魂の友
「自分だけの武器」最終話です。
次話よりダンジョンパートになります。
まるで夢でも見ていたんじゃないだろうか? 我に帰ると僕とキャロは潰れた店のボロの建物の中にいた。
「マイセン、私夢を見てたのかな?」
僕もキャロと同じく夢を見ていたような気分だ。 だけど、僕の手には刀と言われた剣を手にしているし、床には新品のスケイルアーマーがしっかり残されていた。
「夢みたいだけど、本当みたいだよ」
スケイルアーマーに立てかけてあった鞘に刃を収める。 チンっと良い音が辺りに響いた。
「ねぇ、鎧は良いとしても、その武器、みんなにはなんて言うつもりなの?」
「【鍛冶の神のトニー】様に作って貰ったなんて言っても誰も信じないよね……」
「ちょっと待って! 【鍛冶の神のトニー】様が作ってくれたのなら、その剣も鎧ももしかしたら魔法の武具なんじゃない!?」
「ま、まさかぁ」
とりあえず、このまま抱えて持って帰れるはずもなく身につけていくことにすると、思った以上に軽く感じる。 イメージで言うとコートを着た程度にしか重さを感じなかった。
「凄く軽い……」
「なら、どう見ても魔法の鎧ね……」
キャロと顔を見合わせてどうしたものかと考えたけど、結局答えが出るわけでもなく呆然と佇んでしまう。
「まぁ、私とマイセン2人の秘密だね」
「……うん」
そういうキャロはなぜか嬉しそうに見えた。
その日の夜、新調した装備で夕食を食べに〔ヒヨコ亭〕に向かうとソティスさんが驚いた顔を見せてきた。
「ど、どど、どうしたのマイセンその格好!?」
「新しく新調したんです。 おかしいですか?」
「そうね、その鎧は着てる人も見るから気にはならないけど、その剣っていうか、鞘はなんか変わってるかも」
やっぱり刀の鞘が変わっているから目につくみたいだった。
そしてみんなも集まってお披露目すると、やっぱり刀に話が集中する。
「こんな形の剣は初めて見たな。 刀と言ったか、ずいぶん脆そうに見えるが、そんなので大丈夫なのか?」
フレイさんが知らないとはいえ、神様に対して失礼な事を口にして、それを聞いたキャロが含み笑いをしている。
「それって装飾品っつうか、飾り用の奴なんじゃないか?」
シリクさんはなんだか今にもスられて売り飛ばしそうな事を言ってきて、テトラさんに至っては興味も示さない。 やっぱりこの人はモールが好きなんだろう。
「綺麗で神秘的な武器ね。 見ているだけで吸い込まれそう……」
ガラシャさんは神官だからなのかな? なにか感じるものがあるのかもしれないようだった。
「まぁこれでマイセンの武具も整った。 あとはこのパーティのリーダーのマイセンがどうするかだ」
「……試したい。 この武器を使ってみたいです」
「決まりだな。 明日行こうぜ!」
僕のわがままにみんな嫌な顔1つしないで頷いてくれる。 改めて僕はパーティの仲間たちの優しさに感謝する。
「僕のわがままに付き合ってくれて、ありがとうございます!」
「マイセン、リーダーは俺たちのパーティのリーダーだ。 何処までもついてくぞ!」
「そうよ、それにマイセンさんに私たちは救われているのよ? 断れるはずないわ」
本当にこの人たちと出会えてよかったと思うし、仲間になれてよかったと思った。
「そういえばマイセン、その刀に名前をつけないといけないんじゃなかった?」
ひと段落したところでキャロが忘れていたことを思い出してくれる。
そうだ、名前……僕の知っている名前のある剣って言ったら7つ星の剣ぐらいで、フレイさんの持っている魔剣は特に名前がない。
「えっと……すぐに決められそうにないから、そのうちつけるよ」
「そっか、そうだよね」
夕食を終えて解散する。 みんなが戻っていくのを見送ってから僕も下宿先の前まで戻ると、黒いローブ姿の男の人が立っていた。
そして僕の目をじっと見つめてから声をかけてくる。
「君がマイセンか」
「え? はい。 あのぉどちら様ですか?」
「俺が誰かわからないか……それならそれでいい。 その刀、大事に使えよ」
「刀!? なんでそれを! あなたは誰ですか?」
「うん、お前の魂の友とだけ言っておくよ」
その人はそれだけ言うと一瞬にしていなくなった。 まるで幻だったかのように……
でもなんでだろう……なんだかとても懐かしく感じた。
魂の友……僕の前世に関係ある……そんなわけないか。
名前は出しませんでしたが、最後に登場した人物はマイセンが前世でマスターと呼んでいた、世界の守護者のサハラです。
私の書いた物語がこの「リインカーネーション〜転生した史上最強の魂を持つ者〜」が初めての人の為に補足しておくと、この世界では神は実在していて、必要に応じて手助けをしに来ることも普通にあります。
次話更新ですが、本日中に新章を更新させます。
章のタイトルは「覚醒」。 その名の通り、マイセンがいよいよ強くなっていきます!




