救ってくれたのは……
なんとか3話目更新です。
ワイトとの戦いでかなりの気力を消耗してしまった僕は、フラつきながらも移動を再開する。 一箇所に留まっているのは危険だと思ったからだった。
それからもわかった事があって、気配を感じ取りながら移動するのも多少だけど気力を消耗していくみたいだ。 まぁ気を張っているわけだから当然なのかもしれないけど。 でもそこに気がついた時は、既に歩く気力もなくなってダンジョンに座り込んでしまっていた。
もうダメだ……歩くどころかもう立ち上がる気力すらないや……
シスターテレサや兄弟たちの顔が浮かんでくる。 次にヴェルさん、ウルドさん、スクルドさん……そしてソティスさん。 次に仲間たちの顔が次々と浮かんでいって、最後に悲しそうな顔をしたキャロがいた。
みんな、キャロ、ゴメン、僕はもう無理かも。
ダンジョンの壁を背に座って寄っかかったまま、お世話になった人たちの顔を浮かべていきながら、疲れなんかの限界からかそのまま意識が遠のいていった……
ズバズバズシャッ!
そんな音が聞こえて目を覚ますと、僕の目の前にサイクロプスの姿がある。
「うわ! うわぁぁぁぁぁ!」
慌てる僕をよそに、サイクロプスは身動き一つしないでいた。
「し、死んでる!?」
落ち着いて身動き一つしないサイクロプスを見ると、『気』を感じない。
変わりに近づく別の気配に顔を向ける。
「……無事だったか?」
そこにはアラスカ様がいた。 アラスカ様も僕だと気がついたようで驚いた顔をみせてくる。
「君は……マイセンか!? なんでこんなところにいる?」
実は……とダンジョンに突然穴が開いて落ちてきたらここにきてしまった事を話とアラスカ様はそれを黙って聞いている。
一通り全部話して立ち上がろうとしたら、手を貸してくれて立たせてくれた。
「あ、ありがとうございますアラスカ様」
そういうとアラスカ様が気まずそうな顔を見せてきて、様はやめてほしいって言われてしまう。
「それではアラスカ、さん……で良いですか?」
「その方が幾分かマシだが、呼び捨てでも構わないぞ?」
そう言って僕に微笑みかけてきた。
憧れのアラスカさんと2人きり……しかも呼び捨てで呼んでいいなんて……いいなぁ、呼んでみたいなぁ……アラスカ、なんて……そんな事を悶々とさせていると。
「君の話が本当ならば、今すぐにでも戻るべきだろう」
その話とはもちろんダークゾーンの事とその先の事で、返事を返そうとしたらクゥとお腹が返事をしてしまった。
それを聞いたアラスカさんが、一度目をパチクリさせた後クスクス笑いだして、恥ずかしさでお腹を抑え込んだ。
「……済まない。 私としたことが、君がここにどれだけの時間いたのかも聞いてなかった」
そういうとアラスカさんが背負袋から食料と水袋を渡してくれる。 遠慮しようとしたら、またお腹がなって我ながら情けない……
「遠慮しないでくれて構わない。 うん、なら私も今のうちに腹ごしらえしておくか、それなら君も食べやすいだろう?」
そういうとアラスカさんは背負袋から更に食料を取り出す。 驚いて見ていると、ホールディングバッグと言われる、たくさん入る魔法の背負袋だって教えてくれた。
僕の隣に座って食べ始めるアラスカさんの横顔につい見惚れていると、食べる手を止めて僕の方に向いてきた。
「そんなに見られると恥ずかしくなるのだが……」
「あ、ああ、ゴメンなさい。 つい見惚れてしまいました」
「見惚れる? 私なんかをか?」
「はい! アラスカさんはすごく美人で、時折可愛い顔をするところとかあって、とにかく魅力的です!」
「そんなに思われたことは初めてだ。 嬉しく思うよ」
嬉しくなってその後も話しながら食事をする。 最後に水を飲んで一息つくと、アラスカさんが僕の手から水袋を取って口にした。
アラスカさんが僕の口をつけた水袋に口をつけた……
「ふー、さて出発しよう。 ん? どうした?」
「あ、あ、いえ、なんでもないです……」
アラスカさんと間接キスをしちゃった!
横並びに歩きながら僕はアラスカさんと移動を開始する。
あの憧れていたアラスカさんと一緒に歩いていると思うだけで、すごくテンションが上がってつい何度もアラスカさんの顔を覗き込んでいた。
次話更新は今度こそ明日の朝6時頃の予定です。




