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戦いの終わりに……

 ゼノモーフの女神? の『(オーラ)』は既に捉えてある。

 加えて限界領域(リミットリージョン)の中、スローモーションでゼノモーフの女神? は接近してきている。

 そして居合斬りは『(オーラ)』が読める距離にいれば、当てずっぽうに一閃しても狙った『(オーラ)』を絶ち切れる。



 僕の言葉が届いて慌てる様子を見せたけどもう遅い。

 より正確に『(オーラ)』を感じる為に目を閉じた。



 チャキ……


 ——シャキン


 カ、チン……


 鞘から僅かに(キャロン)を抜き、抜刀し一閃。 そして即座に鞘に収める。



 目を開くと眼前までゼノモーフの女神? の姿が迫っていた。

 だけど既に『(オーラ)』は感じない。



 倒した。 倒せた……そう思った直後だ。


 不意に鞘を掴んでいた左手が勝手に動きだしてゼノモーフの女神? だったモノの首を掴む。


 そして……


 握り潰した。



 そこまでする理由があるのかと思ったら、地面に崩れ落ちたゼノモーフの女神? から僅かな『(オーラ)』を感じとれる。

 徐々に『(オーラ)』は薄まっていき、そして今度こそ完全に『(オーラ)』を感じられなくなった。




 そこで限界領域(リミットリージョン)を解く。

 というよりも僕の限界だった。



 崩れ落ちそうになる僕の体をディアさん……【守護の神ディア】様が受け止めてくれる。



「……やっぱり神様には居合斬りは通用しなかったみたいでした」

「貴方は、一体何をしたんですか!」


 せっかくディアさんが兜を外して素顔を見せてくれているというのに……

 【守護の神ディア】様の姿が背景も真っ赤に染まっている。

 どうやら目からも出血しているのだろう。


 僕を呼ぶキャロの悲痛な声も遠くから聞こえてくる。


 おかしいな……

 だってキャロは目の前にいるんだもん。


 ああ、そうか……


 僕は僕自身の『(オーラ)』が弱まっていくのに気がついた。


 今まで気にしたことがなかったけど、どんどん小さくなっていくのがわかる。


 僕はここで死ぬ。

 ごめん、アラスカ……約束、守れないかもしれないよ……


 最後に魂抜きの籠手に願う。

 (キャロン)を……キャロをここに置き去りにはできない。



 どうか(キャロン)がアラスカの元に届きますように……



 そこで僕の意識は途絶えた……









 マイセンの切断した腕がくっついた事に驚いたけど、その直後にはゼノモーフの女神がマイセンの足元に転がっていた。

 そしてその直後、マイセンの全身から血を流して倒れるところを【守護の神ディア】が抱きとめてくれている。

 本当なら私が受け止めたかったけれど、ゴーストの私の腕はマイセンの体を素通りしてしまった。



「……やっぱり神様には居合斬りは通用しなかったみたいでした」

「貴方は、一体何をしたんですか!」


 限界領域(リミットリージョン)を知らない【守護の神ディア】。


 徐々に薄れていくマイセンの生気に私は彼の名前をただ叫ぶしかできなかった。



「……貴方は立派に使命を全うしました。 安らかに眠ってください……」

“マイセン! 死んじゃダメ! ねぇ! 貴女は神様なんでしょう? 彼を、マイセンを助けてよ!”


 無茶な事を言ってるのぐらい自分でもわかっている。

 人種の神々は元々ベースとなる神となる以前の肉体のまま神格を得る。

 だから今目の前にいる【守護の神ディア】に他人を治癒する力なんてあるはずない。



「申し訳ありません……」


 眠っているようなマイセンの姿を眺めていると、マイセンの左手が動きだす。

 ブチっと留め具を外して【守護の神ディア】に(キャロン)を差し出してきた。



「コレをどうしろというのですか、魂抜きの籠手」


 受け取るように手が動いて、【守護の神ディア】がワケがわからないまま受け取ると魂抜きの籠手が地面に文字を書きはじめる。



『アラスカの元へ』


 マイセンはどうやら神々ですらわからなかった、魂抜きの籠手の秘密がわかったのかもしれない。

 だって(キャロン)をアラスカの元へなんて、マイセンの意志以外考えられない。


 マイセンの遺体を地面に下ろして【守護の神ディア】は(キャロン)を持って願いを聞き遂げようとしだす。



“待って! マイセンの遺体も運ばないのなら(キャロン)は側に置いておいて! 私も彼の側にいる!”

「……無理そうです……かなり強力な強制力が働いていて抗えそうにありません。 恐らく魂抜きの籠手の力でしょう」


 必死な表情を見せる【守護の神ディア】が嘘をついているようには見えない。

 それでもなんとか方法はないか考えようとした矢先にまた大きく揺れはじめる。



「残念ですがここは先に彼の願いを聞き遂げましょう。 抗えば抗うほど事態が悪化していくように見えます」


 確かに、マイセンの願いである(キャロン)をアラスカの元に運ぶのが遅れれば遅れるほど、地鳴りや崩落、揺れが酷くなってきているような気がする。



“マイセンの馬鹿! バカバカバカ! この格好つけ! すぐに助けを呼んでくるんだから!”


 言いたい事を伝えた私は(キャロン)の中に戻った。


 初めて会った頃からそうだった。 (マイセン)はいつだって自己犠牲を厭わない、そんな人だった。


 血で真っ赤に染まりきった(マイセン)を残して、私は【守護の神ディア】とこの場を後にした。




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