気(オーラ)
「気で斬る!」最終話です。
朝日に照らされて目が醒めると僕はベッドの上に寝ていた。なんだかひどい夢を見ていた気分だ。
「どう? 気分は落ち着いた?」
「ウヒャオゥ!」
急に声が聞こえてびっくりして声の方を見るとキャロがいた。
「キャロ!? なんでここに?」
「なんでって、一晩ずっとこうしてついていた人に言う言葉?」
こうして? あ……
僕はキャロの手を握っていた。
「もしかしてずっと?」
「うん、ずっと」
「ゴメン!」
「別にいいけどね」
キャロがそれをどういう意味で言ったのかはわからなかった。
「起きたのなら冒険者ギルドに行こう? みんな待ってるはずだから」
キャロに手を引かれながら冒険者ギルドに顔を出すと、リセスドさんと3人の冒険者もいて、僕の姿を見ると会釈したり頷いたりしてくる。
「マイセン君おはよう。 今日の朝食は少し遅くなりそうよ……」
「少年、君がやった事は間違っていないぞ」
「マイセン君、あまり自分を追い詰めないでくださいね」
ヴェルさん、ウルドさん、スクルドさんが僕を慰めてきて、職員の作業に戻っていった。
ギルドマスターのオーデンさんが来ると僕とキャロ、そしてリセスドさんと3人の冒険者を連れて別室に通される。
「まず昨日のうちに話はここにいる全員に聞かせてもらった。 話も一致したから君に罪は無い。 ただしここからが問題だ……」
そういうとオーデンさんが入ってくれというと、アレスさんが入ってきた。
「よう、マイセン! やっぱ問題が起きちまったようだな。 んでここからは俺がお前に尋ねる」
アレスさんが僕にどうやって2人の冒険者を倒したのか聞いてくる。 なので僕は素直に気配を感じ取れることと、その気配を絶つ事ができる事を話した。
「気配を絶つ……ねぇ。 まぁお前の言う事が嘘じゃないのは俺自身もわかってるから安心しろよ。 手っ取り早く聞くぞ、それを俺とオーデンの前で見せてみろ」
「見せてみろと言われても、加減ができません!」
「そういうと思ってな、ちゃんと相手は選んである」
そういうとオーデンさんが合図をすると、驚いたことにアラスカ様が姿を見せた。
「君は……マイセンだったな。 君が騎士魔法のような力を持っているというのか」
「まぁここはアラスカ様が実際に相手をしてみて見極めてください」
オーデンさんがそういって、さっそく移動してアレスさんの訓練場まで移動した。
「念のためマイセンには木剣でやってもらうぞ。 アラスカ様は攻撃はしないからそのままで構いません」
「そんな! なんだか失礼じゃないですか!」
「いや、私も長いこと生きているから色々な力を持つ者を見てきている。 未知の力を見る場合は、念には念を入れる方が私もいいと思う」
アラスカ様にまでそう言われると返す言葉もなくなって、仕方がなく木剣を手にしてアラスカ様と向かい合う。 まさか7つ星の騎士団のアラスカ様と手合わせできるなんて夢のようだ。
「さぁ、君の言う気配を絶つというものを私に使ってみたまえ」
「はい! よろしくお願いします!」
僕の真正面には真剣な眼差しのアラスカ様がいて、正眼の構えでアラスカ様の気配を感じとる。
「凄いな君は……数日前に冒険者に成り立てであれば、私と向き合うだけで立っていられなくなる者がほとんどだというのに、すごく落ち着いている。 邪魔をした、打ってくるがいい」
「それでは!」
アラスカ様の気配を感じてその気配を絶つ……自然と一番適した武器の振り廻しを身体が行ってくれる。
「ハァッ!」
振った直前にアラスカ様が躱そうとする気配を感じたけれど、間に合わずに振り下ろした。
「これは凄いな……」
その一振りでアラスカ様が見抜いたように驚いた表情を浮かべた。
「わかりましたか?」
オーデンさんが僕に止めに入って、アラスカ様に尋ねる。
僕もこの力がなんなのか知りたくて耳を澄ませていると、アラスカ様は今の一撃は騎士魔法の複合のようなものだと言ってくる。
つまり、気配を通じて生物の気配を感知し、相手の気配を感じとって予測しているらしい。 そして最後の攻撃に関しては騎士魔法で言うところの防壁に近いものを剣を通して攻撃に転換して使っているという。 つまるところ『気』で斬っているそうだ。
はっきりいって僕にはさっぱり意味がわからなかった。
「我々、7つ星の騎士団の使う力が『防』であれば、マイセンの使う力はまさに対極に位置する『攻』と言ったところだな」
この僕の持つ『気』の力はあっという間に冒険者たちの間に広まり、より妬む人と寄りついてくる人とに分かれていった。
次話更新はお昼頃を予定しています。




