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シスターテレサとキャロ

 結局何も買わずにお店を後にする頃にはお昼を過ぎた頃になっていた。



「どうしよう……」

「素直に言えば? 別に明日絶対にダンジョンに行かなきゃいけないわけじゃないんだし、それに人数だって足りてないでしょ?」




 キャロに言われて、今晩酒場でみんなに商店で武器作成してもらう事になったから、もうしばらく待ってもらうように言う事にしよう。

 そうなるとこれから暇になる……



「それじゃあ今度は私に付き合ってよ」


 と思ったらキャロがどこかに行く場所があるみたいだ。 武具探しを付き合ってくれたから、そのお礼と思えばいいんだけど……



「キャロは準備するものはないって言ってなかった?」

「うん、準備じゃなくて……」


 キャロが僕の腕を取って組んでこようとしてきて、ビックリして避ける。



「な、何を!?」

「マイセンのその『(オーラ)』を読めるのってちょっと厄介かな」

「キャロ、君が何をしたいのか僕にはわからないよ……」


 こんな接してくるキャロの行動が理解できない。



「マイセン、一体どうしたの?」


 だというのに、キャロは不思議そうに僕を見てくる。

 どうしたも何もキャロにはフレイさんがいるじゃないか。 なんで僕なんかにこんなに接してくるんだ?



「その、イヤ……だった? ゴメンね……」


 そんな困った顔で見られたって僕だって困る。 なのでごまかす事にした。



「腕組みは恥ずかしいから……」

「そっか……まぁマイセンがそういうのなら。 じゃあ手繋ぐぐらいなら良いよね?」


 手を繋いで歩くのは以前もしてたからさすがに断れないか。 でもそんなところをフレイさんとバッタリ会ったらどうしたらいいんだろう?



 とりあえず手を出すと、キャロがそれぞれの指を絡ませて繋いできた。 これはこれで妙に密着しているみたいで恥ずかしい。

 キャロを見ると顔を赤らめて笑顔で見つめ返してくる。



「そ、それでどこに行きたいの?」

「うん、特に決まってない」


 ……どういう事?

 僕の困った顔を見て、笑いながら手を引っ張っていく。 そんなキャロの行動がわからなくて、僕はただただ困惑していた。



「ねぇ、マイセンの育った孤児院に連れて行ってよ」

「面白いところじゃないよ?」

「い〜のっ」



 孤児院なんかになんでキャロが行きたがるのかはわからなかったけど、町中よりはフレイさんに出会う事はないからいいかって自分に言い聞かせることにした。





 町外れまで行って孤児院が見えてくる。

 僕の兄弟たちが外で遊んでいて、僕に気がつくと一斉に走ってきた。



「兄ちゃんおかえりー!」

「あー! 綺麗なお姉ちゃん連れてるぅぅ!」

「兄ちゃんの嫁さんかぁ?」

「お姉ちゃん一緒に遊ぼう!」


 言いたい放題言われた……

 けど僕とキャロはそんな間柄じゃない。

 シスターテレサも来るとキャロが頭を下げた。



「マイセンよく来たね。 それとお嬢さんもこんなところへようこそ。 さぁ、立ち話もなんだから家にでも入ってちょうだい」


 シスターテレサが兄弟たちを呼んで孤児院に入っていく。 僕たちも建物に入っていった。



「マイセン、あの子たちと少し遊んであげたら寝かせつかせてくれるかい?」

「え、はい」


 孤児院に戻って早々シスターテレサに言われて兄弟たちの相手をしにいく。

 声は聞こえないけど、シスターテレサがキャロと何か難しい話をしているようで、キャロも真剣なおもむきでいろいろ聞いているようだった。


 お昼寝の時間になって寝かしつかせてシスターテレサとキャロのところへ行く。



「みんな寝ました」

「ありがとうね」

「キャロとなんの話をしていたんですか?」

「お前さんの冒険者話だよ。 もう『(オーラ)斬りのマイセン』なんて二つ名がついたんだって?」



 慌ててキャロの顔を見るとキシシッと笑いながらそっぽを向かれる。

 ……キャロォォォ。



「勝手につけられただけですよ」

「まぁ無茶はするんじゃないよ?」

「はい!」

「こんな子だけど仲良くしてあげてやってくださいね」

「もちろんです! 何しろ必ず守ってくれるって言ってくれましたから」


 キャロ、そんな事まで話したの!?

 僕は照れながらそっぽを向いて、知らんぷりをしてみせた。




「じゃあそろそろ帰ります。 いろいろ聞けて良かったです」

「こっちこそいろいろ教えられて良かったよ。 またいつでも来てちょうだいな」



 眠る兄弟たちにそっと別れを告げて、僕とキャロは町に向かって歩き出した。



「ねぇキャロ、シスターテレサと何を話したの?」


 へへぇって笑いながら、繋いだ手のせいで今度は避けられずに腕を組まれた。



「ナイショ」


 しっかり握られた手と腕を掴まれながら、僕はヒヤヒヤしながら町へと戻っていった。

 時折キャロが僕の顔を覗き見ていて、目が合うと笑顔を見せてごまかしてくるけど、どこか僕の事を哀れむような目で見ているようにみえた。




余談


この物語には当然ながらレベルは存在しません。 強くなったと思える目安は、戦った場数と実際に遭遇した経験、持久力などから判断しています。


ウィザードの場合は魔法を使うには、難しい魔法言語を詠唱してから、発動に必要な発動詠唱をしています。 普段書かれているのが発動詠唱で、魔法言語の詠唱は一般の人では読み取れない言語を使っています。

何度も魔法言語の詠唱をして慣れてくると、魔法を記憶する時に、より多くの魔法や上位の魔法が記憶できるようになっていきます。

という設定にしてあります。


キャロンの場合は第9位まである魔法のうち、第3位までしか使えず、加えて第3位の魔法も1回分しか記憶できない程度になります。


俗に言うMP制ではないので、ウィザードは休養した後に自身の持つ呪文の書の中から、今日必要になるであろう魔法を選択して記憶しなくてはいけなくなっています。


余談でした。


次話更新は明日の予定です。

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