お似合いの2人
首の傷をガラシャさんの治癒魔法で治してもらっている間、みんなでこの巨大なムカデの話をしている。 決してワイワイ明るくではなくしかも僕たちのパーティだけで、助けた冒険者たちは表情が暗い。
「こんだけデカイ奴は見た事がない」
「フレイさんでもですかい」
通常ジャイアントセンチピードと言われているのは、大きくてもせいぜい1メートル程度なんだとか。
「まさしくバケモノってところね」
ガラシャさんが顔を引きつらせながら遠巻きに丸まって死んでいるムカデを見ている。
「それにしてもマイセンって、ほんと害虫って言われてる虫に詳しいわね」
「確かにジャイアントコックローチといい、驚かされる事ばかりだな」
キャロとその隣に立つフレイさん。
確かフレイさんは独り身だから仲間に加わってくれたんだし、これだけ見ているとさすがの僕でも2人がお似合いだなんて思えてくる……
うん、仲間の幸せも大切なことだよね。
「孤児院じゃしょっちゅう出てくるから、1番有効な倒し方を自分なりにいろいろ試したんですよ。
ちなみに、油にムカデを入れておくとムカデ油が取れて、軽度の火傷や切り傷、虫刺されによく効くんですよ」
感心したような声が上がる中、シリクさんがボソッとこの巨大なムカデでムカデ油を作ったら儲かるな、なんて言い出したけど、ガラシャさんに神聖魔法があるから流通していないだけよって言われて肩を落としていた。
「とりあえずコイツをどうするかだ」
「どうするってどういうことですか?」
「現物を見せたほうがギルドも説明するよりもわかりやすいと思うんだ」
「なるほど! なら私に考えがあります!」
キャロがフレイさんに笑顔で答えて、魔法の詠唱に入った。
「我に付き従う力場よ、その姿を現せ! 浮遊盤」
詠唱が終わるとキャロの横に円盤状のものが現れる。
「なるほど、さすがだキャロン」
「えへへ」
そんな2人を横目に見ながら、僕は死んだムカデを眺めていた。
ムカデを浮遊盤にみんなで乗せたあと、麓に向かってると僕の横に1人の冒険者が寄ってくる。
「君があの『気斬りのマイセン』か」
「いや、その呼ばれ方はちょっと……」
その冒険者が苦笑いを浮かべる僕を見て、不思議そうな顔を見せてくる。
「二つ名が付いて嫌がるなんて珍しいと思うんだがな」
もっともこれは僕に話しかけるためのきっかけに過ぎなかったみたいで、沈んでる仲間を指差して僕の仲間にしてもらえないか頼んできた。
「それは……僕の一存では決められないし、もうパーティは人数が揃ってますから」
「ならもし、クランを結成するようなことがあったら是非声をかけてほしい」
今の状態だとしばらくはダンジョンには行けないだろうって言って、名前と行きつけの酒場、宿屋なんかを教えられた。
「お約束は出来ませんが……その時は必ず」
麓に戻った頃は日が落ち始めた頃で、僕たちの運んでいる巨大なムカデを見ると、麓にいた冒険者たちから声があがった。
その足で冒険者ギルドに向かい、助けた冒険者たちにもう一度お礼を言われる。
そして冒険者ギルドでは僕たちが運んだ巨大なムカデを見て、ヴェルさんたちから悲鳴があがった。
もちろん気持ち悪くて。
すぐにギルドマスターのオーデンさんが来たけど、オーデンさんもその巨大なムカデの姿に驚きを隠せない。
「これは一体……」
僕は説明がうまくできないからフレイさんにお願いして、その間にシリクさんと一緒に戦利品の買い取りを済ませることにするのだけど……
「なぁマイセン、やっぱり俺のツテの場所で売らないか? 冒険者ギルドじゃ価値不明での下取りになるんだぜ?」
「そうなのかもしれないけど、僕はここでお世話になってるから」
「シリク、マイセン、リーダーの決定に従わなきゃダメだぞ」
「そうよ、あなたのわがままでパーティから外されたらどうするつもり?」
「えええ! そんな事はしませんから!」
ガラシャさんに僕がそんなことしない事ぐらいわかってるわよって言われて、ただシリクさんにルールは守るように言いたかっただけみたいだった。
「はいよ、わかりましたよ」
渋々ながらシリクさんが納得してくれたみたいだった。
オーデンさんに説明しているフレイさんをチラッと見ると、ところどころでキャロも説明に加わわっている姿が見えた。
やっぱりお似合いだ……
次話更新は明日の朝6時頃になると思います。
今書いているところが、重要なところになるため、少し時間がかかっています。
そのため、更新を少しセーブしています。




