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【死の神ルクリム】の代行者と不滅の象徴

 ほぼ魔力を使い切っちゃった私は今にも途切れそうな意識の中、必死に救おうと向かってきているオル君を見つめる。


 オル君ごめん……



 もう既に私の身を包む黄金の鎧も消えて無くなってしまっている。 覚悟を決めた私は目をつぶってその時を待つしかなさそう。

 地面ではゼノモーフたちがまるで今か今かと待ち構えていた。



 そして……私の腕が体が掴まれて……


 え? あれれ、抱きかかえられた?



「このバカ孫がぁ!」

「お、お爺ちゃん!?」


 掴まれて諦めた私が目を開けるとそこにはバルロッサお爺ちゃんが私の事を抱えていた。

 バルロッサお爺ちゃんは、マルボロ王国のできる前、レドナクセラ帝国だったそれよりも更にはるか昔に魔導王国バルロッサだったころの王様だった魔導王バルロッサと呼ばれた人で、リッチになって今も生きている。

 そして今のバルロッサお爺ちゃんは【死の神ルクリム】の代行者でもある。



「ふむ、マナの闊歩か」

「なんで……?」

「可愛い孫が危ないとわかってのぉのぉとしてられるか! とりあえずこいつでも飲んでおけ」


 バルロッサお爺ちゃんと言ってるけど、別に本当のお爺ちゃんではないよ?

 私がバルロッサお爺ちゃんに出会ってから勝手にそう呼んでいたら、そういう関係になっただけ。



「うぇ……マッズ! なにこれすっごくマズい」

「そりゃそうじゃ、イモリの目玉に蝙蝠の羽、毒蜘蛛の毒に山羊の睾丸などなどを混ぜて作った儂特製の精力増強剤じゃからな、カッカッカ!」


 聞いただけで吐きそうなのに飲んじゃったよ。



「どうじゃ? 意識ははっきりしたじゃろ?」


 あ、本当だ。

 少しマナを体に通すと飛行(フライ)は問題なく使えた。



「せいぜい10パーセントといったところじゃ、無理せんであとは爺ちゃんに任せて大人しく見ておれ」

「ありがとうお爺ちゃん」


 カッカッカと笑うとバルロッサお爺ちゃんは地面に降りていく。

 当然ゼノモーフたちが一斉に群がってくるのだけど……


 全く攻撃を受け付けないんだよね。

 当然といえば当然なんだけど、リッチには魔法の武器、しかもそれ相応の魔力がかかったものじゃないとダメージを受ける事はないんだもんね。



「我もいるんだがな、我が友よ」

「あ、不死王まで、どうして?」

「決まっている。 我の数少ない友を失うわけにはいくまい?」


 不死王はリリスをヴァンパイアにしたヴァンパイアの真祖のような存在で、私に原初の魔法を教えてくれた友達。



「おい不死王よ! ちょっくら孫を連れて離れてくれんか」

「了解した我が友バルロッサ」


 不死王が私の手をとってロミオ・イ・フリエタの入り口の中に入り込み、危険を察知したオル君も慌てて急上昇していった。



「夜空に浮かびし数多の星々よ、流れる星のごとく降り注ぎ……灰塵と化せ! 流星(シューティングスター)!」


 長い呪文詠唱に加えて発動詠唱を唱えている間も、お爺ちゃんはインナーマウスに齧られ、尻尾で突き刺されていたけど気にする様子はなかった。

 だけど、発動詠唱が終わると慌てて結界魔法を使いだす。



 このお爺ちゃんが使った魔法は、流星群(メテオスウォーム)を強化させたもの。

 通常、流星群(メテオスウォーム)は燃える石粒程度のものが手から3〜4個ほど放たれて、それが指定した場所に飛ぶと爆発を起こして個々が火球(ファイヤーボール)のように更に爆発して広範囲を破壊するウィザード最強の魔法なんだけど、お爺ちゃんの場合はそれよりも威力と範囲が更に強化されたものなんだって。

 話で聞かされただけだから、見るのはわたしもこれが初めてなんだ。


 この魔法には大きな欠点もあるって聞いていたけど……



 発動詠唱を唱えた後、何かが起こった気配は感じられないんだけど、慌てて結界魔法をを使っている理由まではわからない。



 しばらくすると空から星が降り注いでくる。

 その降り注ぐ先はお爺ちゃんの居る場所一体を目指していた。



 10や20じゃ効かない数の星が地上に降り注ぐと1つ1つが爆発を起こしていって、あたり一面が火の海に変わっていった。



「不死王、お爺ちゃんは無事なの?」

「おそらく問題ないだろう。 あれで一応力は抑えたようだからな」

「あれで……」

「我が友が自身の国を滅ぼした魔法に比べれば可愛いものだ」


 そういえば出会ったころに聞いたことある! 魔導王国の最後はお爺ちゃんの隕石を降らせる魔法でだったんだ。


 確かにそれから比べれば可愛いものかもしれないけど、それでも流星群(メテオスウォーム)の10倍の破壊力はありそう。


 時折爆風が私の方まで来ると不死王が庇って守ってくれる。

 庇ってくれるのは嬉しいし、瞬時にして修復するからといっても、頭が吹き飛んだりするのを何度も見させられる身にもなってほしいな。




 しばらくして轟音が聞こえなくなる。


 あたり一面が焼け野原になっていて、動いているものは何一ついない。



「お、お爺ちゃん?」


 不安で口ずさむ程度に呼んでみる。


 帰ってくる返事がなくて、嫌な思いがよぎる。

 ほぼ骨で感情も声でしかわからないけど、少なくとも私の事を大切にしてくれた。



「ぶっはーー! 死ぬかと思ったわ!」

「我が友、リッチになった時点で既にもう死んでいるはずだが?」

「そのぐらいわかっているわ! 儂はお前と違い人間だった頃の思い出もあるし、今でも消滅はする。 消えることの不安は消えぬもんなんじゃよ!」

「そういうものなのか、覚えておくとしよう」

「お爺ちゃん! 死んだかと思ったよ!」

「ヨシヨシ、セーラムよ儂はそう簡単に死なんから安心せい」


 上空からオル君も降り立ってこの3人を顔をしかめながら見つめてくる。

 それもそのはずで、私は永遠の寿命を持つハイエルフで、お爺ちゃんは生きる為に人間をやめてリッチになったんだけど、リッチになっても永遠ではないから、【死の神ルクリム】の代行者になる事で永遠の命を手に入れた。 そして不死王、そもそも死ぬって何? っていうような存在。 こんな不死者が3人もいれば顔をしかめるのは仕方がないよね。



「セーラム……友達がいるのは悪いことじゃないと思うけど、その2人と仲が良いっていうのはあまり僕はオススメしないんだけど……」

「セーラムの尻を追いかけ回す金色のトカゲよりはずっとマシじゃ!」

「はうっ!」

「数千年後も我はセーラムと友で居られる。 定命の貴公に、それは無理だろう?」

「ぐはぁ!」


 オル君はお爺ちゃんと不死王に言い返す言葉が見つからないで、泣きながら帰って行っちゃった。




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