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好きになる気持ち

 一悶着こそあったけど僕はキャロとダークゾーンの先に向かった。 カルラまで一緒についてくるって言った事には驚いたけど、キャロも奴隷であるなら主人と離れられないのだから仕方がないって事でついてくる事になった。



「ンフフ」


 ダークゾーンに入ってからキャロはずっと僕の腕に抱きついている。 腕の感触は少し気持ち悪かったけど、それ以外の触れてくる場所はキャロのままで、柔らかい胸も腕に押し付けてきていてちょっぴり嬉しい……



「キャロ、その、ちょっとくっつきすぎだよ。 カルラもいるんだしさ」

「私の事はオブジェクトとでも思って頂いてもらって構いません」


 フォォォォォォ! まさかキャロじゃなくて、カルラが許容してきたよ。 そりゃ奴隷なんだから当たり前だろうけど、見てる前ではやめて欲しいとかないの!?



「あの子も言ってるんだからいいじゃない? ね?」

「あ、あはは……はっ!」


 気配が近づいてくる。 しかもたくさん。



「キャロ!」

「大丈夫、私の側にいてね」




 少しすると大量のゼノモーフが姿を見せて僕たちを取り囲み出した。



「キャロ……」


 僕の腕に抱きついていたキャロがカルラの腕を掴んで引き寄せる。 そしてゼノモーフたちに僕たちを襲わないように言うと、ゼノモーフたちがキシャーキシャー鳴き始めて、しばらくすると一気にどこかに散りはじめていなくなった。



「す、すごい……本当に言うことを聞いた」

「ね? これであいつらは大丈夫よ」


 槍を構えていたカルラもホッと一息ついていた。

 ざっと見ただけで1000体以上はいたと思う。 卵にされた王国の兵士の大半は焼き尽くされたはずだけど、それでもまだあれだけの数がいたのかと思うと驚かされる。




「それでこれからどうするの? まさかこんなところじゃ食料も水もないから暮らしてなんかいけないよ?」


 パァッと明るい顔を浮かべたキャロが、僕にしがみついてくる。



「マイセン本当に私と一緒にいてくれる気でいるんだね!」

「当然だよ、僕は君を絶対に守る約束をしたんだ。 それにシリクさんたちが君を助けるために死んだことが無駄になるじゃないか」


 キャロの顔が曇る。 それがどういう意味の表情なのかわからないけど、僕は悔やんでくれていると思いたい。



「早くなんとかしないとここも封印されかねないよ?」

「たぶん大丈夫。 あの女、アラスカがさせないから。 でもマイセンは絶対に渡さないんだから!」


 えーと……そういえばキャロもアラスカさんも僕のこと好きだって言ってくれたんだよな。



「あの……」


 申し訳なさそうに頭を下げながら、カルラがもしゼノモーフに襲われないのであれば、ここを捜索したいって言ってくる。

 僕がキャロに顔を向けると卵と幼体以外ならおそらく大丈夫だろうって、卵と幼体にはやっぱり判断力なんてものはないみたいだ。 もっともそれがわかるキャロの方が心配になってくる。




「じゃあ卵と幼体には気をつけてね」

「はい」


 そういうとカルラは頭を下げて走り去っていった。



「なかなか気が効く奴隷なんだから」

「え?」


 キャロが腕ではなくて身体に抱きついてきて、目を瞑って口を尖らせてゆっくり僕の顔に近づいてくる。



「ちょ、ちょちょちょー! キャロ、ダメ! ダメだよ! 僕がちゃんとキャロの事を好きだってわかるまでは待って!」


 目を開けてほおを膨らませて、見つめてくる。



「もういい。 私がしたいからするんだから!」


 ものすごい力に掴まれて口づけをしてくる。 口の中に舌が割り込んできた時は、あのインナーマウスが脳裏をよぎったけど、柔らかい舌の感触で安心した。 というより、美少女と口づけしてるかと思うと正直なところ嬉しい。

 プハッと酸素を求めて口を離すと唾液が糸を引く。



「キャロ……」

「ん、なに? マイセン」


 今度は僕の方から抱き締めて口づけをすると、キャロが驚いて口を離してきた。



「マイセン!? なんで? どうして?」

「わからない……ただ僕もしたくなった」

「でも私、こんな身体だよ?」

「キャロをそんな風にしたのは僕だ。 僕に責任がある」




 いきなりキャロが僕を突き飛ばしてくる。 その表情はすごく怒っていて、情や罪悪感からならやめてって怒鳴られる。

 もちろんそんなつもりじゃなくて、純粋な気持ちで抱き締めて口づけをしたつもりだってすぐに僕も答えた。



「君を失いたくない。 君が大事だ。 君と一緒にいたい。 抱きしめたい。 全部本当の気持ちだよ!」



 思った事を全部口にしたつもりだった。 するとキャロが顔を赤くさせながら僕の事を見てくる。



「それって告白じゃないの? どう聞いたって、好きって言われてるようにしか思わないんだけど」

「そ、そうなの?」

「普通はそうだと思う……」


 そうなのかな? これが好きっていうやつなのかな?

 僕がウンウン唸っていると、キャロが今したい事をやってみてなんて言ってくる。 だから僕はキャロを抱きしめて口づけをする。

 どうやら僕は、キャロの事が好きらしい……


 この時に僕は一個人の人を好きになるということを理解できた気がした。





次話更新は明日の予定です。

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