冒険者の締め
そんなわけでシリクさんたちとヴェルさんのところへ行って買い取りをお願いしにいくことに。
「ヴェルさん、これの買い取りお願いします」
ヴェルさんが僕の顔を見てちょっとおかしな顔を見せたけど、すぐにいつもの雰囲気で作業に移った。
「えっと、全部で金貨11枚と銀貨8枚ってところなんだけど、特別に頭割できるように金貨12枚にしておくわね」
「ありがとうございます」
「うお! なんかマイセンの時は優しくねぇすか、ヴェルさん!」
「当然です。 私たち職員だってあなたたちと同じ人種なんですから」
さっきの話が聞こえていたようで、シリクさんが価値不明で買い取りって愚痴をこぼしていたのを聞いていたみたい。
「そんなことを聞いたら人情も湧きませんから」
「クゥーーーー、マイセン、やっぱお前は女誑しだぜ!」
「えええええ!?」
そう言ったシリクさんをガラシャさんが殴り飛ばす。 しかもグーで……
「そこは女誑しとは関係ないわよ!」
「ガラシャ……お前まで垂らし込まれたか……う、嘘です! 冗談です! すいませんでした!」
もう一度拳を握りしめたのを見て、手をすり合わせながら慌てて謝りだしていた。
「それはそうとマイセン」
シリクさんが真面目な顔で僕を呼ぶ。
「この後ちぃとばかし一緒に出かけねぇか?」
「えっと、どこにですか?」
「決まってんだろう? 金貨1人頭2枚入ったんだぜ。 歓楽街だよ。 か、ん、ら、く、が、い。 綺麗なねーちゃんたちがいーっぱいいて、美味しいメシと酒を飲むんだよ」
シリクさんがクイっとお酒を飲むそぶりを見せるんだけど、妙に顔に締まりがなくなってるように見える。
そもそも歓楽街って言ったら、シスターテレサが不潔な場所って言っていたような?
そこへ……
「おい、お前名前なんて言った? シリク、ああシリクか。 名前なんてどうでもいいさ。 まさかとは思うけど、うちの少年をいかがわしい店に連れて行こうなんざ、よもや思っちゃいないだろうねぇ?」
「うひぃ!」
ウルドさんがシリクさんに睨みを利かせてくる。
「そうですよ〜、マイセン君を悪い道に拐かすような事をしようというのでしたら、冒険者ギルドであなたを特別高額賞金ウォンテッドに認定してあげちゃいますよ〜?」
「あひぃ!」
スクルドさんも笑顔で怖い事を口にした。
「行きません、行きませんから!」
そんな2人が強くなって僕が謝る。
「少年に行ってない!」
「マイセン君には行ってないですから」
こ、こわひ……
シリクさんがやたらキラキラと爽やかな笑顔を僕に向けながら肩に手をおいてきた。
「俺さ、間違っていたよ……」
ひとまずこれで買い取りも済んで、シリクさん、テトラさん、ガラシャさんにそれぞれ金貨2枚を渡して、フレイさんとキャロを見る。
ちょうど報告も終わったみたいで、手を振ってきた。
「とりあえずしばらくの間、ダンジョンに行くのは最低10名以上のパーティ、またはクラン推奨にしようと思う。 もっとも強制力はないが、このムカデの死体を麓の入り口に飾っておけば、少しは考えも変わるだろう」
オーデンさんが難しい顔でとりあえずの対策を口にする。
こんなに大きなムカデの死体を入り口に飾られたら、確かにおいそれと気軽な気持ちじゃ行けなくなるよね。
これでギルドへの報告も終わって、買い取りしてもらったお金もフレイさんとキャロにも渡した。
「今日はひとまずこれで解散にして、明日集まってこれからの事を相談しませんか?」
「それならちょうどメシ時だし、これから酒場で話をした方がいいだろう?」
フレイさんがこれが生きて帰ってこれた冒険者パーティの締めだぞって言ってくる。
行き先は〔ヒヨコ亭〕、ここで結成したのだから今後もここを拠点にするべきだって言われて向かうことになった。
次話更新は明日の朝6時頃の予定ですが、お昼頃に更新できるかもしれません。




