3女神のお守り
「クラン結成」最終話です。
食事が済んでみんなと別れた後、下宿先に戻るとヴェルさんたちが待っていた。
「マイセン君……」
ヴェルさんはどう声をかけていいか言葉に詰まっているようで、そこで黙り込んでしまう。
「少年、約束しろ。 必ず生きて帰ってこい! どんなに無様でもいい、何が何でももがいてあがいて生きてあたしたちのところに帰ってこい!」
ウルドさんが僕の事を抱きしめてくる。
「マイセン君、コレ持っていってください」
小さな包みが手渡される。
「何ですかコレ?」
「私の陰毛が入ってます。 本当なら奥さんとか恋人のものが良いそうなんですけどね。 性に聖なる力とか、女性には無いから弾除けの力があるとか言われているみたいですよ」
という事はこの包みの中にはスクルドさんの……あそこの毛が……
思わず視線がいく。
「ちょっとマイセン君の顔がエッチです」
「少年、私のも持っていけ! 今切ってくるからな!」
「わ、私のも……」
ウルドさんとヴェルさんまでもがスクルドさんの話を聞いて真似ようとする。
「あ! ウルド先輩、一応処女の方が効果があるそうですよ?」
「……安心しな! あたしもまだ処女(未使用)だよ!」
なんだかとんでもなくすごい会話を聞いている気がする……
そうして待つこと少しするとヴェルさんとウルドさんからも包みを渡された。 気持ちほんのり温かい気もする……
「マイセン君、必ず、生きて帰ってきてね」
「ちゃんと後で回収するからな! 無くすなよ!」
3女神とまで言われてる、3人のあそこの毛をもらってすぐに眠りについた。 って、眠りにつけるか!
朝日で目が覚めて装備を確認する。 ちゃんとお守りも昨晩のうちに服に縫いつけてある。
「おはようございます」
冒険者ギルドに挨拶しに行くと、ヴェルさんたちの目がうっすら赤い。
「ちゃんとお守りは持ってくれた?」
「はい!」
「ちゃんと縫いつけたか?」
「はい!」
「見たらダメですよ? あ、でもどうしても我慢できなくなったら、仕方がないので見る以外に好きに使ってもらってもいいです」
「はい! ええっ!?」
挨拶も済ませて冒険者ギルドから出る。 外にはキャロが待っていた。
「行こうか」
「うん、えっと……手、繋いでもいい?」
手を差し出すとキャロは嬉しそうに掴んできて、一緒に麓に向かった。
麓に着くと一緒に向かう冒険者が揃っている。
フレイさんにシリクさんたち。
リセスドさん、それと先生と6人のドワーフたちもいた。
ヘラクレスさんはどうやら仲間は来てくれなかったみたいで、1人きりで立っている。
ギルガメシュさんは5人の仲間……奴隷を連れてる。 意外に思ったのは、奴隷というからひどい装備かと思いきや、全員ものすごいしっかりとした武装をしていた。
ハサンさんはどれがハサンさんかわからないような、同じローブに身を包んだ4人で揃っていて、ディルムッドさんは、仲間のドラウ3人と一緒に武装なんかの確認をしている。
しばらくしてアレスさんも来て、その装備に驚かされる。
普段と違い、誰がどう見てもわかる魔法効果のある鎧に巨大な槍を手にしている……って、あれ?
「アレスさん、武器が……」
「ん、ああ、コイツな。 本当は剣の方が扱い慣れてんだが、この槍はかなり強力な魔法の武器だから使ってんだ。 一応剣も魔法の武器だが、フレイのに比べたら劣る代物だ」
「何を言うかと思えば……俺のは巨人相手じゃなければ、ただの剣みたいなもんだ」
そんな風に和んでいると、メーデイアさんが姿を見せた。
昨日とは打って変わり、ローブを着込んでいる。 そしてその後をアラスカさんがついてきていた。
「やぁマイセン。 また一緒に行動ができて嬉しいよ」
「あ、はい! 僕もアラスカさんと一緒できて嬉しいです」
アラスカさんがニッコリ笑顔を向けてくる。 ダンジョンで親しくなってから、初めて会った頃よりもよく笑顔なんかを見せてくれるようになった。
「揃っているようね。 ひぃふぅみぃ……30。 私とアラスカ殿を加えて32名かしら?」
メーデイアさんがぶつぶつと何か言いながら考え出して、8人ねとか言い出してくる。
「それじゃあ今から言う通りに別れてもらうわよ」
先生と6人のドワーフのところにヘラクレスさんが加えられて8人チームになり、ディルムッドさんのところにハサンさんの4人が加わって8人になる。 ギルガメシュさんのところにアレスさんとリセスドさんが加わる。 そして最後に僕のところにはメーデイアさんとアラスカさんが加わった。
「これで各隊8人になったわね? 隊列は好きに組んでもらって構わないけど、ドクとヘラクレスの隊に先をいってもらわ。 ついで私の隊が続いて、ギルガメシュとアレス、最後尾にディルムッドとハサンの隊の順についてくるように。 指示は私が出すから勝手な行動は慎むように。 わかりましたね!」
みんなやれやれというか、好きにしてくれと言わんばかりの返事が返ってくる。
そしてついに竜角山に僕たちは入り込んでいった。
次話更新はお昼頃に更新できると思います。
また次の章「生命体の正体」からは、章区切りはありますが、ダンジョンパートが続きます。
あらすじとキーワードも更新しますが、その際に敵登場前にネタバレしますがご了承ください。




