幕開け
――――――寒い。体のあちこちが軋む。
どうやら長い間眠っていたようだ。
「(ここはどこだ?)」
寝起きでまだ起きていない脳を無理やり働かせながら、思考をめぐらす。
「お、兄ちゃん起きたか」
わずかに差し込む光の中、近くで座り込んでいる見知らぬ中年おじさんに声をかけられた。
「儂ら、どうやら拉致されたみたいだぜ…」
拉致された?何だって俺なんかを??
現状を理解しようとしてる脳に更に追い打ちをかけられ混乱する。
「あんたは一体何者なんだ?」
「儂か?ただの会社員…村田っちゅうもんでさぁ」
そう名乗る中年おじさんの顔は少し笑っていた。
「儂も兄ちゃんの少し前に目が覚めてな、今ようやっと落ち着いてきたとこなんや」
「じゃあ今俺たちが置かれてる状況も…」
「ああ、儂も兄ちゃんと同じ…ここがどこかもなんでここで眠らされてたかもわからん。
ただ1つわかることは、ケータイに送られてきた送信者不明のメールを開いた後、何者かに
襲われて目が覚めたらここにいたってことだけやなぁ」
「あっ…!」
思い出した。村田のおかげで襲われる前の記憶が呼び起された。
俺のとこにも送信者不明のメールが送信されていた。それがこの状況を生んだ原因なのは間違いないだろう。
「兄ちゃんも心当たりがあるようだな、まぁどちらにせよ穏やかな状況ではないのはたしかや。
儂ら以外にもここに連れてこられた者もたくさん居るみたいやし…。」
そう言われ周りを見回すと、30人くらいだろうか、それこそ年齢性別もバラバラな者たちが俺らのように無造作に寝かされていた。
「起きているのは俺たちだけか…。」
「そうや。あんたで2人目や。まぁよかったわ、儂が目を覚ました時は誰も起きてなかったし、兄ちゃん以上に混乱してたもんや」
そう言うと村田は大きな声で笑い出した。