アラスカとキャロン
数日ぶりに朝日の眩しさで眼が覚めて、大きく伸びをしてから準備を済ませて冒険者ギルドに向かうと、いつものように混雑していなくて閑散としていた。
「おはようございますヴェルさん。今日は随分空いてますね」
「ああ、マイセン君。 数日前からこんな感じよ。 あ、はいこれ朝食代。それとおはよう」
朝から暇なようで、ヴェルさんもなんだか気が抜けてる感じがした。
朝食代を貰って〔ヒヨコ亭〕に向かうと、ソティスさんがお店の前で掃除をしている。
「おはようございますソティスさん」
「あ、マイセンおはよう」
「お店の方はいいんですか?」
「うーん、いいも何もお客さんゼロだもん。 冒険者がいなくなっちゃうといろいろと、うちも困っちゃうのよね」
「えーっと、僕はお客なんだけどなぁ」
そんなわけで僕は1人ボッチで広々とした酒場で食事を取る。 暇をしているソティスさんが僕の食事姿を眺めながら延々と愚痴をこぼしていた……
食事も済ませてとりあえず冒険者ギルドに戻ってみるも閑散としたままで、ヴェルさんたちは掃除をしていた。
「あ、マイセン君、オーデンさんが呼んでいるわ。 そこの奥の扉から入って……えっと、7つ星の騎士団のアラスカ様も見えているわ」
という事はダンジョンにいた時の報告かな?
ヴェルさんに頭を下げてから僕は冒険者ギルドの奥の扉に入っていく。
通路を進んでいけばギルドマスターのオーデンさんの部屋だ。 扉の前でノックすると中から入りたまえって声がして入った。
「よく来たマイセン。 今ちょうどアラスカ様から話を聞いていたところだ」
えっと、ダンジョンの話の事だよね?
「アラスカさんに助けられなかったら今頃はたぶん死んでました」
「おはようマイセン。 昨日はゆっくり休めたか?」
以前と違ってどことなく笑顔で僕の事を見つめてくる。
「おはようございますアラスカさん。 おかげさまで朝日の日差しで眼が覚められました」
「それは良かった」
可愛らしい笑みを浮かべてくる。
それでやっぱりダンジョンの中での話だったんだけど、重要視されたのは僕の刀と刀を使った剣技の事だった。
「少しばかりマイセンの武器を見せてもらえないかな?」
腰から鞘ごと外して手渡すと、オーデンさんが刀を鞘から抜き放って見つめている。
「ふむ、美しい片刃の剣だが……ちなみにこの剣はどこで手に入れたものかな?」
はうっ! どうしよう。 やっぱり本当の事を言ったほうがいいのかな?
実は……と、【鍛冶の神のトニー】様に作ってもらった事を話した。
「なんと! 【鍛冶の神のトニー】様だと? 証拠はあるのか?」
「証拠と言われると困りますが、この鎧も一緒に貰ったもので、重量がとても軽いから魔法の鎧じゃないかって……そうだ! キャロもその時一緒にいたから、キャロに聞けばいいと思います!」
そういうとオーデンさんが首を振って、僕の言った事を信じるって言ってくれて、刀を返してくる。
「君は素直で正直者だ。 君の言葉を信じよう。 それに、そんな武器は今まで見たことがないからな」
「それより1つきになったのだが……」
アラスカさんがオーデンさんが刀を抜いた時と僕が抜いた時とで音が違った事を指摘してくる。
興味を示したオーデンさんが、試しに僕に刀を抜いてみるように言ってきた。
チン!
人によって異なるかもしれないけど、綺麗な音色が部屋に鳴り響く。 先ほどオーデンさんが抜いた時はカチャっと普通の剣を抜いたような音だったかもしれない。
「それだ。 とても心地良い音だ」
目を閉じてまるで聞き惚れているような顔を見せてくる。
「ふむ、確かに違うな。 どうやらその武器はマイセンの為だけのものかも知れん。 となればやはり【鍛冶の神のトニー】様が作ってくれたものであろうな」
そしてそこから話が変わって本題に移ったようで、僕がこの刀で使った剣技を見てみたいと言ってくる。
なので、この後オーデンさんアラスカさんと一緒に訓練場に向かうことになった。
「あ、マイセ……」
扉を開けて出てくるとキャロがいて、僕の姿を見て声をかけてきたけど、すぐ後から出てきたアラスカさんの姿を見て口籠った。
「おはようキャロ。 今からオーデンさんと訓練場に行かなきゃいけないんだ」
「そ、そうなんだ。 えっと、私も一緒に行ってもいいかな?」
「どうだろう?」
オーデンさんを見ると別に構わないって言われてキャロも一緒に来ることになった。
冒険者ギルドを出て訓練場に向かう時に、いつも以上にキャロが話しかけてくる。
「それでね……」
「今日はキャロ、随分おしゃべりだね」
「え、そうかな? イヤだった?」
「うううん、ただいつもと違うなって思っただけだよ」
オーデンさんはアラスカさんと話をしながら歩いていたけど、時折アラスカさんが僕たちの事を見ている気がした。
本日は1話のみです。
次話更新は明日で、時間指定無しでお願いします。




