魔物の姿
ゼノモーフの登場です。
近くまで来ると気配で位置がわかるようになる。 それと同時に争っている音も聞こえてきた。
先生たちの姿が見えるところまで来て僕は立ち止まって目を見開いてしまう。
追いついた仲間たちもその様子に驚きを隠せないようだった。 ただアラスカさんとリセスドさんだけは立ち止まる事なく走り抜けていった。
「早く助けに行きなさい!」
メーデイアさんの怒号で我に返ったみんなが一斉に助けに向かいだす。
2人以外が立ち止まって目にしたものとはなんだったのか。 それはたったの1体の魔物を相手に数人のドワーフがすでに横たわっている姿があって、先生は自身の胸を魔物の尻尾に刺し貫かれて血反吐を吹き出しながら振り回されていたからだった。
ヘラクレスさんが巨大な蛮刀を振り回して戦っているけど、身体中火傷だらけになっていて、ところどころ骨が見えているところまであった。
「来るな! コイツ、血が酸だ!」
アラスカさんとリセスドさんがそれを聞いて足を止めた。
そうはいっても何とかしないと、このままでは先生たちの命が……
「雑魚どもは下がってろ。 ここは俺様が相手をしてやる」
ギルガメシュさんの声が聞こえて振り返ると同時に僕の横を矢が通り抜けていく。
魔物に矢が命中するとボワッとする燃え広がった。 その後も間髪を入れずに矢が放たれていき、魔物はその炎によって焼け死んだのか倒れて動かなくなった。
「チッ、なかなかしぶといヤツよ。 お前ら早く見に行ってやれ!」
ギルガメシュさんがそう言うとギルガメシュさんの仲間……奴隷が先生たちのところに向かっていく。 僕たちも急いで向かった。
ギルガメシュさんの奴隷の1人とガラシャさんが神聖魔法で傷を癒していく。 奴隷なのに神聖魔法を使えた事に少し驚いたけど、今はそんな事を気にしている場合じゃない。 僕も全員の無事を祈った。
だけどその祈りもむなしく、魔物の尻尾に胸を突き刺されて振り回されていた先生は、魔物が倒れる前にすでに息耐えていたようだった……
ドク(先生)の死を嘆く6人のドワーフたちをよそに、メーデイアさんはギルガメシュさんが倒した魔物を見に向かおうとする。
「メーデイアさん!」
先生の死に気を取られていた僕は、メーデイアさんが魔物に近づいた事でまだ気配が消え切っていない事に気がついた。 つまりはまだ死んでいない!
叫んで突き飛ばして、変わりにその場所に僕が入り込む——————
直後ドスッと物凄い衝撃が襲い、僕の身体は大きく宙を舞う……
衝撃の苦痛に耐えながら落下の衝撃に備えていると、誰かに受け止められた。
「大丈夫か?」
僕を受け止めたのはアラスカさんで、ちょうど抱きしめられている形になっている。
「す、すごく痛いです……」
そういうとすぐに僕が攻撃を受けた箇所を確認してくる。 アラスカさんの手が僕の鎧の隙間に差し込まれて直に撫でていく。 ある箇所に触れると激痛が走った。
「イタッ!」
「外傷はないが、骨が数本やられているようだ」
すぐにガラシャさんが来てくれて神聖魔法で治療すると痛みが治まる。 痛みが治まったところで魔物がどうなったか見ると、リセスドさんの鞭ですでに切り刻まれて今度こそ気配が無くなっていた。
「大丈夫!?」
キャロが声をかけてきて答えようとしたら、メーデイアさんに抱きしめられた。
「私の不注意で申し訳なかったわ! 大丈夫だった? もう痛いところはないかしら?」
「も、もう大丈夫です」
メーデイアさんに抱きしめられながら答える。 そして僕を見つめるキャロの目が怖い……
メーデイアさんから離れて、今度こそ死んだ魔物の様子を僕も見に行く。 隣にはキャロがいて腕を絡めてきて小声で僕に訴えてくる。
「私の気持ちは伝えたんだから、これ以上ヤキモチを妬かせないで欲しいな……」
「ゴメん……」
「だからしばらくこの手離さないから!」
「はは……」
死んだ魔物の姿を見ると、全身は黒く頭部は細長くて目や鼻、耳などは無いけどその上部は半透明のフードに覆われている。 そして口からはヤゴのようなインナーマウスがあった。 そして身体は一見硬そうに見えたけど、ゴム質のようで柔らかそうに見える。
そして何よりみ特徴的なのは尾で、まるで槍の穂先のように先端は鋭くて、体の長さほどの長さがある。
全て見た目だけで判断している理由は、今もシュウシュウと音を立ててかなり強い酸が煙を上げているためだった。
この魔物と戦いで使った武器は、ことごとくこの酸で溶かされたようで、ドワーフたちの刃先が溶けた武器が床に捨てられていた。
今日は後ほど更にもう1話更新します。




