無事に戻って
新章の町パートに入りました。
麓に戻った僕たちを待っていたのは、ホープ合衆国の兵士たちの姿だった。 冒険者の姿はなく、勢揃いした兵士たちがキャンプを張って麓の入り口を封鎖している。
僕たちの姿を見て1人の兵士が声をかけてきた。
「君たちは……失礼しました7つ星の騎士アラスカ様!」
「いや、別にいい。 それよりこれはどういう事だ?」
「はい! ダンジョンで発見された情報から……」
ダークゾーンの先の事で国はダンジョンの一時封鎖をしたみたいだった。 まだ戻っていない冒険者を待ちながら、時折姿を見せる巨大なムカデが麓から抜け出さないように見張っているという事みたい。
アラスカさんが冒険者ギルドへ戻って、僕の生存を報告した方が良いだろうって言って一緒に向かった。
冒険者ギルドに辿り着いて僕の姿を見たヴェルさんが泣きながら抱きしめてくる。
「マイセン君! 無事だったのね。 フレイさんたちから聞かされた時はもうダメなんじゃないかと思ってたわ」
ウルドさんとスクルドさんも業務をそっちのけですぐに駆け寄ってきた。
「少年、よく生きて帰ってきた! 死んだんじゃないかってずっと心配したんだぞ!」
「マイセン君、無事でよかったです。 仲間の方達も酷く心配していましたよぉ〜」
3女神と呼ばれているギルド職員に囲まれて生還を喜ばれながら、ふとアラスカさんを見ると少しむくれたような顔をしているように見えた。
「そうよ! 早く仲間に無事を知らせてあげてね。 たぶん〔ヒヨコ亭〕で腐ってるはずよ」
ヴェルさんに言われて向かおうと思ったところで、僕は思い出して背負袋を下ろしてひっくり返す。
バラバラと大量のドッグタグが出てきて、ヴェルさんたちが驚きの声をあげていた。
「これ、全部じゃないですけど、集められたやつは拾ってきました」
「こんなにたくさん……」
驚くヴェルさんたちに後を任せて、僕が冒険者ギルドを出ようとすると、アラスカさんも一緒についてくる。 アレっと思って顔を見るとアラスカさんが慌てるそぶりを見せてきた。
「あ、ああ、私は報告に向かうとこだ。 途中まで道は同じだろう」
並んで冒険者ギルドを出て行きながら、僕は〔ヒヨコ亭〕に向かい、お店の前まで来るとアラスカさんに別れを告げる。
「お礼がすっかり遅くなりましたが、本当に助かりました。 アラスカさんがいなかったら今頃ダンジョンで死んでました。 ありがとうございます」
「あ、ああ、気にしないでもらって構わない……のだが……」
「どうかしましたか?」
アラスカさんが僕に何かを言いたいような顔をしている。
「いや、なんでもない。 また後でな」
「はい!」
それだけ言うとアラスカさんが立ち去っていく。 あれ? 今確かまた後でって言ったような? そっか、報告が終わったらギルドマスターのオーデンさんにも報告しないといけないからか。
また後でアラスカさんと会えるんだ。 なんだかずいぶん親しくなれた感じがして嬉しいな。
そんなふうに思いながら〔ヒヨコ亭〕の中に入った。
「マイセン!? 生きてる! 本物?」
「えっと、なんとか帰ってこれました。 心配かけて済みません」
ソティスさんがうわぁぁぁって泣きながら駆け寄ってきて飛びついてくる……のを『気』で分かって手でそっと肩を抑えて止めた。
「あの、他のお客さんの目もありますから……」
「あ、そっか、ごめんごめん。 それより早く仲間の人たちにも会ってあげて。 毎日個室から遠吠えやら呻き声が上がってて……」
僕の生存がわかったソティスさんは目を赤くさせながらテヘって笑ってくる。
ソティスさんの肩から手をどけて、個室のほうに僕は向かった。
次話更新は明日の朝6時頃の予定です。
なんだかんだで、毎日1話どころか2話づつ更新している気がします……
この章はもう書き終えてダンジョンパートに入っていますが、もしかしたらここからは1日1話のペースになるかもしれません。
1話ごとが短めに書いているので、出来る限りは頑張っていくつもりです。
応援のほどよろしくお願いします!




