メーデイアの正体
追加更新です。
最初の見張りは僕とアラスカさんになって、次にシリクさんとガラシャさん、最後にフレイさんと奴隷の女の子で決まる。
僕とアラスカさんは接敵に気づくのが早いから別にしたほうが良いと思ったんだけど、フレイさんが半ば強制的に決めてしまった。
「それじゃあどんな些細なことでもあったら起こすようにしてくれ」
「わかりました」
4人が休みだして小さく寝息も聞こえ出すと、僕の隣にいるアラスカさんが手招きしてきてみんなから少し離れた場所にいく。
「離れすぎじゃないですか?」
「感知で位置はわかるから大丈夫。 それより……」
言い出しにくそうにしながら、僕の気持ちが知りたいって聞いてくる。 なので僕には好きになるというのがわからないことを話すと、アラスカさんが一瞬驚いた顔を見せてきた。
「そうか……それではキャロンを助けたいと思う気持ちはどうしてだ?」
「以前、必ず守るって約束をしたからです」
「それだけ……なのか? 他にはないのか?」
いなくなったら寂しいとか、女の子だからとか、思いつく限りを口にしていく。
「それは好きとは違うのか?」
「……よくわかりません。 でももし、キャロじゃなくてアラスカさんが攫われてたとしても、僕は同じ行動を取っていたと思います」
「……これはなかなか手強いな。 ……!」
「アラスカさん!」
近づく気配を感じて、2人頷いて仲間をそっと起こしに向かう。
全員起こして戦える準備をしていると、姿を見せてきた。
「メ、メーデイアさん!?」
そう、姿を見せたのはダークゾーンに向かったはずのメーデイアさんたちだった。
合流したまではいいけど、どうして来たのかがわからない。 なので当然理由を聞いてみると……
「あの子がいないと探すのに時間がかかりすぎるから、先にキャロンを救出することにしただけよ」
道はハサンさんがやっぱりコインを見つけて辿ってここまできたんだそう。
「拾わずに来て正解だったな」
「さすがシリクさん! この為に拾わなかったんですね!」
バツが悪そうな顔を見せながら、シリクさんは帰り道用とつぶやいた。
でもそのおかげで無事に合流できたんだから良かったんだと思う。
「その手にしているものは、まさか?」
そこでリセスドさんが早速魔物の尻尾の槍に気がついた。 経緯を説明するとディルムッドさんが興味を示した。
「ちょっと貸してもらえるか?」
奴隷の女の子から受け取るとその軽さに驚いているようで、次に背負袋から取り出した物を突き刺す。
「驚いたな……これは下手な魔法の武器より貫通力があるようだ」
ディルムッドさんが感想を述べると、横からメーデイアさんが槍をふんだくるように取って……
誰もがその光景に驚くことをしだした。 事もあろうか、メーデイアさんが自身の腕に槍を突き立てたのだから……
「やはり魔法の武器ではないわね。 まぁ魔物の尻尾なのだから当然といえば当然」
ありえなかった。 あれだけ鋭利な槍を腕に突き立てたにも関わらず、メーデイアさんの腕からは血どころか傷すら出来ていなかったんだから。
「おいメーデイア、貴様……人種じゃないな?」
「そこは私が説明しよう」
なぜかギルガメシュさんの声にアラスカさんが応えてくる。
そしてさらに驚く事がアラスカさんの口から飛び出てきた。
「メーデイアは、ここ霊峰竜角山の金竜だ」
この場にいる誰もが驚きの声をあげる。 中でも登頂組だったフレイさんは開いた口がふさがらない状態で口をパクパクさせてる。
「ピース合衆国になってからはトップシークレットで密かに連邦捜査局(FBI)として人と暮らしているというわけだ」
アラスカさんがメーデイアさんの素性を話したところで、メーデイアさんが付け加えてくる。
「今回のダンジョンの件は、言うなれば私の家に湧き出た虫の処理程度でいたのだけど、想定以上のものが現れたといったところよ」
「金竜が他人任せとはな」
今まで黙っていたリセスドさんが、金竜とわかっても平然と呆れた顔を向けて言い放った。
「ふん、今回のパーラメント一族は礼儀知らずね。 いいかしら? こんな狭い場所で私が元の姿に戻ったらあなた達全員生き埋めよ? それにまさかこんな太古の生物が蘇るなんて誰が想像できたかしら?」
まぁ、何はともあれ全員でのキャロの捜索になってよかった。
次話は明日更新します。




