【守護の神ディア】の復活
最終話間近!
今僕の目の前には【守護の神ディア】様が立っている。
今の姿からだと女性だったのすらわからないほど、ガチガチの武装姿だ。 当然頭もフルフェイスの兜をつけている。
出血が続く腕は痺れて多少痛覚がなくなっていたため、急いで紐でキツく縛りつけた。
かなりの出血で意識が多少朦朧としているけど、やれることぐらいはしないとダメだ。
ディアさん……【守護の神ディア】様がフェイスハガーと戦っている後ろから、僕自身もいつ襲われても対応できる様に身構えておく。
このフェイスハガーはやはり通常のものとは違い、酸を吐き出したりもしてくる。
しかし【守護の神ディア】様の装備するものはそんな酸を受けても全く溶けたりはしない。
だけど僕が見てもわかるほど【守護の神ディア】様はお世辞にも強くなかった。 言い方は悪いけど硬いだけだ。
手助けしたいところだけど片腕を肘から失って、鞘に手が添えられず居合斬りは放てそうにない。 しかも剣圧と衝撃波は両手で構える必要があってこれも使えそうにない。
そうなると『気』で斬るか、直接斬る以外に方法がないわけだけど、直接斬るのも片腕だけで刀は上手く振れそうにはなかった。
それでもこのままただ黙って見ているわけにはいかない。
「僕も戦います」
【守護の神ディア】に飛びかかってきたところを『気』で斬りつけて横に立ち並ぶ。
『気』で斬られた指のような足が切断されたけど、不死王ほどではないもののすぐに再生されていく。
キャロも鎌を構えて頷いてきた。
「……正直に言うと神威が全くなくて、【守護の神】としての力しか働いていないようなので助かります」
“それはそうですよ、【守護の神ディア】と言ったら100年以上も前に死んだとされていて信仰している人はいませんから”
「そういうことでしたか……」
兜をつけているから表情はわからないけど、相当落ち込んでいるように見える。
それでも執拗に飛びかかってくるフェイスハガーの攻撃を、盾で弾きながら色々と聞いてくるところはさすがだとしか思えない。
「このような状況なのに他の神々は一体どうしているのですか?」
「創造神様がニークアヴォに囚われたらしく、神界よりも今は安全な信仰の強い土地に移動して人種たちに守られているようです」
「ニークアヴォが!? 何故です!」
“それはココを出たらセーラム女帝にでも聞くのがいいと思います。 私たちはその時代に生きていないんですから”
「あるいわウィンストン公国にいる【闘争の神レフィクル】様か、あ、【愛と美の神レイチェル】様が今なら僕の故郷のピース合衆国の霊峰の町にいますよ」
「まさか、あのレフィクルが【闘争の神】に!? ピース合衆国……?」
どうやらディアさんの記憶は相当昔なんだろう。
“ちなみに【守護の神】に変わって、今は【保護の神ロルス】と言うドラウの女神がいます”
「私の代わりの神……しかもドラウが人種の神……な……な、なぜ? ドラウは【ドラウの女神アラクネー】に属していたのではないんですか!?」
“ドラウもドゥエルガルもオルクスも今は人種です。 100年ほど前、マルボロ王国第4代女王ララノア様により加わりました”
キャロ、これ絶対に楽しんでるだろう……
「2人とも! その話は後にして!」
“一応私、人じゃなくてゴーストなんですけど?”
「私も一応神のはずなんですが」
そこ、今は突っ込むところじゃないでしょう!?
そんなくだらないバカな事をしている間にフェイスハガーが飛びかかってくるのをやめていた。
そして、ある場所を目指して動きはじめる。 その先にあるものは……僕の切り落とした腕が落ちている場所だった。
「マズい! ディアさん! アレは魂抜きの籠手と言って……」
「魂抜きの籠手!? なぜそんなものがココにあるんです!」
ディア……【守護の神ディア】様はどうやら魂抜きの籠手の事を知っているようだった。
「鍵だと聞いたんです、それで……」
「アレは人の手どころか神々の手にも余るものです! アレを奪われてはいけない!」
言うが早いか走り出してフェイスハガーより先に手にしようとする。 しかしどう見ても間に合いそうにない。
“マイセン……もしかしたら鍵ってこのための事だったんじゃないかしら……”
ここに来るためにあの籠手は必要があったかといえば、特に必要なかった気もする。 ここに繋がる抜け道だってタダのシークレットドアだったし、最後のだって別に壊そうと思えば壊せなくもなさそうだった。
「まさかこれも全てニークアヴォが仕組んだ罠だった!?」
“マイセン! わからないけどアレを取られたら多分ダメ!”
「分かった!」
意識を集中して限界領域を使ってみようとするけど、集中しようとすると腕の痛みで阻害されてしまう。
「クッソォォ! 集中出来ない!」
(ならば念動力を使うんだ。 さぁ、腕を伸ばすんだ……)
不意に僕の脳裏に声が聞こえてくる。 まぎれもなく史上最強と言われたセッター様の声だ。
言われた通り、刀を地面に突き刺してから僕の腕に向けて右手を差し出す。
(来いと念じるんだ。 私の魂を受け継ぐ君ならきっとできる!)
言われた通り来いと念じると、床に落ちた僕の腕がピクリと動いた。
(もっと強く!)
必死に来いと念じると、腕が僕の元に宙に浮いて、そして吸い付くように手に握られていた。
「やった!」
魂抜きの籠手のついた僕の腕が僕の元に来ると、当然ながらフェイスハガーが方向を変えて僕の方に向かってくる。
片腕しかない僕には腕を持っているため、刀を手にできない。
“任せて! 我が眼前の敵を爆せよ! 火球!”
キャロの詠唱の声が聞こえて、フェイスハガーが爆発したように見えた。
しかし爆風が晴れると、傷一つ追う事ないままフェイスハガーは執拗に僕に迫ってきた。
ほぼ書き終えました。
長かった……
更新ペースを上げてのラストに入ります。




