ゼノモーフの女神? の狙い
一瞬の出来事だったけど伸ばしてくる手を『気』で感じとったため素早く躱したけれど、直後にガンっと音がしてディアさんが防いでいてくれていた。
「予測も使えるのですね!」
「いえ、僕の場合は『気』で相手の動きを予測してます!」
『小賢しやっ!』
更にゼノモーフの女神? が攻撃をしてくるものの、ディアさんも神の力である予測で確実に防いでくれる。
「元より私は盾、守護するのが役割です!」
ゼノモーフの女神? も懲りずにディアさんの盾目掛けて攻撃を繰り返していて、まるで僕は眼中にない様に見える。
いや、むしろ僕の攻撃を誘っている様にも見えた。
何か狙いがあるのか? というよりゼノモーフの女神? という割にたいして強くない気もする。
そこはたぶんディアさんの盾が凄いからなんだろうけど、それにしたって見ている限り殴りつけているだけだ。
当然僕には神様の強さは知らない。 たぶん強い存在なんだろうとは思うけど、【愛と美の神レイチェル】様を見る限りでは神様にもそれぞれ得意分野がある様に思える。
となると案外ゼノモーフの女神? もゼノモーフたちの神様であるという以外では、ゼノモーフとあまり変わりがないのかもしれない。
とはいえあの繁殖力と攻撃性は脅威ではあるけど。
とにかく何か狙いがありそうではあるけどこのままというわけにもいかない。
「キャロ」
勝手な考えはマズいだろう。
「誘ってる様なワザとらしい隙が多く見えるんだけど、どう見る?」
“え! そうなの!?”
キャロにはそうは見えなかったらしい。
耳に届いたのか、ディアさんも「え!?」と声を上げて僕の方を向いた。
僕に言われて初めてキャロとディアさんは気づいた様だ。
“純粋にマイセンの『気』を読む力が神と同等かそれ以上に達している、が妥当なところだと思うのよね”
僕の思い過ごしなのか?
その時また部屋全体が揺れはじめ、天井からは瓦礫も落ちてきだした。
建物全体もゴゴゴっと唸っていて、崩落は刻一刻と迫ってきている様だった。
このままではラチがあかないどころか生き埋めになってしまう。
次の隙を見計らってゼノモーフの女神? に攻撃をするフリをして見せた。
すると明らかにおかしな行動を取る。 まるで左腕を斬られようとした。
「わかったぞ!」
“わかったわ!”
僕とキャロが同時に声を上げる。
「ディアさん! 狙いは籠手です!」
そう、たぶんワザと斬らせてさっきの様に腕をくっつけるんだろうけど、その腕を魂抜きの籠手のついた僕の腕を狙っている。
「なるほど、そういう魂胆だったのですね、ですがこの籠手は神々すら凌駕するモノ、身の破滅を招きますよ!」
『ならば妾にそれを寄越せ、そうすれば妾を破滅させれるのだろう?』
なぜかゼノモーフの女神? は自信ありげだ。
なので思い返してみる……ディアさんは破滅破滅と言っていたけど、実際には不死王を除いて僕の不利益に働いたためしはない。
崩落だって僕が仲間を傷つけるのではと思い、一緒に来ないで欲しいと願ったのを籠手が叶えたのかもしれない。
もしかしたら魂抜きの籠手は所有者の願いを聞き入れるモノで、ただその願いの叶え方は籠手に左右されるのではないか?
そう考えればキャロに触れられたのだって納得がいくし、キャロのお父さんの時とディアさんの時も救いたいと思ってその通りになった。
ただ明らかに不明なのは不死王だけだ……まさか……僕が潜在的にアンデッドに対して脅威を感じていたから?
だとしたらあのタイミングは……ゼノモーフが優先されただけ?
そう考えれば一応納得もいく。
刀をもう一度地面に突き立てる。
「ディアさん、腕を僕に!」
「何をするつもりです?」
「アイデアが浮かんだんです!」
僕が思案している間も攻撃を防いでいてくれたディアさんが、次の攻撃を受け止めた後僕に腕を素早く渡してきた。
今更可能なのかわからない。
それでもやるだけ試してみるしかない!
切断した腕を通常ならくっつくはずがないのにくっつけて、くっつけと願ってみる。
「痛っ!」
すぐに止血のために縛っていた紐をほどくと血液が流れていく感覚がし痛みが襲う。
痛みが治まると腕がくっついてグーパーさせると指もちゃんと元どおりに動く様になっていた。
もしこれで僕の想定通りなら……
刀を地面から引き抜いてゼノモーフの女神? に切っ先を向ける。
「お前を倒してゼノモーフはこの世界からその存在を無くしてやる! それが僕の願いだ!」
『いくらその籠手を手にしようが、人間如きにかりそめとはいえ神に勝てると思っているのか!』
「『気』が読めれば神様だって殺してみせる。 これをお前で証明してやる!」
言うが早いか刀を鞘に収めた。
ゼノモーフの女神? も一抹の不安を覚えたのか、先ほどとはかけ離れた動きで翻弄しようと動き始めた。
しかし速度はあの【闘争の神レフィクル】様と比べたらはるかに遅い。
【闘争の神レフィクル】様は限界領域の中でも、普通に動いてきた。 普通、と言うとおかしく感じるかもしれないけど、少なくとも動きがスローモーションにはなっていなかった。
『人間如きに妾のこの速度についてこれるのか?』
この時すでに僕は限界領域を使っている。
無駄口を叩かずに攻撃していれば倒されたのは僕だったかもしれないものを……
「驚いたよ、でも……【闘争の神レフィクル】様と比べたらスローモーションだ」
ディアさんはさすがにこの速度の世界にはついてこれていないようで、ほぼ止まったような状態だった。




