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リセスド

「さて、儂の仕事はここまでじゃな」


 腰をトントンしながら辺りを見回している。



「不死王よ、後は頼んだぞ。 可愛い孫にかすり傷1つでもつけさせるようなことがあったら、貴様を友だとはもう思わんからな!」

「それはなかなか手厳しい。 だが友は失いたくないから努力はしよう」


 骨骨のお爺ちゃんはカッカッカって笑いながら私の頭を撫でてくる。

 バルロッサのお爺ちゃんは今は【死の神ルクリム】の代行者だから、これ以上先は手伝いたくても手伝えないんだって。 なので不死王を連れてきたみたい。



「でもそうすると不死王に迷惑はかからないの?」

「少なくとも大惨事(カタストロフィ)象徴赤帝竜(ルースミア)だったら喜ぶだけだと思うぞ」


 んーー、うん。 赤帝竜(ルースミア)なら向かってくる相手がいたら喜びそう。



「不死王は?」

「我か? 準備運動ぐらいにはちょうどよかろうな」


 象徴の人たちって思考回路がどこかおかしいよね。


 バルロッサのお爺ちゃんは名残惜しそうに髪がぐしゃぐしゃになる程撫でるだけ撫でた後帰って行った。




「さて、我は何も知らずにここまで連れてこられたわけだが……先ほど埋め尽くすほどいた魔物の群れは一体何者だ?」




 どうやら不死王、先の大戦でパパがいなくなった時からずっと不貞寝していたみたい。

 なのでパパが無事に戻ってきたことを話すと珍しく笑顔で喜んでる姿を見て、私はちょっとだけパパにヤキモチ焼いた。



「そうか! サハラは無事だったのか! それで? 今、我が友は何処にいる?」

「実はね……」


 ニークアヴォが創造神を封印したことなんかを手短に話して、最後にサハラが記憶障害を起こして何処かに行方知れずになったことを言うと、不死王はがっくりと肩を落として笑顔が徐々に無表情に戻っていく。



「貴公は探しにいかないのか?」

「本当は行きたいけど、赤帝竜(ルースミア)お姉ちゃんと【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者のアリエルお姉ちゃんが探してるし、この魔物のせいで人種が相当失っちゃって大変なんだ」

「つまりこの魔物を倒さねば我が友どころではないという事だな?」

「うん、パパなら記憶障害になっててもそう簡単に死ぬ事ないだろうからね。 それよりも早くゼノモーフをなんとかしないと、記憶が戻った時にパパを悲しませちゃう」

「そういう事なら喜んで手伝おう」

「先に行った仲間がいるから急いで追いかけないと」



 不死王の移動速度に合わせると私は加速(ヘイスト)を使わないと追いつけない。

 マナはゆっくりと回復していくけど、全力で戦うにはしばらく休憩が必要そうかな。




 そんな事を考えるとすぐにゼノモーフの群れが見えてくる。



「我が友はここで休んでいてくれればいい」


 そう言うと目を爛々と赤くさせてゼノモーフに近づいていった。






 確かゼノモーフ呼んでいたか? 血液が酸でできているとは我を愚弄するにもほどがある。

 そんな魔物で埋め尽くされたら、赤く滾る血を飲めなくなるではないか。



 我に気がついた1匹が向かってくる。

 伸ばした爪で切り裂いてやると、言われた通り赤くはない血が噴き出してきて、我の服を溶かし皮膚も焼いてくれる。

 もっとも既に修復しているが。



「だが問題はない」








 どれだけ倒しただろう。 先祖伝来のこの鞭のおかげで燃え尽きていくから死体の山ができる心配はないが、さすがに体力の限界が近い。 鞭を振る手に力が感じられなくなってきている。


 まだ俺には子に継承するまで死ぬわけにはいかない。

 ロミオ・イ・フリエタまで引くか……あそこなら町中に入れば巻ける。



「ぬっ!?」


 そう思った矢先だ。 俺の目の前に霧が迫り、それに触れたゼノモーフが次々と倒れていった。


 あの霧……意志を持っている。


 ゼノモーフに注意しつつ霧から目を離さないでいると、徐々に霧が晴れて人の姿が現れた。



「何者だ!」

「貴公はセーラムの仲間か?」

「手を組んでいるだけだ」

「いい返事だ。 名は何という?」

「俺の名はリセスド、リセスド=パーラメントだ」

「パーラメント? プラチナムの子孫か?」


 驚いた事に俺の目の前にいる奴はパーラメント一族の総始祖の名を言った。



「プラチナムは俺の先祖だ」

「なるほど、パーラメント一族とも我は縁があるらしい」

「名は名乗った、お前こそ何者だ」

「我は不死王、我が友セーラムの救援に馳せ参じた」


 不死王……聞いた事がある。 ヴァンパイの始祖だとか不滅の象徴と言われている魔物だ。

 セーラムを友と言うという事は敵ではないか。



「わかった、まずはこいつらをなんとかしてからだ」

「よかろう」


 不滅の象徴と言われている不死王の力は伊達ではなく、魔法とその爪を持ってゼノモーフを焼き殺し、切り裂いていく。

 だがその強さも卓越した戦士とさほど違いが見られない。



「キリがないな。 人間がこの数を相手によくここまで戦ったと称賛しよう」

「何かあるのか?」


 ニヤリと不死王笑ってみせてくる。



「10秒だ。 その間持ちこたえさせよ」

「了解した」


 何か打開策でもあるのだろう。

 不死王に近づかせまいと真空波を生み出す鞭さばきで広範囲に攻撃をする。

 横目で見るとセーラムが使ったような印字を不死王が組み始めていた。



「魔の原初にして元なる魔法。 今その力を解き放たん。 原初の力を顕現す……」


「死ね」



 不死王が発動詠唱を終えて一呼吸間をあけてからたった一言発しただけだった。

 それだけでここにあれだけいたゼノモーフ全部が糸が切れたように崩れていく。


 普段感情を顔に出さないようにしていた俺も驚きを隠す事ができなかった。




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