ターニングアンデット
新章のダンジョンパートに入ります。
ダンジョンに繋がる道に向かって歩いていく。 僕を含めて6人ともなるととても心強い。
「ねぇ、さっきの一体どういう意味?」
まだ余裕がある場所だからみんなも喋りながら移動していると、キャロが僕を突いてきて聞いてくる。
「どういうって?」
「だからっ、その……言わないとわかんないかなぁ?」
「キャロが大事だからだよ」
いきなりキャロが黙り込んじゃった。 大事な仲間の方が言い方良かったかなぁ?
「じゃ、じゃあ絶対に守ってね」
「うん! 任せてよ」
キャロが嬉しそうな顔を見せてくる。 言い方が間違ってたっていうわけじゃなかったみたいだ。
そしてダンジョンに入ると隊列を組んで進むようになって、みんなも喋るのをやめて慎重に移動しだす。
ふと先頭を進むシリクさんが、3メートルはある長い木の棒を手にしていることに気がついた。
「シリクさん、それは?」
「ん、ああ、こいつか? こいつは見たまんまの木の棒だ。 だが未知の領域を進むときは、こいつで怪しい場所を叩いたりしながら罠がないか調べるのに使える便利な奴さ」
へぇと関心しながらさっきまで持ってなかったことを聞くと、釣竿のように繋げるようになってるんだって言われた。
「うえ……最初のお客さんがあいつかよ……おい、テトラ出番だぞ」
「また俺? 俺のモールがぁぁ……」
先頭を歩くシリクさんが言う先には、テラテラ黒光りするジャイアントコックローチが3匹もいた。
テトラさんは渋々と先頭に移動してきて、キャロとガラシャさんは引きつった顔をしながら後ろに下がる中、僕はニッコニコの笑顔で背負袋からあるものを取り出す。
「あいつなら僕に任せて!」
僕の声に反応して一斉にカサカサと走り向かってきた。
パンッ! ブチャ……パンッ! グチョ……
2匹を叩き潰した直後、残る1匹が飛行して向かってきた。
バビビビビビビビッ!
その気色悪い羽音に背後からは悲鳴や声が上がる。 僕は狙いを定めて……
スパンッ! ベシャ……パンッ! グチョ……
叩き落して叩き潰した。
「ふぅ……やっぱりゴキブリはサンダルで叩くのが1番効果あるね」
一仕事を終えてみんなを見ると、信じられないものを見たような顔で僕の事を見てきた。
「こいつらは強くはないが、その見た目や動き、噛まれた場合の精神的打撃に加え、仲間からしばらく避けられる事で敬遠されているんだが……ここまで勇敢に立ち向かえる者は俺でも初めて見たよ」
フレイさんが関心しながら僕を褒めてくれる。 キャロ、キャロは? と見ると前回同様ひきつった顔でまるで近寄らないでとでも言いたげな顔で見ていた……
なんだか気持ちみんなに距離を置かれながら先へ進んでいく。
先頭を進むシリクさんが急に足を止めた。
「腐った死体の匂い、数、1、2、3、たくさん!」
「ガラシャ、出番だ頼む! こいつぁ結構な数がいやがるぞ!」
テトラさんを無視してシリクさんがガラシャさんを呼ぶ。 そして僕たちの先には唸り声をあげながら、ズルズル、ズルズルと引きずるようにして歩いてくる人影が見える。 更に近くまで来ると、その体は腐っていてところどころ骨がのぞき、眼窩は赤い光を放っている。
「あれは……ゾンビ? じゃない……」
「あいつらはワイトよ! あいつらに食い殺されると同じようにワイトになって蘇るわ」
ガラシャさんが僕の横に来てそう教えてくれる。 そのガラシャさんが、胸に下げていた【旅と平和の神ルキャドナハ】様のシンボルを手に持って先頭に立った。
「生命の条理を破りし不死たる不浄なるもの、彷徨える魂よ、我が御主【旅と平和の神ルキャドナハ】の力と威光が前に潰えよ! 我に加護を!」
ガラシャさんが祈りを捧げると、ワイトと呼ばれた歩く死者たちが崩れる様に倒れたり、反転して遠ざかっていく。
「ふぅ、さすがにワイト相手だと、私の祈りではこれが精一杯みたいね」
一仕事を終えたようにガラシャさんがつぶやく。
「凄いよガラシャさん! まるで女神様みたいだったよ!」
僕が素直な感想を言うと、ガラシャさんが照れた様な顔を見せてくる。
「い、今のは神官なら誰でもできる様なことで、そんなに褒められる様なものじゃないわよ」
そう言って隊列に戻っていく。 その時ボソボソとキャロンさんの言った通りだわ、とか言っていたけど、何のことか僕には分からなかった。
移動を再開すると、隣を歩くキャロにこの女誑しと小さな声で言われて睨まれた……
なんで?
次話更新は時間指定はできませんが、本日中にもう1話更新します。




