ダークゾーンの先へ
休憩が終わっていよいよダークゾーンに突入する。 メーデイアさんの話では、真っ直ぐ行くとすぐに結構な急な下りになっていて、そこを抜けるとダークゾーンが終わって、かなりの広間になっているんだそう。
まず先生とヘラクレスさんたちの隊がダークゾーンに入り込んで姿がまるで消えたようになくなる。
「間を空けないように前進するわよ! 後続もしっかりとついてきなさい」
メーデイアさんの指示で僕たちもダークゾーンに入り込む。 中に入るとまったく見えず、手を前に出して手探りするように進んでいく。
10歩ほどぐらい進んだところで言われた通り結構な急勾配になっていて一瞬焦る。 ゆっくり慎重に進んでいくと突然視界が開けた。
そこはやっぱり光苔で照らされているけど、とんでもなく広い空間になっている。 だけど僕にはここが妙な違和感を感じた。 それがなんなのかわからない。
後続もダークゾーンから出ると同じように空間を見渡していた。
「こりゃあ天然じゃねぇな」
アレスさんが僕の違和感を言い当てる。 そうだ、僕が感じた違和感はこの場所が誰かに作られたような空間になっていたことだ。
でもだからと言ってこれは人種によって作られたようなものではなくて、巣を作る生き物が作ったような感じだ。
「まさかここは地下世界というわけではあるまいな?」
「地下世界ではない。 地下世界に光源になるようなものはないし、あそこの作りはもっと超自然的さ」
ギルガメシュさんが一瞬誰もがそう思った問いかけに、地下世界出身であるディルムッドさんが否定してきた。
「今更思い出したんですけど、兵士たちがここに向かってからは麓にムカデとか現れなくなったそうですよね? それであとここの作りを見ていると、なんだかアリの巣のように見えるんです」
何も考えずに思ったことを口にしただけだった。 だというのに僕の言葉に異常に周りがざわつきはじめる。
「ここはジャイアントアントの巣といったとこですかな? なるほど、長期に渡って餌が取れないと知り、餌場を用意したといったところですな」
「もっと簡潔にわかりやすく説明なさい!」
「ホッホ、要するにこの広い空間は、ここの住人が用意したエサ箱というわけですな」
先生の導き出した答えにみんな黙り込む。
「ジャイアントアント程度であれば、例え巣といえど兵士たちが負けるはずなどないわよ」
メーデイアさんがまるで兵士たちを馬鹿にするな! とでも言いたげに先生を睨んでくる。
「餌のムカデやらのデカさから考慮して、通常よりも遥かに大きいとは連邦捜査局(FBI)は考えられないのか?」
それを小馬鹿にするようにギルガメシュさんが口元を歪めながら答えてくる。
でも大きくたってアリはアリだ。 ムカデもそうだったように、アリであれば熱に弱いから大きくたって同じ要領で倒せるはず。 それに僕たちが見つけた羊皮紙には、生きとし生きる者全てに厄災となる危険な生命体ってあったはず。 もしもアリであれば生命体なんて書き方はしないはずだと思う。
「マイセン、何か気がついた事でもあるのか?」
フレイさんが考え込みながらウンウン唸っていた僕に気がついて聞いてくる。
「フレイさん、それとキャロもシリクさんたちも覚えてませんか?」
そう言って僕が考えていた事を口にすると頷き始める。
「確かに私に渡された書類にも危険な生命体と表記してあったわ。 偉いわね、よく気がついた」
そう言ってメーデイアさんが僕の頭を撫でてくる……
なんかクレープの時から接し方が変わって、急に優しくなったように思う。 そしてキャロとアラスカさんをチラッと見ると、2人の目がなんか怖い。
「それでは各隊でこの一帯の調査と捜索をしてもらうわ。 もし何か発見した場合は直ちに報告しに来なさい。 魔物と遭遇した場合は迎撃程度に抑えて、速やかに報告しに来ること。 仮にも5000人の兵士たちが消息を絶ったのだから、自信過剰な行動は控えなさい! 以上、別れ!」
メーデイアさんが各隊にとりあえずこの一帯の調査と捜索を指示を出す。
命令されて行動する事に慣れていないせいか、みんなの返事はバラバラだったけど行動は迅速に見えた。
「おうマイセン、十分に気をつけろよ。 さっき俺が言った天然じゃないって言うのは、裏を返せばそれだけの知性があるって事だからな」
「はい! アレスさんも気をつけて。 あと、リセスドさんも」
「俺は強い相手がいればいるほど燃えてくる。 だから安心してくれ」
なんだかわからないけど凄く嫌な予感がする。 それが気のせいなだけならいいけど。
次話更新はお昼頃を予定していますが、無理そうだったら夕方までには更新します。
いよいよダークゾーンの先に行きました。




