ヤキモチ?
ソティスさんがぴよぴよルームの確保もあるから早めに〔ヒヨコ亭〕に一緒に向かう。
〔ヒヨコ亭〕につくとソティスさんがさっそくぴよぴよルームの予約状況を確認して、問題ないのがわかると僕を連れてぴよぴよルームに入った。
名前は可愛らしいけど中はいたって普通の個室で、最大20人は入れる広さがある。
「うわ……ここってお金かかるんじゃないですか? それにたったの6人なんですけど」
「うん、いいの、いいの。 マイセンはいつも来てくれてるから私からのプレゼント」
「ありがとうございます」
ソティスさんはここ〔ヒヨコ亭〕の娘で、フロアを全て任されているんだとか。 だからこういった融通もソティスさんが自由にできるらしい。
「一応、ぴよぴよルームの代金は私からのプレゼントだけど、料理まではさすがに無理だからそこは気をつけてね」
僕はソティスさんに重ね重ねお礼を言って椅子に座って待つ事にした。
1人で待っていると嫌でもキャロとフレイさんが一緒にいる光景が思い浮かんでくる。
なんだろうこの気持ちは……ああ、そっか、初めてできた仲間が誰かと親しくしているのが嫌なんだな……バカだな僕は。
しばらくすると扉が開いてシリクさんたちが入ってくる。
「お? 遅かったか?」
「いえ、僕はここで親しくしている人にこの場所を準備してもらえたんで、そのままここで待ってたんです」
「なるほどねぇ、それはそうとあの、なんて言ったっけっか」
「キャロンさんでしょう! 仲間になるんだから覚えなさいよね」
そこへ扉が開いてキャロと……フレイさんが入ってきた。
「俺たちが最後になってしまったか」
シリクさんたちがフレイさんを見て驚いた顔をみせる。 そこで僕がフレイさんも仲間に加わってくれた事を話すとさらに驚いた顔を見せた。
テーブルにはシリクさんたちが3人並んで座って、向かい側にキャロが真ん中で左右に僕とフレイさんが座る形になる。
食事も運ばれてきて揃うと乾杯して、各自1人づつ自己紹介していった。
「ここは順当に行くと、フレイさんがパーティリーダーってとこだと思うんだが……」
シリクさんが僕に申し訳なさそうに言ってくる。
「いや、俺はマイセン君のパーティに加わったんだ。 パーティリーダーはマイセン君がするべきだろう」
「ぼ、僕はダメです。 それならパーティリーダーはキャロですよ!」
「え! なんでそうなるのよ」
このあとしばらく誰がパーティリーダーになるかで一悶着する。 そこへ、
「いい加減キリがないし、ここは多数決で決めるのはどうかしら?」
ガラシャさんの一言で多数決で決めることになった。 対象は僕とキャロとフレイさんだ。
「じゃあ、私の合図でリーダーにと思う人に指をさす、でいいわね?」
全員が頷いているなか、1番年長になるフレイさんはこの決め方に苦笑いを浮かべていた。
「それじゃあいくわよ……せーの! はいっ!」
一斉に指を指す。 僕は自分で言った通りキャロに、シリクさんはフレイさん、テトラさんとガラシャさんは僕だった。
そしてフレイさんは僕に、キャロは……フレイさんを指差していた。
「というわけでマイセンさんにパーティリーダー決定でいいわね?」
誰も特に反対はしてこない。
「僕よりもやっぱりフレイさんの方がいいんじゃないでしょうか? まだ冒険者になりたてなんですよ?」
「マイセン君はみんなを引っ張ってくれればいい。 間違っていたりわからないことがあれば俺たちが教えればいいだけだ」
「だな」
押し切られる形で結局僕がパーティリーダーに決まってしまった。
「若輩者ですがよろしくお願いします……」
「ゆくゆくはクランリーダーも頼むぜ!」
「シリク、調子良すぎ」
みんなが笑う姿を見ながらも僕は1人、あまり笑えなかった。
そして明日麓に集合が決まって解散になる。
「マイセンちょっといい?」
みんなが宿屋へ戻っていくのを眺めていると、キャロが声をかけてくる。
「どうしたの? なんだかずっと上の空だったみたいだけど」
「うん、僕なんかがパーティリーダーで良かったのかなって。 キャロは反対だったんでしょ?」
僕の顔を覗き込んできて鼻を突いてくる。
「私はマイセンがリーダーで文句ないよ」
「でもフレイさんを指差していたでしょ」
そういうとキャロが顔を赤くさせてくる。
「もしかして妬いてくれてるのかなぁ?」
「え!」
「冗談、私はただ軍神の異名を持つ、フレイさんのパーティリーダーの指揮を見てみたかっただけ……って、マイセン聞いてる?」
僕がヤキモチを妬いてた? そんなはずない。 だってキャロは僕の仲間なんだから……
「うん、聞いてるよ。 そうなんだ」
キャロと別れて下宿先に戻るあいだも考えながら戻った。
次話更新は明日になります。




