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憧れの人と

「覚醒」ダンジョンパートの最終話です。

 アラスカさんはエルフ特有の非常に整った顔立ちで、普段はすごく綺麗なんだけど、笑ったりするととっても可愛らしい顔になる。

 ここにたどり着くまで幾度も戦闘を重ねているにも関わらず、7つ星の騎士団の外套やアシンメトリーのスカートには破れているところや傷すらない。 その隙間から覗かせる綺麗な足にもつい目を奪われてしまう。



「……君の、その視線が先ほどから痛いのだが」


 気がつかれてた! チラ見だったのに!


 そんな僕をアラスカさんは苦笑いを浮かべている。



「あ、ゴメンなさい。 その、アラスカさんが綺麗なんでつい……」

「……あまりそういう甘言を囁きすぎると……私だって女だ。本気にしてしまうぞ?」


 うわ、何今の。 凄くぞくっときた……でも今のはもちろん冗談だよね?


 とりあえず笑ってごまかそうとした時、魔物の気配を感じて刀に手を伸ばす。



「『(オーラ)』を読むというのは本当の事らしいな」


 アラスカさんも隣で剣を抜き放ちながら答えた。

 そして姿を見せたのは人間の身体に雄牛の頭を持つミノタウロスで、蹄を踏み鳴らしながらこちらへ突進してきた。



「あの突進は直線的なものだ。 間近に来てから躱せばどうという事はない」


 アラスカさんがそう言ったけど、僕には試したい事があった。 一応頷いておいて、刀の鯉口を切って構える。




「今だ! 横に飛べ!」


 ミノタウロスがもう方向を変えられない距離まで来ると、アラスカさんが指示を出して横に跳ねる。

 だけど僕はその場に留まって、『(オーラ)』を一点に集中して、そしてそれを振り下ろした。





 直後、僕の身体が浮いてしまうほどの圧力を感じて目の前で爆発した。

 それは決して火球(ファイヤーボール)のような爆発とは違って、ただ刀を振った前方にすざましい衝撃が圧力となって爆発したようだった。



「うわっ!」


 僕自身でも何が起こったのかわからない。 浮いた身体が着地すると、突進してきていたミノタウロスはベシャッと地面に叩き潰されていて、その様子を目の当たりにしたアラスカさんは目を見開いて驚いている。




 ミノタウロスは突進からいきなり押しつぶされたように倒れたけど、起き上がろうとしていて、そこを僕は『(オーラ)』を通した一閃を上段から振り下ろす——————



 ズバァ——————————!!


 そんな音が聞こえて、起き上がろうとしているミノタウロスの頭部が2つに縦に割れた。


 断末魔も上げられず、ミノタウロスが起こそうとした身体は起こしきる事はなく、そのまま地面に崩れる。




 よし! できた、できたぞ!


 僕自身が思っていた通り、『(オーラ)』はある程度なら操れる。 この調子で『(オーラ)』を使いこなしていけば、きっと今よりも威力も上がっていくはずだ!



「今のは、一体なんだ……それにその武器は」


 アラスカさんが目を見開いたまま、ゆっくり僕の方を向いて聞いてくる。


 チンっと音色を奏でながら刀を鞘に収めて今のを説明する。 アラスカさんはただ黙って頷きながら聞いていた。



「なるほど、つまり今のは『(オーラ)』を凝縮させて放った剣圧というわけか。 恐ろしいほどの圧力だった。そしてそのあとのが『(オーラ)』で斬るというやつか」


 分析をしながらアラスカさんがぶつぶつと独り言を言いはじめている。



「アラスカさん?」


 立ち止まったままになっていたアラスカさんに声を掛けると、我に返って僕の事を見て微笑んでくる。



「本気で君に惚れてしまいそうだ」


 可愛らしい笑顔でそんな事を言ってくる。 もちろん嬉しくないわけがない。 何しろ憧れていた人にそんな事を言われたんだから。



「あはは、アラスカさんそんな事を言うと僕も本気にしちゃいますから……」


 惚れられて嬉しくないわけがない。 もっともアラスカさんが惚れたっていうのは、今見せた『(オーラ)』の事なんだろうけど。




 ミノタウロスを倒してまた移動をするんだけど……アラスカさんの視線が何度も感じられる。 『(オーラ)』のおかげで見なくてもわかるけど、たまにわざと僕のことを見るときに僕も顔を向けると、妙に可愛らしく顔を赤くさせて笑顔を見せてきていた。




 その後もアラスカさんと魔物を蹴散らせながら出口に向かう。

 まだ僕自身の『(オーラ)』の許容量がわからなくて倒れてしまう事もあったけど、その度にアラスカさんの膝枕で目を覚ます。

 最初こそ驚いて飛び起きたけど、何度か繰り返しているうちに、優しく見下ろしてくるアラスカさんの顔にいつしか安心感を覚えるようになっていた。



「私が見る限り、衝撃波と剣圧は特にマイセンの気力の消耗が激しいように見える。 現状では3回程で抑えた方が良さそうだ」

「実は僕も気がついてましたけど、アラスカさんの膝枕を少し期待してました」


 そういうと顔を真っ赤にさせてくるアラスカさんがとっても可愛い。



「そ、それなら仕方がないな、うん」


 照れながら僕の頭をそっと撫でてきて、僕はアラスカさんの膝枕を堪能する。




 そして数日後に僕たちは、ダンジョンの入り口まで戻って、なんとか僕は生きて帰ってこれた。




次話更新は、夕方か夜になると思います。



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