さりげない告白
新章に入ります。
キャロを捜し始めた僕たちは、シリクさんの追跡能力に驚かされる。
「シリクさんの追跡能力は凄いですね!」
「シリクのあれはただのストーカーよ。 小さい頃からかくれんぼをしても、すぐに見つけてくるのよ?」
「小さいころ?」
シリクさん、ガラシャさん、テトラさんは子供のころからの友達だったらしくて、大きくなってそのまま冒険者になったそう。 テトラさんの事を話しだすとガラシャさんが涙ぐみだした。
どうりで3人いつも仲良く一緒にいたんだ……
この大広間は本当に大きくて、その場所を見つけるまでに結構な時間がかかったと思う。
「入り口……だよな、これ」
シリクさんがそういった先には、例によってまた穴が開いている。
全員顔を見合わせて頷くと、アラスカさんが先頭に立って進んで行くことになった。
穴の先にあの魔物がいても対処できるように、アラスカさん、次に僕、奴隷の女の子、ガラシャさん、シリクさん、最後尾をフレイさんが後ろの警戒につく。
前かがみに進んで行くから、目の前には当然アラスカさんのお尻がある。 もちろんアシンメトリーのスカートで下着が見えたりはしていないけど、憧れの人のお尻が近くにあると思うとドキドキしちゃう。
そんな余計な事を考えているから、急に立ち止まったアラスカさんの柔らかいお尻に激突した。
「ご、ごめんなさい!」
「シッ! もうすぐ穴を抜ける。 その先に敵が3体……」
僕の後ろにいる奴隷の女の子に教えられたことを伝えて、後の人にも伝えるように言う。
「主様、ひとつお願いがあります」
「なに?」
「この槍の使用許可をください」
そこでやっと奴隷の女の子が他に武器がないことに気がついた。 それを聞くと、元々持っていた武器も槍だったため、アレスさんの槍を持つために放棄してきたみたいだった。
「別にかまわないけど、もし駄目だって言ったらどうしてたの?」
「その時は肉壁でもして主様をお守りします」
この子は自分の命をなんだと思ってるんだろう……
アラスカさんの合図で出来るだけ迅速に穴を抜ける。 そこにはあの先生を殺した真っ黒い姿をした魔物が、僕たちに気がついて襲いかかってくる。
「体液に気をつけろ!」
アラスカさんがみんなに注意を促して、その手に持つ7つ星の剣で1体と対峙しだして、僕も残る2体のうちの1体の気配を読んで、恐ろしい速度と尻尾による攻撃を躱しながら、刀の鯉口を切って抜く。
この武器の欠点といえば、この鞘から抜くときの音だろう。 音こそ響いて綺麗だけど、それが隠密性を損なってしまうから常に抜いておくか、接敵するまで収めておかなければならない。
魔物の気配を読みながら異様に長い尻尾の攻撃を躱しつつ、『気』を通した刃の一撃のチャンスをうかがっていると、奴隷の女の子が槍を大きく振り回してくれて隙を作ってくれる。
「ハッ!」
刀を一振りして魔物の気配を絶つ。 切れた場所から黄色い体液が飛び散り出して、慌てて奴隷の女の子を引っ張って距離をとった。
これで1体!
そう思う間もなく、アラスカさんも1体を仕留めて同じように距離を置いていた。
「主様ありがとうございます」
「君のフォローで助かったよ」
そういうと奴隷の女の子は不思議そうな顔をしてくる。 何かおかしなことを言ったんだろうか?
でもまだ1体残っている。 その考えは後にして、フレイさんとシリクさんが相手をしている方へ向かおうとしたところで、フレイさんが止めてくる。
「コイツで体を慣らすから手出しをするな!」
フレイさんもシリクさんもお互い倒すなら倒せる状況をわざとしないで、あの魔物の攻撃を見ているようだった。
「君は『気』を読むことで、騎士魔法の予測に近いことができるが、普通の戦士たちはああして相手をして学習していくんだ」
「そうなんですね……もし『気』が読めなくなったりしたら、僕なんかあっという間にやられちゃいますね」
「そんな事があったら君は私が守るから安心するといい」
すごく嬉しいけど、なんでそこまでしてくれるんだろう?
僕が不思議そうな顔を浮かべるとアラスカさんが肩に手を乗せてくる。
「キャロンが攫われている今、こういう事を言うのはズルいのはわかっているつもりだ。 だが伝えておきたい。 どうやら私は……君の事が気になって仕方がないようだ」
え!? そ、それってアラスカさんが僕の事を好きって事!?
顔を覗き込んだけど、アラスカさんは3人の戦いに気を配っているように見える。 でもその顔は少し赤みがかかっていた。
少しして最後の1体も倒す。
フレイさんのたってのお願いで、少しこの魔物を調べる事になる。 僕としてはすぐにでも早くキャロを救いに行きたかったけど、僕のわがままで仲間まで危険にさらすわけにはいかないし、なにより僕も少し興味があった。
次話更新は明日の朝6時頃かお昼頃になると思います。




