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嘘や噂

「冒険者仲間」最終話です。

次話からダンジョンパートになります。

 今朝朝食代を貰いにヴェルさんのところへ行くと、僕の顔を見ただけで顔を赤くさせる。



「おはようございます。 昨日からどうかしましたか?」

「は〜……マイセン君、今晩少しお話をしましょうね」

「わ、かりました……」


 また怒られるのかな……



「それと背負袋(バックパック)にあったものの下取り分よ」

「ありがとうございます」


 うん、銀貨5枚だ。 やっぱりバグベアが凄かったんだね。


 冒険者ギルドを出て〔ヒヨコ亭〕で朝食を食べる。 ソティスさんもあれ以来あまり話しかけてこなくなったけど、食べてる僕を見つめているから食べにくい。



「えっと、そんなに見つめられてると食べにくいんですが……」

「え! そんなに私見てた? ご、ごめんね」


 ソティスさんもそう言って顔を真っ赤にさせてくる。ヴェルさんといい、ソティスさんといい、一体どうしたんだろう?

 とりあえず今日こそは竜角山に行く約束を守らなきゃ。



 なんだかぼーっとしたままのソティスさんと別れて冒険者ギルドの前まで行くと、キャロンさんが待っていた。



「マイセン、おはよう」

「おはようございますキャロンさん」

「仲間になったのだからキャロンって呼んで、それから敬語もやめよう。 えっと、親しくなったらキャロでもいいわ」

「うん、わかったキャロ」


 直後、ブボッと顔を真っ赤にさせて、いきなりそう呼んじゃうんだとか言われて、慌ててキャロンって言い直したんだけど、もうキャロでいいって言われる。



「それじゃあ今日はどうするの?」

「うん、竜角山にこの後行こうと思ってる」

「はい、マイセン失格」

「え?」


 どういうことか聞くと、仲間にウィザードを連れる場合、前もって危険地帯に行く可能性があるのなら話しておくか、行く前に確認を取るものらしい。

 それでもって、ウィザードもどういう仲間かを知っておいて、魔法は選ぶものなんだって。



「そうなんだ、勉強になるよ。 えーっと、じゃあキャロ、竜角山に行くけど魔法の準備は大丈夫?」

「マイセンはきっとそう言うと思ったからバッチリ準備しておいたわ」




 竜角山に向かってキャロと一緒に並んで歩く。 たったそれだけのことなのに心強く感じる。



「仲間がいるってなんかいいもんだね。 改めて仲間になってくれてありがとうキャロ」


 お礼を言ったつもりだったんだけど、キャロまでヴェルさんやソティスさんのように顔を真っ赤にさせて、なるほどなんて独り言を言ってる。





 麓まで行くと毎度同じようにクラン員募集を呼びかける人たちや、これから竜角山に向かう人たちでごった返している。


 僕が姿を見せるとこれまたいつも通りヒソヒソやりだす。 そして僕の横に(キャロ)がいる事に驚く姿なんかもあったけど……



「よぉ! そんな女誑しとなんかやめて俺らのクランに来いよ」


 そんな嫌がらせをしてくる冒険者も出てきる。



「ふぅん、詳しく聞きたいのだけど」


 キャロがフードを退けて顔を出してそう尋ねる。

 まさかキャロがその男の人の話に乗っかって立ち止まるなんて思いもしなかった。 でも考えてみれば、僕と2人なんかよりずっと安全だもんね。



「もちろんだ、何でも聞いてくれ」


 キャロがなぜか僕の背負袋(バックパック)を掴んで離さない。 僕もその場に残って話を聞かないとダメみたいだ。



「それじゃあ仲間の数とウィザードの人数が知りたいのだけど」

「仲間の数? 安心しな20人以上はいるぜ! ウィザードは何人だったかなぁ」

「まだ冒険者なりたてでも?」

「そんなの問題ないぜ!」


 僕がいるのもあってか徐々に人が集まってくる。 キャロもなんだか周りを気にしながら質問していた。



「つまり、仲間の人数もクラスも理解してないうえに、冒険者になりたての新人とかも気にしないと?

そんないい加減な人たちに命を預けるなんて私には考えられない」


 キャロが少し大きめな声で周りにいる人にも聞こえるように言った。

 これには当然誘ってきた男の冒険者も黙ってない。



「それでその女誑しの方がいいって言うのか?」

「ええそうよ? もっとも正確な情報も集められないで、嘘や噂を信じるような冒険者に言われたくないけど」


 周りで聞いている人たちがざわつき始める。 僕は何が何だかわからずその様子を見ていた。



「じゃあなんだ? そいつは女誑しじゃないっていうのか?」

「彼としっかり向き合ってみれば? たぶん貴方の想像を超える返事が返ってくるわ」


 キャロの意図が全くわからない。 そしてそんな僕に男の冒険者が睨みつけながら聞いてくる。



「どうせ、のけ者にした俺らの事を恨んでやがんだろ?」

「い!? 別に恨んでなんかいません。 むしろヴェルさんやウルドさん、スクルドさんたちに良くしてもらってるから僕が恨まれてるものだと思ってました」

「ほら、ね?」


 辺りが一瞬にして静まり返った。



「行こうマイセン」

「え、あ、うん……」


 キャロに引っ張られながら、僕はみんなのいる方に頭を下げつつ竜角山に入っていった。




次話更新は書き溜めが溜まりに溜まってきてるので、夕方頃に更新します。



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