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玉座の間

 何が起こったと言うんだ?

 不死王はたった一言『死ね』と言っただけだ。 それだけで埋め尽くす勢いでいたゼノモーフが死に絶えた。



「今のは……」


 不死王に聞こうと振り返った瞬間、そこでも信じられない光景が待っているとは思いもしなかった。


 俺が振り返った先、不死王は木っ端微塵になっている……



「心配するな、すぐに戻る」

「そ、そうか」


 修復途中の顔の口にあたる部分だけで喋ってきた。


 驚いてみている間もどんどん修復していき、しばらくすると傷一つない状態で元に戻り木っ端微塵になった際に脱げ落ちた服を着ている。



「ふむ、やはり原初高位魔術は失敗が多いか」

「失敗すれば今みたいに吹き飛ぶのか?」

「そうだな……貴公にわかりやすく言えば、安全装置の無い魔法原初の魔法だ」

「先ほどセーラムも使ったようだが、失敗していれば……」


 不死王がポウと言いながら握った手を開いて見せてくる。



「私の場合は失敗しないで扱えるのしか使ってないけどね」


 いつの間にかセーラムもいた。



「……つまり外はもう片付いたと言うことか」

「 やったのは私じゃないけどね」

「ここも片付けたのは俺じゃあないさ」


 見たところ不死王は敵ではなさそうだ。



「それで? この後はどうするのだ、我が友よ」

「うん、マイセンたちは先に行ったんだよね?」


 俺が頷くとセーラムは先へ進みだし、その後を当然のように不死王もついていく。



 随分と強力な助っ人が来てくれたものだ。







 そんな事はつゆ知らず、俺は魂抜きの籠手に誘われるまま歩いていく。



「いったいどこまで行くんだ?」

「俺に聞かれても困るよ」

「籠手が喋れれれば聞けるんですがな」


 血糊もない綺麗な方を奥へ奥へと迷うことなく進んでいく。

 キャロは今は(キャロン)に戻って休んでいるみたいだ。



「ん……」

「あ……」

「これは凄いですな……」

グア……


 辿り着いた場所は城の中だというのに、壁なんかがまるで生き物の体内のようなおどろおどろしい姿に変わっている。


 これは……まるでダークゾーンの先を抜けた場所みたいじゃないか。


 ディルムッドも思い出したようだ。



「方角は間違ってないようだね」

「そうなんですかな?」

「ああ、間違いない。 この先のどこかにゼノモーフの女王(クイーン)はいるだろう」


 慎重に気をつけながら進んでいく。


 あの時、メーデイアさんを先頭にたくさんの腕利きの冒険者がいたにも関わらず壊滅寸前まで追い込まれた。

 そしてキャロも……



「見たところ、ベースは城を使っているようですな。 となると玉座の間にゼノモーフの女王(クイーン)が居る、で間違いないですな」


 セドリックはそう言ったけど、俺は違うと思う。 なぜならそれだけだったら、ここまで来るのにこの魂抜きの籠手が必要で鍵である理由がない。



「マイセンが何か言いたそうだが、とりあえず玉座の間に行ってみればわかるさ」


 セドリックは首を竦めてみせる。



「セドリックはあいつらのこと……前世の知識で知ってるんでしょ?」

「ええまぁ、といっても映画……作り話なんですがな。 まさか本物に出くわすことになるとは思いませんでしたな」

「なら弱点とか知ってるんじゃないの?」

「作り話の中ではですがな、ゼノモーフは完全なる生命体と呼ばれていたほどなんですな、むしろここまで追い詰められるこの世界が凄いと思いますな」


 つまり弱点らしい弱点はないのか。 まぁ今更なんだけど。



 玉座の間、おそらくだった場所が見える位置にたどり着く。

 そこは一瞬初めてゼノモーフの女王(クイーン)に出くわした場所かと思うような作りになっていて、床は卵だらけになっていて驚いたことにゼノモーフの女王(クイーン)が10体もいる。

 加えてそれを手伝うゼノモーフも大勢いたが、ディアさんの姿は見当たらなかった。


 もちろんここに来る段階で『(オーラ)』が無数にあることには気がついていて、みんなにも教えてある。



「こいつは驚きましたな……まるでゼノモーフ生産工場ですな」

「どうするマイセン」


 戦うかをディルムッドが聞いてくる。


 あの数を相手に俺とディルムッドとセドリック、それにガーゴだけでは苦戦は必須だろう。

 せめてこの場にセーラムとリセスドもいてくれれば良かったんだけど、未だに来る気配がない。

 それ以前に2人が無事かもわからない状態だ。



「あの卵全部からフェイスハガーが飛び出てこられたら、組みつかれた時点で終了ですな」

「一度戻ってセーラムとリセスドが無事なら連れてきて改めて挑みたいところなんだけど……」


 俺が引き返そうとすると誰かに手を引っ張られているかのように、魂抜きの籠手が抵抗してくる。



「少しは状況を把握するぐらいの知恵を持って欲しいところですな」


 籠手を見ながらセドリックが言ってくる。



 引き返そうとさえしなければ魂抜きの籠手はおとなしくしてくれるようだ。 それなら……



「俺は無理だからリセスドとセーラムの様子を見てきてくれないかな? できれば反対側の血糊がいっぱいあった方も調べて欲しいんだけど」


 やっぱりあの血糊の先が気になる。

 魂抜きの籠手がここに連れてきたということは、この先にディアさんはいるんだろう。



「もしかしたらドワーフの生き残りがいるかもしれない」


 ここはドワーフたちの本拠地だ。 いくらゼノモーフが来たからといっても全滅はしてないはずだ。

 きっとあの先に行けばいるに違いない。 そう思いたかった。



「1人にしたらお前の意思じゃなくても突っ込む可能性がある。 その魂抜きの籠手を止めることはできないが、少なくともマイセン、お前1人に戦わせることにはならないだろう?」

「そうですな、それにドワーフたちが生きていたとしても戦力になるかは怪しいところですな」

「お前が言うか?」


 ディルムッドはどうやらセドリックのことを戦力外に見ているようだ。



「まぁ普通に戦えばそうなるでしょうな。 ですがな、最悪の場合は異世界兵器を使っても構わないと一応許可は貰っていましてな」


 そう言うとセドリックがバックパックから何かを取り出して組み立て始めながら話を続ける。



「こう見えて生前は特殊部隊に所属してましてな、そういったものに詳しいもんでこの世界でも作り方なんかも知識にあってですな。 もちろん精密なものだから鍛冶の神には手伝っていただきましたがな」


 セドリックの言っていることは俺にはさっぱりちんぷんかんぷんだった……

 そもそも特殊部隊って何?



 で、当初はサハラ様が現れてそういったものの作製を禁じられていたのだそうだ。 しかしゼノモーフの登場によりそうも言ってられなくなって、セドリックのみが扱いゼノモーフ討伐するまで、という制約で創造神から許可が下りたのだそうだ。

 ちなみにここで初めて俺の持つ(キャロン)の製造方法をセドリックに教えてもらって作った事を知った。




申し訳有りませんが来週はお盆休みをいただきます。


なお構想中ですが、次回作は赤帝竜(ルースミア)が主人公の話になるかもしれません。

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