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キャロンの告白

 ……イタタタタタタタッ? くない……鎧のおかげ、なのかな。



 目を開けて辺りを見ると、特に今までいたダンジョン同様に光苔があって周りは見通せる。 キャロは僕が下敷きになるような形で身体の上にいた。

 どうやらここは行き止まった場所らしく、僕たちが落ちた場所には藁のようなものが敷かれている。 そしてトロフィーのように僕の知らない魔物の首が置いてあったりしていた。



「う……」


 そこでキャロが目を覚まして、僕の上に乗ってることに気がついておりる。



「……ゴメン」

「キャロ、軽いから何ともないよ」

「そうじゃなくて、私のせいで……」


 僕の上に乗っかってたことじゃなくて、一緒に落ちちゃったことを謝っていたのか。


 キャロが辺りを見回して、今いる場所が何者かの棲家である事を理解したようで、もはや助かる余地がないと思ったみたいだ。



「大丈夫だよ、きっと助けに来てくれる」

「そんなの! ここがもしダークゾーンの先にあたる場所だったら、助けが来るどころか埋められるに決まってる! そうでなかったとしても、ここはどう見たって何者かの棲家よ! 助かるわけないわ!」




 珍しくキャロが取り乱している。 たぶん初めて見るんじゃないかな。

 なので僕はただ黙ってキャロの隣に座って気が済むまで話を聞いて頷いていた。 ひととおり言いたいことを言ってスッキリしたのか今度はうってかわって静かになった。



「マイセンがいてくれて良かった。 もし1人っきりだったら今頃おかしくなっていたかも」

「守るって約束したからね。 大丈夫必ず助かるよ」

「そんなの無理よ……」




 それを最後にキャロは眠ったのか、または意識を失ったみたいだ。 僕は時折、落ちてきた頭上を眺めてロープでも垂れてこないか確認しながら辺りにも警戒する。



 落ちてから時間にしてそんなにかかっていないし、垂直っていうほどじゃなかった。 となれば、ロープを持ってきてここに来てくれるのを期待するか、それとも自力で脱出を図るかのどちらかだけど。

 キャロを守りながら脱出なんて僕にできるのか? それはもう少し待ってからにしよう。

 今は体力を温存して仲間を信じるんだ。


 できる限り静かにして部屋であろうこの場所を観察する。 すでに落ちてきた時点で音はしたはずだけど、今の今まで姿を見せないところから今のところはたぶん安全なんだろう。




「マイセン……」

「あ、起きた? 今のところは安全だよ」


 キャロが頭を振って僕のことを見つめてくる。



「伝えられるうちに伝えておきたいことがあるの」


 伝えられるうちになんて、まるで死んじゃうみたいで嫌だけど一体なんだろう?



「なに?」

「私ね、あなたの事が好きだよ」


 まだ混乱しているのかな? キャロが僕のことを好きなはずない。 だって……



「こんな状況だから混乱しているんだね。 キャロ、僕はフレイさんじゃないよ」

「————そっか、そういう事だったんだ……」


 キャロがため息をつきながら最近の僕の行動の意味がわかったなんて言ってくる。 そしてキャロが僕に、フレイさんは好きだけど、それは憧れている人だよって言ってくるんだけど、意味がわからずに首を傾げてみせる。



「じゃあ、マイセンはアラスカさんが好きなの?」

「す! 好き!? 違うよ。 アラスカ様は僕の憧れている人で……あ」

「わかってもらえた?」


 なるほど、そういう事か。 え? っていう事はキャロは僕の事が好きってこと? でも、だとしたら僕は言わなきゃいけないことがある。



「えっと……僕はね……」

「いいよ、シスターテレサに聞いたからわかってる。 マイセンって人を好きになるっていう意味がわからないんでしょ?」


 僕の言おうとした事をキャロの口から聞かされる。 まさかシスターテレサがその事をキャロに言うなんて思ってなかった。

 でもそれなら話は早い。 僕には人を好きになるっていう意味がよくわからない。



「うん……」

「じゃあ、ここ数日私がフレイさんと親しくしているのを見てどう思った?」

「……仲が良いな」

「その姿を見てどう感じた?」

「……お似合いだな」

「ちょっと! そこ少しはチクショウとか仲良くしやがってとか思ってくれなかったわけ?」

「少し思ったけど、フレイさんと僕とならフレイさんの方がキャロにとって幸せだろうって思った」


 なんだかわからないけど、キャロの顔が怒ってる。 そして、今度は僕に寄り添うようにくっついてきた。



「ねぇ……今、どんな気持ち?」

「……キャロくっつき過ぎ」

「私にくっつかれるの……イヤ?」

「イヤじゃない……けど……」

「うん、それだけで十分」


 キャロが満足そうな顔を見せて、僕の身体を抱き締めてくる。 なんだかとても恥ずかしいけど、イヤではなくむしろ嬉しい。 女の人に興味がないわけじゃないのだし。

 でも好きっていうのは僕にはわからないけど、キャロは助かってほしいな。




次話更新は明日の朝6時頃を予定していますが、場合によっては今晩もう1話更新できるかもしれません。


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