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カルラ

 アラスカさんと大統領府を出ると、当然奴隷の女の子も一緒についてきている。



「まずはその子の格好を何とかしないといけないな」


 アラスカさんが7つ星の騎士団の外套を脱ぎながら言ってくる。 外套の下はノースリーブタートルネックで、アシンメトリーのスカート姿になった。



「これだけで7つ星の騎士とは気づかれないものなんだよ」


 隠密行動のため7つ星の騎士団の外套は身につけないみたいで、外套の下が意外に可愛らしい平服姿につい見惚れてしまう。



「どうした? どこかおかしなところがあるのか?」

「い、いえ、その、可愛いです!」


 ブボッと顔を真っ赤にさせて突然変な事を言うなって怒られた。

 でも本当に可愛らしいと思う。


 服装が———————




「あの……」


 奴隷の女の子が僕に頭を下げて何か言いたいようだ。 どうしたのか聞くと、アレスさんの槍を僕に手渡してきて、謝りに行きたいって言ってきた。 忘れていたわけじゃないけど、奥さんと子供に何て言ったらいいかずっと困っているとこだったのに。



「君のせいじゃない。 ちゃんと説明して話してあげればいい。 それに……奥さんも元冒険者ならある程度今回の事は分かっていたはずだ」


 そんなわけでアレスさんの家に向かおうと思ったけど場所を知らない。 なので1度冒険者ギルドで聞くことにした。





「マイセン君!」


 僕の姿を見てヴェルさんが小走りで駆け寄ってきて抱きしめてくる。 ウルドさんとスクルドさんも僕のそばまできて、無事を喜んでくれた。



「他の人たちはどうしたんだ?」


 ウルドさんにポケットから、シリクさん、テトラさん、ガラシャさん、そしてフレイさんのドッグタグを取り出して手渡す。



「まさかあのフレイさんまで……マイセン君が無事に戻ってくれただけでも嬉しいですよ」


 そうなると当然キャロの事も聞かれる。 返答に困るとアラスカさんが代わりに答えてくれた。



「ところでぇ、そちらの奴隷の女の子はどちら様なんでしょう?」

「えっとですね……」


 奴隷の女の子の説明のためにアレスさんが亡くなったことを話して、僕の奴隷になった経緯を話す。



「まさか登頂組の「戦神」「軍神」の2人まで……一体相手は何者だったの?」

「それは……」

「トップシークレットと言えば理解いただけると思う」


 僕が返答に困るとアラスカさんが助け舟を出してくれる。 トップシークレットと言われるとヴェルさんたちはそれ以上聞いてくるのをやめた。

 本来の目的であるアレスさんの家の場所を教えてもらって、冒険者ギルドを出ようとしてふと足を止める。



「そうでした! ヴェルさん、ウルドさん、スクルドさん、お守りちゃんと役に立ちました! ありがとうございます!」


 3人が顔を赤くさせながら、うやむやな返事を返してきて、アラスカさんがお守り? って聞いてくる。 なので耳元で小声で教えると、アラスカさんが3人を白い目で見つめていた。




 冒険者ギルドを出ようとした時、ギルドマスターのオーデンさんが姿を見せてアラスカさんを呼び止める。 なので僕と奴隷の女の子の2人だけでアレスさんの家に向かうことにした。



「そう言えば君の名前を決めないとね。 何か好きな名前とかないの?」

「私は奴隷なので」

「奴隷だからってやりたい事とかあるでしょ? だいたいなんで奴隷になったの?」


 奴隷になった理由を尋ねると顔色が変わって黙り込んでしまう。 よほどな理由でもあるのかもしれない。 なので理由を聞くのは辞めることにした。



「いいのですか?」

「うん、別にいいよ。 知ったからって僕がどうにかできるわけじゃないからね」

「……その、お気づかいありがとうございます」


 すぐにいつもの無表情に戻ったけど、初めて少しだけ笑顔を見せた気がする。



「ちょっとゴメンね」


 後ろに回り込んで奴隷の女の子の脇を思いきりくすぐった。



 ————————っ!


 声を上げてくすぐったがって体をよじらせながら僕のくすぐる手から逃れようと必死になっている。



「いきなり何をするんですか主様!」

「うん、笑った顔の方がいいよ」


 もっとも今は怒ってるっぽい顔を見せてるけど、今までの無表情よりはずっといい。


 僕は奴隷がいるっていうのは知ってるけど、奴隷をどう扱ったらいいのかわからないし、僕だって一歩間違ってたら奴隷だったのかもしれない。 それを話した上で奴隷命令(スレイブギアス)を行使する。



「僕は君の事を奴隷扱いはしない。 だから、もっと自由に楽しく生きて」


 奴隷の女の子が困った表情を見せて、どうしたらいいのか聞いてくる。 だからまずは……



「君の名前が知りたい、そして僕の仲間として一緒に来て欲しい。 だから僕の事もマイセンって呼んで欲しいな」

「ご期待に添えるかわかりませんが……よろしくお願いしますマイセン様。 私の名前はカルラと申します」


 僕が手を出すとカルラは迷いながら手を出してきて握ってきた。



 アレスさんの家に向かって歩きながら、僕はどう言うべきか考える。 隣を歩くカルラを見ると、カルラも思いつめたような暗い顔をしていた。



次話更新は明日の予定です。

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