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追跡。 キャロンの機転

 以前の時はリセスドさんの鞭で切り刻まれていたし、メーデイアさんがいて勝手な行動も取れなかったのもあって、じっくり死体を見る事ができる。



「どうだマイセン、何か気がつく事とかはあるか?」


 フレイさんがなぜか僕に聞いてくる。 僕に聞いたって魔物の事なんかわからないのになぁ。



「フレイさんは、虫とかで該当するような奴がいるか聞いてんだぞ?」


 シリクさんのその一言で理解した僕は、さっそく死んでいる魔物をよく観察するけど、さすがにこれだけじゃわからない。

 僕が首を振るとフレイさんが自身の魔剣を眺めて、魔剣なら酸に耐えるか何度か刺して試していた。



「見て! この尻尾……あれだけしならせながら攻撃に使っていたけれど、死ぬと固くなってまるですごく鋭利な槍のようだわ」


 僕も触れてみると確かに固くなって槍のようだ……



「ハッ!」


 チンっと鯉口を切って尻尾の根元から切断する。 流れ出る体液を心配したけど、死ぬとどうやら体液の強力な酸は中和されるみたいだ。


 切断した魔物の尻尾ですでに死んでいる魔物を刺してみると、とんでもない殺傷力があった。



「すっごく鋭利だ……」


 フレイさんも試してみて、やはりその鋭利さに驚く。



「せっかくだ。 残り2つももらっておこう。 これだけ鋭利なら、投擲して使えるかもしれん」


 フレイさんがそう言って投げる素振りを見せてくる。

 残る2体の尻尾も取り除いてフレイさんとシリクさんが1本づつ持って、残る1本を奴隷の女の子に手渡した。



「これを私にですか?」

「うん、君も前衛でしょ? だからそれ持って、必要なら投げつけてやって」

「はい、わかりました主様」


 あはは……どうも主様は慣れないなぁ。


 奴隷の女の子はアレスさんの槍を背負って、手渡された魔物の尻尾でできた槍を今は手に持っている。 なんだかアレスさんの槍を使うなって言っちゃったみたいで気が引けたけど、今更と思って言うのをやめておいた。




 だいぶ遅れは取ったけど強力な武器を手に入れた僕たちは、さらに先に続く今度は普通に広めの通路っぽい道を進んでいく。

 シリクさんが先頭を行くのだけど、別れ道があっても迷うことなく進んでいく。



「シリクは道がわかってんのか?」


 不意にフレイさんが尋ねると、シリクさんが立ち止まると地面を指差してくる。



「コインだ。 間違いなくキャロンちゃんのな。 あんな魔物に攫われたって言うのに、こんな機転が利くなんてスゲェ大物だぞ」


 この穴に入る前にも見つけたらしくて、他にもコインは枝分かれした通路の片方に落ちていたそうだ。



「どうやらキャロンは、お前が助けに来てくれるって疑わずに信じているようだな」

「約束、しましたからね」





 こんな感じで次の別れ道でも見つかったところで、アラスカさんが僕たちを1度呼び止めて思った事を口にしはじめる。



「随分と静かだ。 まさかあの3体と倒した1体に5千の兵が殺られるとはさすがに思えない」

「確かに……」

「大方どっかで集会でもしてんじゃないすか?」


 確かにいくら奇襲を受けたとしても全滅するまでは至らないはず。 そうなると冗談で言ったんだろうけど、シリクさんの言った事もあながち間違っていないのかもしれない。



「私もいくつか疑問があるわ」


 ガラシャさんがみんなに尋ねるように口にした事は、まず行方不明になった兵士たちの死体すら見当たらないこと。 仮に全員がキャロのように攫われたのだとしたら、あの魔物は兵士と同等かそれ以上の数がいておかしくないこと。 そしてなぜあの時キャロだけが殺されずに攫われたのかだった。



 しかしアラスカさんとガラシャさんの疑問に答えがわかる人なんかいるはずもない。



 クゥ……


 静まり返った中、僕のお腹が音を立ててしまい、危険な場所だというのにみんな笑いだす。



「相変わらず素直なお腹だなマイセンは」


 ダンジョンで出会った時のことをアラスカさんに言われて顔が赤くなる。



「まぁちょうどいいや。 今は安全そうだし今のうちにメシでも食っておこうぜ! なぁテト、ラ……」


 いつも一緒にいたため癖でシリクさんが口にして、思い出したように首から下げてあるテトラさんのドッグタグに触れている。



「マイセンの剣技は随分気力を使うようだ。 休めるうちに休んでおいたほうがいいだろうな」


 沈んだ空気の中、フレイさんが改めて言い直して休憩することになった。




 メーデイアさんから受け取った食事をそれぞれ離れながら食べ始める。

 シリクさんはガラシャさんと、フレイさんは立って辺りの様子を伺いながら、僕は奴隷の女の子と……と思ったけど主従関係を気にしてなのか、少し離れて食事を取り出した。

仕方なく1人で食べようとすると隣にアラスカさんが座ってきた。



「隣、座ってもよかったか?」

「あ、はい。 どうぞ」


 食べ始めると僕のことを見つめながらアラスカさんが食べてる。 さっきの事もあってなんだか恥ずかしい。



 食事が済むと交代で見張りをして休むことになる。 急いでいるのにと思ったけど、フレイさんが言うには地上なら夜の時間辺りだから休めるうちに休むように言われた。



次話更新は今日は1話のみで明日になると思います。

もしかしたら、昼か夜に更新できるかもしれません。


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