死んでいった仲間たちの為に
声の聞こえた方に顔を向けるとそこにキャロがいる。
手と足がゼノモーフのようになっていて、今は尻尾まで生えて……
一瞬迷ったけど、僕は立ち上がってキャロの方へ行こうとすると、アラスカさんが止めてくる。
「よせ! あれはもうキャロンじゃない!」
「いいえ、キャロです! そうだよねキャロ?」
キャロはニコニコしながら頷いてキャロの方から近寄ってきて、僕もアラスカさんの手を振りほどいてキャロに近づく。
「やっぱりマイセンは優しいね。 他の人は私のこの姿を見て化け物扱いするんだよ」
「酷いと思うけど今は大統領府に戻ってその身体を治そうよ」
「嫌よ。 私はあそこにはもう戻らない。 みんな、そこの女だって私の事を化け物扱い。 マイセンだけは私の事をそんな風に見なかった」
「そんなの当然だよ。 それより戻らないならどこに行くつもりなの?」
キャロがダークゾーンの先を指差してくる。 当然その先にはゼノモーフがいて危険な場所だ。
「キャロもわかってるはずだ。 この先は危険なんだよ!」
「大丈夫だよ、マイセン……私ね、あいつらを使役できる力があるの。 この手と足、尻尾はその代償なのかもしれないけど……」
だから一緒に行こうって僕の手を掴んでこようとするのを、アラスカさんが僕を引っ張ってキャロから引き離そうとする。
「ちょっと邪魔しないでよ」
怒りに満ちた表情を浮かべたキャロがアラスカさんを睨みつける。 嫌な予感がした僕は、咄嗟にキャロに町にいるゼノモーフはキャロがやったのか聞いて話をそらすと、見張りなんかが邪魔をするから抜け出すために仕方がなかったの、なんてエヘって感じの仕草を見せる。
「でも町にゼノモーフはいなかったはずだよ」
「うん、マイセンには謝らないといけないんだけどね……」
そう言って口を開けてみせてきて、中からヤゴのようなインナーマウスが飛び出てくる。
「うわっ!」
苦笑いを浮かべながら、そこから見張りにチェストバスターを体内に植え付けたんだそうだ。
「ファーストキスは見張りの人とになっちゃったんだ……仕方がなかったの、マイセンならわかってくれるよね、ね?」
僕はこれに対してどう答えるべきなんだろうか? ここまで見せられて自分が逃げるためとはいえ、体内にチェストバスターを植え付けるなんてことはやっぱりやってはいけない事だ。 以前のキャロなら絶対にこんな事はしない。
だから僕はキャロに自分の思った事をキャロに伝えて、以前のキャロならそんな事をするような人じゃなかった事を伝える。
「そうだね、そうだよね。 もうしないから、だから私と一緒にいて。 言ってくれたよね? 私の事を好きだって」
「好きかも、だよ」
「うん、だからゆっくり私の事を好きになってくれればいいから、ね? だから一緒に行こう?」
どうする? 僕はどうしたらいい? キャロを信じるべきか、それとももう今目の前にいるキャロはもう以前のキャロではなくなっているのか。
僕が迷っていると、いたぞ! と声が上がって冒険者らしい人物たちが向かってくる。
「マイセン! そいつはもはやキャロではないぞ!」
その中にギルガメシュさんもいて、声が聞こえてくるのと同時にキャロに容赦のない弓による射撃が行われる。
「キャロ!」
何本もの矢がキャロ目掛けて射掛けられる。
「飛来する我に害を及ぼすものより守れ! 矢弾保護!」
その攻撃をキャロは魔法を使って防ぐ。 着弾して爆発して辺りに煙がもうもうと巻き上がって見えなくなる。
煙が晴れると、ゼノモーフ化した手で身を守っているキャロの姿があって、どうやら無傷のようだ。
「私の、邪魔を……するなぁぁぁぁぁぁ!」
「キャロいけない!」
「我が眼前の敵を爆せよ! 火球!」
キャロのゼノモーフの手から火球がギルガメシュさんたちの方に向かって放たれる。
「せいっ!」
その火球を青白い光を放った7つ星の剣でアラスカさんが斬りつけて、軌道をそらして爆発させた。
「なんで私の邪魔をするの! なんで私は襲われなきゃいけないの!」
「キャロ、一緒に行くよ! だからもういいじゃないか!」
「マイセン!?」
「本当に!」
アラスカさんが驚いて、キャロは嬉しそうな声をあげた。
僕はキャロを守るって約束したじゃないか。 キャロがキャロである限り僕はキャロを守るんだ。
そうでなきゃ……キャロを助けるために死んでいったシリクさん、テトラさん、ガラシャさん、そしてフレイさんたちに申し訳が立たないじゃないか。
次話更新は明日の予定です。




