連携戦闘
全員一斉に武器を構えて、それぞれのパーティが隊列を組む。
僕たちのパーティは僕とフレイさんとテトラさんがいつでも動ける様に前に立って、その後ろにシリクさんが控えている。 キャロとガラシャさんは後方に下がっていつでも支援できる体制を整えていた。
「初撃は範囲魔法を使います! 前衛の方は待ってください!」
キャロが声を上げて、僕たちと先生たちの前衛がそれぞれ声を上げた。
「天にまします我が御主【旅と平和の神ルキャドナハ】よ、我と我が友たちを祝福し守り守られん事を! 祝福!」
そしてガラシャさんが神聖魔法を使うと、一瞬バシャッと衝撃の様なものが来たと思ったら、勇気が湧いてきて不安や恐怖、そういったものが取り除かれた感じになった。
そうしていると6体のオーガが姿を見せた。
「我が眼前の敵を爆せよ!火球!」
宣告通り、キャロが火球の魔法を使うと、目標地点であるオーガに火球が飛んでいって当たると低音の響きとともに半径6メートルにも及ぶ火炎による焼けつく爆発を作り出して、6体のオーガたちを炎に包み込ませた。
その炎の中からこちらに向かって肉が焼けた匂いをさせながらオーガたちが走り出してくる。
「あいつだ! あの後ろにいて動かない奴がオーガメイジだ!」
フレイさんが叫んでオーガをすり抜けながらオーガメイジに向かって走り出す。 以前持っていた剣とは違う様で、オーガたちを相手にした瞬間、剣が輝きだした。
「すべての音を絶つ静寂よ、かの者の口を封じ音を断て! 静寂!」
あのときと同じくオーガメイジが魔法の詠唱をしはじめたけど、ガラシャさんの神聖魔法が発動すると、オーガメイジの詠唱の声を掻き消した。
「これでオーガメイジは魔法は使えないわ!」
「助かる!」
オーガメイジに向かっていったフレイさんから声が聞こえた。
ざっと向かってきたオーガ5体を見た感じでは、先生のパーティの冒険者たちは2人で1体のオーガを相手にする様で、そうなるとテトラさんと僕は1人で1体の相手をしなければならない。
僕は突進してくる1体のオーガに狙いを定めて、『気』を感じとりながら剣を上段に構える。
勢いよく突進してくるオーガと丸太の様な棍棒を、『気』を読んで紙一重のところで躱して剣を一閃する。
ザックリと斬り裂いたけど一撃で仕留められなくて、振り返りざまに丸太の様な棍棒が振られて躱す。
「魔法の矢よ敵を打て!魔法矢!」
キャロの声が聞こえて、オーガに魔法矢3本が勢いよく射出されて命中する。 背後からの魔法矢の攻撃で振り返ったオーガに剣を振り下ろすと、もの凄い雄叫びをあげたあと倒れて息絶えた。
ドワーフたちも後に続けとばかりに怒号がかかっていく。
テトラさんが相手をしているオーガに向かおうとした時、オーガの背後からシリクさんが現れて、急所である首をダガーで貫く。 その隙にこめかみ目掛けてテトラさんがモールを直撃させる見事な連携でオーガの息の根を止めた。
ならフレイさんはと思ったら既にオーガメイジを倒してこっちに戻ってきているところだった。
残るオーガたちも先生たちのパーティが次々と倒していって、最後のオーガも倒れた。
「さすがは巨人殺しのフレイさんといったところですかな」
「ははは、それはこの魔剣の力だよ」
フレイさんの持つ剣は魔法の剣で、巨人族を相手にする時のみその真価を発揮するそう。 なのでオーガやエティンなんかは小型でも巨人族のため必殺の力を秘めているんだとか。
そんな話を先生とフレイさんがしていると、キャロが見惚れるように見ているのに気がついた。
「いいパーティですな。 連携もしっかりできてる。 そのうちクランを作って呼ばれる日を楽しみに待っていますからな」
そういって先生たちと別れる。 僕たちはどうするかとなった時に、キャロとガラシャさんに魔法の準備はまだ十分にあるか確認する。
「私は今ので火球使ったから、残りは期待しないで」
「神聖魔法は神の御加護だから準備は必要ないのよ」
それぞれの返事が返ってくる。
どうするか迷ったけど、目的だったダークゾーンの調査と戦闘での連携も見れたし、僕たちが倒したオーガ2体とオーガメイジ1体の持ち物で、だいぶ懐が温まりそうだってシリクさんが言うから、これで戻ろうという事になった。
次話更新は明日の朝6時頃の予定です。




