国王様よりご命令を受けての事でございました」


 もっかいお茶を飲んで復活したノーデさんは、ようやく私達の元に姿を表した理由を教えてくださいました。

 まぁ、ゴンさんの言う通りでしたね。世間樹が生えた事に大層驚き、その原因と正体を掴むべく国王からの命でこの森に足を運んだ、と。

 ですが、森をある程度進んでいった所で、ビッグエイプの群れに襲われたそうです。

 ビッグエイプとは文字通り、大きな猿の魔物です。頭が良く、集団で活動するとても厄介な魔物ですねぇ。


「軽く騎士団の総数程はおりましたな。いやはや、バウムの森の危険性は承知で望んだ行進なれど、よもやあれほどの規模で襲われるとは思いませなんだ!」


『ふむ……だが、こいつの実力を見る限り、ビッグエイプごときにやられるとは思えんぞ?』


 そうなんですか?

 ノーデさんの強さを私は感じ取れませんが、ゴンさんが言うならばそうなのでしょう。

 ビッグエイプは賢く、厄介な魔物なのは確かなのですが……コカトリスのように危険な能力があるわけでもないので、魔物としての危険性は低いほうなんですね。

 せっかくなので、ゴンさんが言っていたことを指摘してみます。


「あぁいや、その点に関してはお恥ずかしい限り。ですが、これは我が信仰に殉じた結果にございますれば!」


「信仰ですか?」


「えぇ、我らフィルボの民は、森の中で一日の内にできる殺生の量を定めているのですよ。なので、大群に襲われたら逃げるしかないのです」


 話しをよくよく聞いてみますと、フィルボ族は森に信仰を捧げているので、森の生態系を著しく崩すような殺生はしないそうなのです。

 もちろん、森の外に出てきて危害をくわえてくる魔物や動物は別のようですが……それでも、かなりのリスクを伴う掟ですね。ノーデさんは、死の際にあってもその教えを貫いたわけですか。

 愚かしくも真っ直ぐな人ですねぇ。


「うぅん……ですが、信仰のために命を危険に晒すのは、あまり褒められたことではないですよ?」


「温かいお叱り、痛み入ります。ですが、ビッグエイプは恨みを抱いた後が怖いのです。得物の匂いからその縁者まで割り出して復讐に当たると聞きます故、国に迷惑をかけるよりは信仰に従うべきだと判断いたしました」


『少々大袈裟だが、あのサル共は確かにどこまでも追ってくるぞ。今回はコヤツが無抵抗だったから復讐の対象になっておらんだけだ』


 なんと。そういう意味も含んでいたのですね。

 うぅん、それならば仕方ない、のでしょうか? 結果見事に逃げ出す事に成功して、こうして命を繋いだノーデさんを褒めるべきなのです。


「そういうことでしたら……ノーデさん、よく頑張りましたね~」


「おぉ……!」


 頭をナデナデしてみると、感動しているのかノーデさんの周囲に花が舞っているのが見えます。

 なんだこの子可愛いなおい。

 なんでしょう、こう、心和の知識というか……心和の性癖っぽい部分がすごくムラムラしてきますが。

 あぁぁ! 瞳を細めながら頭を擦りつけてくる! もっと撫でてって言外に伝えてくるこの小動物な感じ!


「はぁ、はぁ……ノーデさん、ちょっとそこの裏でお話しが……」


『やめんかうつけ』


「頭が割れるように痛いぃぃぃい!?」


「?」


 他種族との初コンタクト。

 それは、私の性癖開拓と、アイアンクローと共に幕を開けたのでございました。

 

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