仲間たちの死
遅くなりました。
ガラシャさんの嫌な予感が的中する。 同時に5人が苦しみだした。 それはまるで今の話を聞いていたかのようにハサンさんの仲間の神官とディルムッドさんの仲間の神官も含まれていて、その中にアレスさんも含まれていた———————
「ガラシャさん! アレスさんを!」
「だ、ダメだ! ……俺より神官を1人でも優先してくれ……その方ぐあぁっぁ! 多く助かる!」
ガラシャさんは一瞬だけ迷ったあとアレスさんではなく、神官を優先することにしたみたいだ……
「マ、マイセン……頼みがある! 俺のドッグタグと……グオあぁぁっ! 槍を女房に……頼む! 頼んだぞぉぉぉぉぉ!」
叫んだ直後、アレスさんの胸部からあの蛇のような奴が顔を出した。 それはまるで嘲笑うかのように辺りを見回したあと、抜け出して逃げ出そうとする。
「よくも……よくもアレスさんをォォォォォォォォ!」
鯉口を切って『気』を放つ。
チンッと収めて動かなくなったのを確認した後、僕の意識は遠のいていった……
目が醒めるとアラスカさんの膝枕に横にされていた。
「目が覚めたか」
「あ、アラスカさん……」
まるで2人きりでダンジョンに居た時のように、アラスカさんを見つめてその感触を確かめるように頭を動かすと、憧れの人のまくれたスカートの奥の黒い下着が見えて、つい見てないフリをしながら何度も覗き見てしまう……
「目が覚めたのなら起きたほうがいい……みんないるんだぞ」
顔を近づけてきてエッチな奴めって小さな声で言われて、バレていたのと状況を思い出して飛び起きた。
辺りは胸部に穴が開いた死体がたくさんあってすさましい惨状になっていて、結局生き残ったのはハサンさんと仲間の神官1人にディルムッドさんの仲間も神官が1人、ギルガメシュさんのところは僕たちを呼びに来た奴隷以外は、他の仲間を優先されて全員死んでいた。
「16人向かって、助かったのがたったの7人か……」
メーデイアさんが愕然としながら生き残った人たちを見て回り、ギルガメシュさんは死んだ奴隷たち1人1人に何か声をかけていて、ハサンさんは死んだ仲間には興味すらないのか平然とただ立っている。 ディルムッドさんは生き延びた仲間のドラウと一緒に亡くなった2人を悲しんでいた。
「アレスさん……」
僕は胸部に穴の開いたアレスさんの前まできて、はじめて訓練場で出会ったことなんかを思い出す……
「マイセン……彼の最後の言葉を覚えているな?」
アラスカさんが隣に来て僕の肩に触れながら見つめてくる。
「……はい」
アレスさんの首にかかっているドッグタグを取って、槍を手に取ったところで我慢が出来なくなって、メーデイアさんに向かう。
「なんでですか! なんで! 妻子があって! 冒険者も引退したアレスさんを加えたんですか! 僕は……僕は奥さんになんて言ったら良いんですか!!」
メーデイアさんに思い切り詰め寄った。 許せなかった。 こんなことになってどう奥さんに説明したらいいのかわからない。
「許せ……俺様の奴隷を助けようとしてアレスはやられたのだ……」
思わぬ方向から声が聞こえて振り返ると、ギルガメシュさんと僕たちを呼びに来た奴隷がいて、奴隷の人が頭を下げて謝ってきた。
謝ってきたってアレスさんが生き返るわけじゃない。 僕がその奴隷に近づいたところでやっと気がついた。
その奴隷は、僕と変わらぬ歳の女の子だった—————
「奴隷の私なんかを救うためにあの方は、自分にも飛びかかってきたのを放って私を助けてくれたのです。 本当なら私が死ぬべきだったのです」
「コイツはお前とそう変わらぬ歳でな、もう間もなく娼婦宿に入れられるところだったところを俺様も情けで引き取ったのだがな……」
そこでその奴隷はギルガメシュさんに何かを話しかけて、何かの了承を得ているようだった。
「侘びというわけではないが、コイツがお前の奴隷となって生涯を捧げたいと言っている。 受けてやってはくれないか?」
突然のことにアレスさんの死に対する怒りも忘れて、何が何だかかわからなくなる。 少し間が空いてから僕の口からやっと出た声はもちろん……
「はい?」
だった。
「そうか! 受けて貰えるか! それでは早速譲渡してやるからな!」
ちょっと待って! 僕ははいとは言ったけど、それは了承のはいじゃなくて、え? って聞き返した方の意味の方なんですけどぉぉ……
次話更新は……今晩いければもう1話、無理そうなら明日になります。
補足
ゼノモーフらの酸はわざと特殊なものにしました。 この世界には当然酸のブレスを吐くブラックドラゴンもいるので、魔法で簡単解決したらつまらないと思ったからです。
ちなみにプレデターは出ませんので^_^;
出したい気持ちもありますが、今回の話では少なくとも登場しません。
ファンタジー設定ってどうとでも弄れるので書いていて楽しいですね。




