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救援

 僕も身につけているけど、革鎧がこんなに硬いとは思わなかった。

 対する相手はモーニングスター。 1撃でも当たれば衝撃が届いて激痛が襲ってくるはずだ。



 避けきるしかない。 避けて機会を狙って、革鎧で守られていない箇所を攻撃しないと僕に勝ち目はない。




 相手はモーニングスターを振り下ろした状態から僕をなぎ払ってくるイメージが見える。

 すぐにそのイメージから逃げるように身体を動かして避けた。



 たかが革鎧、されど防具には変わりがなく、守られている場所は剣で狙いやすい場所ばかりだ。

 次々と湧いてくるイメージに合わせて身体を避け続けることで、僕と対峙している相手の攻撃を躱し続けられた。




 どうしたら……どこを狙えばいいんだ。


 僕は避けながら攻撃する場所を探して剣を振ってみたけど、やっぱり当てにくく避けられてしまう。



 攻撃してくるイメージが見えるなら、僕が攻撃して命中させるイメージが見えないのはおかしい。


 そう思った次の瞬間、クリアになったようにスッキリして僕の脳裏にそのイメージが見えた。 見えるようになった。



 次に来るモーニングスターの攻撃を躱したあと、そのイメージに沿って剣を振る。



 剣が命中した辺りを押さえながら、気味の悪い叫び声のような声を上げた。


 やった! と喜ぶ間もなく次のイメージが見えて、その通りに剣を動かすとゴブリンのような奴の喉を貫いた。



 喉元を貫かれて驚愕したような表情を浮かべながら、モーニングスターを持つ手を一瞬振り下ろそうとする動きを見せたけど、貫いた剣を抜くとそのまま崩れ落ちて動かなくなった。




 アレスさんに習ったとおり、完全に死んで動かなくなったか確認するまで油断できない。 1度だけ足で軽く蹴ってみる。

 それでも動かないのを確認した瞬間に力が抜けたように僕もその場に腰を下ろして、今更また震えだして止まらなくなった。





 それから程なくしてまた気配を感じる。 でも今度は数名でこちらへ近づく足音も聞こえている。

 震えが収まった僕は覚悟を決めて立ち上がり、剣を構えて向かってくる相手を見据えた。



 姿を見せたのはアレスさん、それに入り口で話をしていた男の人とあとは知らない人たちだった。



「ア、アレスさん!」

「無事だったかマイセン!」


 駆け寄ってきたけど、倒れている魔物を見て足を止めた。



「こいつは……バグベアか? お前が倒したっていうのか?」

「アレスさんに教わった通り戦って、なんとか倒せました」



 あとから来た人たちも僕とバグベアと言われた魔物と僕を見比べてる。



「アレス、本当にこいつは今日初めてダンジョンに入ったのか?」

「ああ……俺も疑ってるほどだ」


 なんだか2人に睨まれるように見つめられる。



「とりあえず話はあとだ。 今はここから抜け出すことを優先するぞ……っとその前にだ。

マイセン、そいつの持ち物は漁ったか?」

「え? 漁る!?」

「当たり前だ。 金目のものがあったら倒した奴のものになる」



 どうしたらいいかわからないでいると、アレスさんが見てろと言って、バグベアのモーニングスターを奪い、腰に下げていた袋を取り上げて中を開いてみる。



「うげ……こいつ数人やってやがるな」


 アレスさんがポイポイと捨てていくものを見たら、人の指だった。



「こいつはバグベアっていって、ゴブリンの亜種だ。 単独行動を好んで相手を痛めつけてなぶり殺しにする性癖があるんだ。

これはそのトロフィーみたいなもんだな」

「それで僕の腕や脚ばかりを執拗に狙っていたんですね……」



 なんの気兼ねなしに僕が言うと、アレスさんと一緒に来ていた人たちが僕のことを何も言わずに見つめてきた。



「まぁいい、ほれ! お前さんの戦利品だ。 相当な稼ぎだぞ」


 そう言って渡された袋を受け取ると、そこそこの重量があった。



「ついでにそこのお前と一緒に落ちてきた苔も拾っておけよ」



 言われるままに僕は苔を集めて、ぺったんこだった背負袋(バックパック)の中に詰め込んでいっぱいになった。



「急いで戻ろう。 俺も上は詳しいが下はほとんど来たことがない」

「悪りぃなつきあわせちまって」

「いや……おかげでいいものを見せてもらえた」



 なんのことか僕にはわからないまま、急いで出口へと向かう。


 アレスさんの話だと、ここはダンジョンの地下2階でデプスも1の範囲だった。

 デプス1、つまり1日で来れる距離を表しているんだけど、登頂と違ってダンジョンの方は魔物も強いらしいから、距離としてはさほどでもないらしい。





「……待ち伏せだ」


 先頭を進んでいた1人が声をかけてくる。

 そしてその先には僕たちの行く道を邪魔するように凶悪な顔をした巨人が数名立っていた。



「オーガか、こいつぁちっとばかし厄介だな」


 アレスさんがそんなことを口走った。





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