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羨ましい奴

 みんなが戻っていく中キャロだけが残っている。



「キャロどうしたの?」

「どうしたって……そうだよね、マイセンってそういうのがわからないんだもんね」

「うん? え!?」


 キャロが飛びついてくるのが『(オーラ)』でわかる。 でも僕の事を好きだって言ってくれたし、キャロに抱きしめられるのはなんだか嬉しいから避けずに受け止めた。



「今わざと避けなかったよね?」

「うん、キャロに抱きしめられるのは、その……イヤじゃないからさ」

「少し進歩したかな?」

「何が?」

「なんでもない。 こっちのはなし」




 強く締めつけてきて正直なところくるしい。 キャロは秘密が多いなぁ。 そうだ!



「あのねキャロ、ダンジョンでアラスカさんに助けてもらって……」

「待ってマイセン! 今、アラスカさんって言った?」

「うん、様はやめて欲しいって言われたんだ。 呼び捨てでも良いって言われたよ、あはは……」


 あれ……キャロがなんか訝しげな表情をしてる。 何か悪いこと言ったかな。



「それ、まさかマイセンは間に受けたの?」

「まさかぁ、 あ、でも刀の技を見た後から妙にアラスカさんの行動がおかしくなったような……」

「……ねぇ、ダンジョンで2人きりになったときに、私がフレイさんの事は憧れの人だって言ったの覚えてる?」


 なんだろう、急に話を変えてきた。

 頷いて答えるとキャロも頷いてくる。



「じゃあ言うね。 私ね、今すっごくヤキモチ妬いてるんだから! ばかっ!」


 キャロはそう言うと身体を離して走って行ってしまった。






 下宿先に戻るとヴェルさんたちが僕の帰りを待っていて、ここでもまた3人から無事に帰ってきたことを喜ばれる。



「マイセン君の話を聞いたときは正直もうダメなんじゃないかって思っちゃってたわ」

「僕も途中で諦めかけました。 その時ヴェルさんたちの悲しむ顔が浮かびましたよ」

「おぅおぅ、嬉しいこと言ってくれるじゃんよ、少年。 お姉さんたちに恋しちゃったか?」

「マイセン君なら私、大歓迎ですよぉ?」

「あはは、ありがとうございます。 でも……」




 そこで言葉を切ったらヴェルさんが僕の秘密を口にしだした。



「身受けをする時に聞いているわ。 マイセン君は、恋愛感情がわからないんだそうね」

「そうなんですか?」

「なるほど……」


 スクルドさんは初耳に驚いたようで、ウルドさんはどことなく気がついていたみたいだった。



「好きっていう感情がわからない、か。 以前あたしに聞いてきた悩みの理由も納得いく」

「そういえばあの時どうして……」


 ウルドさんがあの時含んだような言い方をしたのかを聞くと、冒険者はいつ死ぬかわからないから、あまり冒険者同士で恋仲になる事はお勧めしないらしい。




「じゃあ僕はキャロの事が好きだってことなんですか?」

「マイセン君、好きっていうのはですね……えーと、あれ? ヴェル先輩お願いします!」

「え! 私!? 私だって恋愛経験、その……無いんだけど……」

「一概には言えないが、大切だということ。 離れたくなくてずっと一緒にいたいと思える相手の事だ」

「わぁ! さすがウルド先輩、大人ですぅ」


 大切な人、一緒にいたい人……

 わからない。 僕にはシスターテレサも一緒に育った兄弟たち、ヴェルさんたちやソティスさん、キャロに仲間たち。 みんな大事で大切な人たちだ。




「まぁ色恋沙汰っていうのは難しいもんだよ。 わからないならそれはそれでいいんじゃないかね? 別に慌てる必要はないさ」

「ウルド先輩がすごい大人な女の人みたいです!」


 そんな中、ヴェルさんはなんだかしょんぼりしてるように見えた。



「それじゃあマイセン君の生還をお祝いして背中を流してあげますね。 だから私たちと一緒に温泉に入りましょう!」

「なんでそうなるんですか!?」




 そんなわけで僕はヴェルさんたちと一緒に温泉に入る事になって、僕は一足先に入らされる。

 ちなみにこの霊峰の町は霊峰竜角山の地熱で温泉が源泉かけ流し状態で、どこの家でもお風呂といえば温泉になっている。 なのでここギルド職員の社員寮も当然温泉がある。 通常ギルド職員は女性のため、特に男女分けされてない。 そのため僕が来てからは一応入浴中の札をかけるようにはなっていた。



「3人一緒に入るのは久しぶりじゃないかしら?」

「そうですね〜、普段は微妙にお仕事上がる時間が違いましたもんね」


 脱衣所からそんな声が聞こえてきて入ってきたのはいいんだけど……



「なんで3人とも湯着も着てないんですか!」

「そっか、マイセン君と一緒だったっけ。 まぁ、マイセン君なら見られてもいいかなぁ?」

「あんなもの着て入浴はしたくないさ」

「私はマイセン君に全部見てもらいたいなぁなんて思っちゃってたりしてます」


 さすがに男女分けがないとは言っても、どこでも湯着を着るものなんですが……

 結局そのまま3人と温泉に入って、約束通り背中も流してくれたりしたんだけど、僕は目のやり場に困ったままで、まったくのんびりできなかった……




次話更新は明日行いますが時間は未定で、土日は1話だけになります。


あと現在書き進んでいる次の章のダンジョンパートの進行が少々手間取っています。

進行状況によっては、当初通り1日1話更新で調整するかもしれません。

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