交流
当初の予定通りダークゾーンの調査だけに留めて、またダンジョンの探索することにした僕たちは、更に奥へと進んでいく。
あれだけの冒険者たちがこのダンジョンに入っているのに、他の冒険者たちと遭遇することがないのはおかしいと思っていたら、今日初めて他の冒険者たちと遭遇する。
「ん……冒険者がいる。 7人」
狼獣人のテトラさんが視界に入る前に匂いを嗅ぎ分けて教えてくれる。
「冒険者崩れかもしれないから慎重にな」
フレイさんがみんなに警告してくる。
次第にその姿が見えてくると、テトラさんの言った通り7人の冒険者たちが座って休んでいるところだった。 僕たちが近づくと全員立ち上がって僕たち同様警戒しているみたいだ。
「調子はどうですかな?」
1人が声をかけてくる。 どう返したものかと思っていると、フレイさんが返事を返した。
「たいした戦果はないな。 そっちはどうだ?」
フレイさんが剣を鞘に戻して、僕たちにも促してくる。 僕たちが武器を納めると、あっちの冒険者たちも同じ様に武器を納めた。
「おお、誰かと思ったら登頂組のフレイさんじゃないですかい! とうとうダンジョン組ですかい?」
「ん、まぁな」
「ん? ホホー、こいつは驚いた『気斬りのマイセン』までいるじゃないかね」
いつの間にか僕に二つ名の様なものがついていたみたいだった。
キャロが肘でつついてきてニンマリ笑ってくる。
「な、なんだかその呼ばれ方、恥ずかしいですね」
そこで意気投合した僕たちは少し交流することになる。
このパーティのリーダーはドワーフのドクさんで、残る6人もドワーフかドゥエルガルで揃っていた。
「ドクだ。 仲間からは先生と言われとるよ」
「ドゥエルガルのグランだ! こいつらからはいかりやなんて呼びやがる!」
「ヒックショイ! ドワーフのスニージ。 よくくしゃみをするから、くしゃみって呼ばれてるよ……ヒックショイ!」
「お、おいらはバッシュだよ。 恥ずかしがり屋だからテレ助って呼ばれてる、フヒッ」
「……zzz」
「ワハハ、またこいつ眠ってるよ、こいつはスリープ、見ての通りの寝坊助。 そんでもっておいらはハッピー、いつもご機嫌絶好調さ! 仲間からはワラって言われてるよ。 なんでワラかって? よく笑うからワラさ、ワハハ……ん? ああ、あとこいつはドッピ。 幼い頃から喋れないが、腕はいいけどドジも多いからドジ助って呼ばれてるんだよな、ワハハ」
えっと……逆に覚えにくいような……
『先生』と『いかりや』と『くしゃみ』と『テレ助』と『寝坊助』と『ワラ』と『ドジ助』……
僕たちも自己紹介をしたあと、ダンジョンの情報交換なんかをしていく。
「ほぉ、ダークゾーンですな。 あれは私らもさすがに敬遠してますなぁ」
「やはりそうか」
僕たちはそっちのけで先生とフレイさんが話をしていた。
ダークゾーンに関しては、結局のところ単独パーティでの攻略は避けるべきだろうって話になって、どこかの大きなクランに任せるか、僕たちがクランを作るしかないだろうってフレイさんが言ってくる。
「クラン! いいねぇ。 そうなると血盟主はマイセンがやるって事だな!」
「えええっ! 僕!?」
「おお、マイセン、リーダーがマイセン、盟主! カッコいい」
「む、無理ですよ僕なんか。 クランなら絶対フレイさんが盟主やるべきです」
「仮の話じゃない『気斬り』君?」
「キャロまでそれ言う!?」
ただでさえパーティリーダーにされてどうしたらいいかもわからないのに、勝手にそんな話が持ち上がってくる。
「そうですな、もしフレイさんか、『気斬りのマイセン』がクランを作る、というのであれば、そのとき誘っていただければ喜んで加わらせてもらいますかな」
先生まで乗り気に答えてきた。
じゃあそろそろと僕がみんなに促して、この話から逃げ出そうとする。
そのとき、テトラさんの鼻が何かを察知して声を上げた。
「なんか来る! ……たぶんオーガ……が、6体……」
テトラさんの言った言葉はここにいる全員に戦慄が走った。
そして、僕が顔を向けるのと同時にフレイさんも僕を見て頷く。 おそらくあの中にオーガメイジがいるだろうと……
次話更新はお昼頃を予定しています。




