増える仲間
アラスカ様に改めて『気』というものだと教わってから数日が過ぎた。
未だ人を殺した事をひきづっていて、ダンジョンに近寄りたくない。 そんな僕をキャロは嫌な顔1つしないで毎日会いにきてくれる。
ここ数日はキャロと町を散歩する日々だった。
「そういえばキャロって宿屋暮らしだったよね。 お金は大丈夫なの?」
「この間のバグベアのお陰で結構余裕あるから大丈夫」
キャロはそうは言っていたけど、実はガラシャさんからキャロの事を聞かされている。
ガラシャさんとは、あの時の3人の冒険者の中にいた女性。 そのガラシャさんから、いつ立ち直るかわからない僕に合わせるため、キャロは馬小屋で暮らしている事を教えてくれていた。
僕のせいだ……
「キャロ、そろそろ落ち込んでばかりじゃダメだと思う。 だから、明日からまた竜角山に行こうと思うんだ」
「吹っ切れた?」
「正直まだ完全じゃないけど、いつまでもこうしてばかりはいられないでしょ」
ふーんとキャロは僕の顔を見つめてくる。
「どうせガラシャさんから何か聞かされたんでしょ」
「い! え? ち、違うよ」
「はぁ……嘘をつくならもっと上手くついてよね。 でも、私の事を気遣ってくれたのは嬉しいよ」
「そんなの当たり前だよ!」
キャロを見つめながらそう言うとキャロの顔が少し赤くなったように見える。
「だって、大切な仲間じゃないか!」
そしてキャロがずっこけたように見えた。
「なら久しぶりに麓に下見にでも行く?」
「うん、そうしよう」
キャロに手を握られて走り出して、僕もつられて後を追いかけた。
麓に着くとまだ冒険者で溢れていて、クランに入っていない冒険者たちはどこかにお試しで入らせてもらったりしているみたいだった。
これはキャロが「仲間の人数もクラスも理解してないうえに、冒険者になりたての新人とかも気にしないと?
そんないい加減な人たちに命を預けるなんて私には考えられない」って言ったことが効果があったみたいで、あの時よりもみんな慎重になっているみたいだった。
「お、マイセン吹っ切れたのか?」
そう声をかけてきたのはあの時の3人の冒険者の1人で、シリクさんと言って盗賊をしている。
「元気になったみたいでよかった」
そしてもう1人が、狼獣人のテトラさん。 僕と同じく戦士で、特徴的なのは武器がモールを使っている。
「はい、明日からまたダンジョンに行こうと思っています!」
「マジか!? なら俺たちも一緒にパーティに入れてもらえないか?」
シリクさんにそう言われて、僕がどうしようかとキャロを見ると頷いてきたからお願いすることにした。
「よっしゃ! テトラ、早いとこガラシャ探して他見つけないようにするぞ!」
「わかった、急ごう」
すぐに戻るからってシリクさんが言って、ガラシャさんを探しに行った。
「何でとでも言いたそうな顔ね」
「うん、他人をあまり信じないキャロが珍しいなって思ったんだ」
「ちょっとそれ聞き逃せないんだけど?」
キャロがそう言って僕の腕をつねってくる。 いたひ……
それでキャロが言うには、あの危機的状況の時に見せた3人の態度なら仲間としても信用できると思ったかららしい。
「本当キャロにはいろいろ教えてもらって助かるよ。 今度お礼しないとね」
「え、お礼してくれるの? それじゃあ希望を言っても良いかな?」
「えっと……僕に出来る範囲でお願いします……」
キャロのお礼の希望はフレイさんに会わせて欲しい、だった……なので、アレスさんに一応確認してみるとだけ答えておいた。
その話が終わって少し沈黙の間ができた時にシリクさんたちが戻ってくる。
「いやぁ、ギリギリセーフだったぜ。 危なくパーティ決まるとこだった」
「あれほぼ決まってたわよ」
「ほぼ、なら大丈夫。 な、シリク」
今の会話を聞いてパーティ組んじゃって大丈夫なんだろうか、すごく心配になってきてキャロを見ると、キャロはやれやれってポーズをとってみせてきた。
次話更新は明日の朝6時頃です。




