救うには……
次々と顔に張り付いていた蜘蛛のような魔物、フェイスハガーが剥がれ落ちて全てがひっくり返って死んでいる。 顔に張り付いていた方の内側が見れて、何ていうか非常に卑猥な形状をしている。
僕がアレスさんに声をかけると咳き込みながら目を覚ました。
「アレスさん、無事だったんですね!」
「お、俺は一体……そうだ! あいつはどうなった? 顔に張り付いたと思うんだが」
僕が転がっている死体を指差すと、アレスさんがそれを見て蹴っ飛ばした。
「クソ野郎!」
首元を摩りながら元気そうに苦笑いを浮かべてくる。
「ちょっと! 何ともないの?」
「ああ、特に何ともないみたいだ」
他にも顔に張り付かれた人たちが次々と立ち上がって首を傾げたりしている。
「何事もなくてよかったわ。 一体何だったのかしら? とりあえず一度戻るわよ! 待たせている方も心配だわ」
メーデイアさんがそう言って移動しようとした時だった。
ギルガメシュさんの奴隷が苦しみだす。 他にも数名が苦しみはじめて、胸の辺りを必死に抑えている。
そして……
悲鳴と共に胸部が裂けて、奇妙な生物が顔を出したかと思うと蛇のような奴が一気に逃げ出していく……
あまりに突然の事に誰も反応できなくて逃してしまい、胸部を貫かれた奴隷は息絶えていた。
「まさか……俺たち全員、あんな奴が胸の中にいるというのか?」
ディルムッドさんが小さく震えるような声で言って自身の胸を見つめて、他の人たちも驚愕した表情で胸を見ている。
「おい! メーデイア。 さっさと何かアイデアを考えろ! 俺様はこんなところで馬鹿げたくたばり方はゴメンだぞ!」
もちろんメーデイアさんも何か考えているようで、次にもし胸部の痛みを訴えた人に、とりあえずガラシャさんに治癒魔法を準備してもらうことになった。
「チェスト(胸部を)バスター(破壊するもの)と言ったところね……」
そのメーデイアさんは名前を考えていただけのようだった。
そして次に痛みを訴えだしたのは、ディルムッドさんだった……
「成功するかはわからないわ。 これはあくまで賭けよ」
「ぐっ、かまわん。 失敗したとしても貴公を恨みはしないさ……」
苦痛に苦しむドラウの顔はディルムッドさんだとわかっていても非常に恐ろしく……そして胸部から先ほどと同じ奴が姿を見せる。
「出るまで回復は待ちなさい! あと完全に離れてから仕止めるように!」
メーデイアさんももう何度もミスは出来ないようで、次々と的確に指示を出してくる。
完全に胸部から離れた瞬間に、あらかじめ祈りを捧げて準備をしてあったガラシャさんが、ディルムッドさんに飛びつくように治癒魔法を発動させた。
僕たちはそれをのんびり眺めてはいられず、胸部から飛び出した蛇のような奴を仕留めようとアラスカさんとハサンさん、それと今は何ともない人たちで退治しようとするけど、小さい上にやたらと素早く逃げられそうになってしまう。
気配が読み取れるのなら、『気』を放ってみればいいんじゃないか?
そんな考えが僕の脳裏をよぎって、目を閉じて気配だけで相手を探る……そして刀の鯉口をチンっと切って『気』を放って直ぐに鞘に刃を収めた。
チンッ!
刀の収まる音と同時にその蛇のような奴の気配が消えて目を開けると、5メートル以上は離れた場所で動かなくなっていた。
「い、今のは一体!?」
「あれが『気』というものか? 聞いていたものと随分違うな」
「ホゥ……」
それぞれから声が上がっていたけど、僕はディルムッドさんを治療しているガラシャさんの様子を見に向かった。
「ガラシャさんどうですか?」
「ああマイセンさん、命は何とか助かったわ。 でも治癒魔法だけでは傷を塞ぐだけで危険な状態は続くから、安定化も必要になるわ。 安定させてからもう一度治癒魔法をして何とかってとこかしら」
ガラシャさんが1人に最低3回治癒魔法が必要だって言ってくる。 なので同時に数名が同じ状況になった場合、最低1分持たなければ助けられないって言ってきた。
ギルガメシュさんの最初に犠牲になった奴隷こそ、貴重な神官だったため、残る神官はディルムッドさんの仲間が1人とハサンさんの仲間が1人の2人とガラシャさんしか居ない。 だけどその2人もいつ奴らがその胸を突き破ってくるかわからない以上、頼みの綱はガラシャさんただ1人だった。
そしてガラシャさんのその不安はそのあと的中することになる……
次話更新は明日の時間指定無しになります。
補足
一応元ネタはもちろんエイリアンですが、都合上多少変えているところはあります。




