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訓練場

 麓近くにある訓練場に辿り着く……はいいけど、閑散としていて誰もいない。



「あのー、誰かいませんか?」


 ……シーン。



「あのー?」



 建物に入っていくと、中に静かに目を瞑って座っている男の人がいた。


 えっと、これって精神集中してるのかな? 邪魔しちゃ悪いから……



 僕もその人から離れた場所で同じように座って待つことにした。

 どれだけ時間が経っただろうか? 目を瞑って座っていたら、頭に直接話しかけてくるような声が聞こえた。



『バカだなぁ、———は、そんな頭固くてどうするんだ?』



 声の主が誰かはわからなかったけど、なんだかとても懐かしく感じた。





「おい、小僧!」


 ……ハッ!


 目を開けるとさっきまで座っていた男の人が、僕のそばまで来ていて声をかけてきた。



「あ、すいません。 精神集中していたみたいだったので」

「あ? 悪りぃ、あれ寝てただけだわ」


 えええええええええっ!



「しっかしお前さんずっとその姿勢でよく平気だったなぁ……うりゃ」



 手に持った木剣で足をつついてきた。



「あ゛——————————っ!!」



 痺れきっていた足に、まるで雷でも落ちたような、痛いような痒いような感覚が襲ってきて僕は床を転げまわる。 それを愉しむように男の人が追いかけてきては足をつついてきた。


 痺れが収まると残念そうな顔を浮かべながら自己紹介してくる。



「俺はこの訓練場の教官をやってるアレスだ」


 アレスさんは元冒険者で、今は引退して訓練場の教官をやってるみたい。 引退理由はパーティにいた女性と結婚して子供ができたからなんだとか。





「ほーん、今時ちゃんと訓練場に習いに来るなんて珍しいやっちゃなぁ?」

「そうなんですか!?」



 どうやら最近はいきなり実戦でダンジョンに行く人が多いんだとか。 おかげで収入が減って生活がカツカツだって笑いながらアレスさんが言った。

 なので僕が孤児院の出である事を告げると頷きながら納得する。



「おっし、久々の練習生だ。 バッチリ修行積んでやるからな!」



 そんなわけで、まずは武器選びから始まる。 体格が細い僕にはポールアームや斧は、身体が持っていかれちゃって上手に振り廻せず、槍か剣のどちらかを選ばされることになる。



「短剣ってのもあるけど、俺は正直オススメしねぇ。 理由はジャイアントコックローチと戦えばわかる!」



 まぁジャイアントコックローチは例えらしいんだけど、至近距離での戦闘は体液とか血を浴びやすくて、その匂いがとんでもなく臭いらしい。

 もともと英雄物語のセッターに憧れがあった僕は、迷うことなく剣を手にした。



「剣だな! それなら俺もバッチリ教えてやれるぜ!」



 どうやらアレスさんのメイン武器だったようで、他の種類の武器だったら本当に基礎程度しか教えられなかったって笑いながら話す。


 少し不安になりながらも、早速言われた通り素振りからはじまった。





「うーん……」



 素振りの後、斬りおろしや袈裟斬り、突きなんかの振り方を教わるのだけど、そこでアレスさんが唸りだした。 今日初めて剣なんかを振ったんだから、きっと下手くそだって思われているのかもしれない。



「オメェさん、本当に今日が初めて剣を手にしたんだよな?」

「……はい」


 やっぱり僕の想像通り酷いんだと思った。



「なんかどこかで習ってたんじゃないかってほど綺麗な太刀筋だなぁ」

「え! えぇぇぇぇぇぇぇっ! 本当に今日が初めてです! 持ったことすら無いです!」



 アレスさんが肩を叩いてきて、悲しい表情を浮かべながら僕を見つめてくる。



「やっと来た練習生だってのに……俺にはお前に教えてやれることがねぇ!」



 悲しい顔を向けながら言われる。 僕自身まさかそんな事を言われるとは思わなくて驚いた。




「って事で実際俺と練習稽古するぞ」



 てっきりこれで終わりなのかと思ったら、今のは基礎的な振り方だけだったみたいで、これからやる練習稽古で、ダンジョンに入って最低デプス1でやっていけるようになるまでは実践的な練習をするんだって。




 だけどここでもまたアレスさんを驚かせることになるとは、僕自身思いもしなかった。




本日より開始しましたが、今日はこれが最後の更新となります。

明日からは1日1話最低更新で進みます。

また、ダンジョンパートからはガラッと雰囲気が変わって殺伐とした雰囲気に変わりますが、それは数話先までお待ちください。



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