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ロミオ・イ・フリエタ

 大山脈の洞窟の中に入ると当然真っ暗だ。

 セドリックが素早くランタンに火をつけて辺りを照らすと、セーラムが使った魔法で入口辺りにもいたゼノモーフの死体がたくさんある。



「こりゃまた女帝様はとんでもない魔法を使ったものですな」

「俺がまだ地下世界(アンダーダーク)にいた頃でも、あれほどの魔法は一度もお目にかかったことがないな」

「発動詠唱に原初という言葉が含まれていた。 きっと魔法の原型辺りなのだろう」

「だったらなんでウィザードたちは使わないんだろう?」

「きっと代償も大きいと言ったところなんだと思いますな」


 入口の状況があまりにも壮絶だったため、全員がセーラムの使った魔法の凄さにしばらく身動きを取ることすら忘れていた。



「さて……と、ここからどこを目指せばいいんだろう?」

「まずはロミオ・イ・フリエタを目指してみますかな?」


 セドリックは何度かロミオ・イ・フリエタに足を運んだことがあって、そこまでなら道案内ができるという。



「しかし見事なまでに魔法の使い手全員を排除してきたな」

「これもあのニークアヴォの奴の作戦なんですな」

「もっともそのニークアヴォも1つだけ見落としがあったがな。 なぁマイセンよ」

「え!?」

「おいおい忘れたのか? 、お前のもう1人の女に魔法が使えるのがいただろう?」


 ディルムッドに言われて思いだした。



“その誤解を招く言い方はちょっとどうかと思いますけど?”


 キャロが姿を出して抗議してくる。


 そうだ、キャロの事は好きだけど彼女は今やゴーストであって(キャロン)の霊だ。



“それに残念ながら私にはゼノモーフを相手に出来るようなウィザードじゃありませんので”

「あいっかわらずマイセン意外と喋るときはクールだねぇ。 とりあえずいるかいないかだけで十分だ」

「それじゃあ先を急ぐとしますかな?」




 先頭をセドリックにロミオ・イ・フリエタを目指して進んでいく。

 セドリックの横に暗闇でも視界が効くディルムッドがつき、その後をリセスドとガーゴが続く。

 最後尾に俺、そしてキャロも今は姿を見せて浮遊しながらついてきている。



「ロミオ・イ・フリエタまではこの大きな道を真っ直ぐ行けば到着で、ドワーフたちはこの道を大動脈と呼んでるそうですな」

「つまり脇道はあるわけだな?」

「そうですな、脇道には魔物が出る事もあるから近づくなと言われてるそうです……っな!」


 言うなりセドリックがナイフを投げつける。

 投げた先にはゼノモーフの姿があって、眉間にあたる部分に深くナイフが刺さっている。

 ズズズっと崩れて倒れた。



「中はさほど奴らはいないのですかな?」

「……いや、どうやらこちらに気づいて向かってきているようだ」


 ランタンに照らし出されたリセスドの顔が口元を釣り上げて鞭を掴み出す。



「広いここで迎撃しよう!」


 近づく『(オーラ)』の数からして大した数ではなさそうだ、だけど……俺の直感が、先を急げと言っている。



「一気に駆け抜けよう!」

「直感ですな?」


 俺が頷くとリセスドだけは近づく音の方を向いたまま動こうとしない。



「お前たちは先を急ぐといい、俺がこの大動脈を死守しておこう」

「何を!?」

「町について奴らが来ていては探すものも探してはいられないだろう? 倒した後すぐに後は追うから行ってくれ」


 パシーンと鞭を鳴らしてコマンドワードを言うとリセスドの鞭が炎を纏いだす。



「灯りも十分だ」


 どうする? どうしたらいい? 思い出せこういう時、兄さんならどうしていた?



「……わかった。 みんな先を急ごう」

「良いのかマイセン」

「兄さんならきっとそうしている」

「正直言うとリーダーの兄が選ばれなかったのが不思議なぐらいでしたな」


 おそらくそれは兄さんがメビウス連邦共和国に必要だからだろう。



 リセスドにみんな言葉もなく一度見つめた後、背中を向けて小走りに先を急いだ。



「伝承の噂では初代パーラメントは試合で世界(ワールド)守護者(ガーディアン)に勝ったと言われるほどですから心配はないでしょうな」


 え! あのサハラ様に試合で勝った!?



「宿場町で共に戦ったが、もはや人を超える強さを持っていた。 あの時俺がいなければもっと優位に立っていただろう」


 ディルムッドまでリセスドを高く評価している。 と言うよりディルムッドが足手纏いになるほどだったとは。




 リセスドを残して先を急いだ俺たちは、程なくしてロミオ・イ・フリエタの入り口だとわかる場所まで辿り着く。



「こいつは相当ですな……」


 セドリックがその入り口の有り様に渋い顔を見せる。



「似た者というわけではないが、ドワーフの王国もドゥエルガルとそう変わらないようだな。 大きな違いといえば規模か」


 ディルムッドは地下世界(アンダーダーク)時代のドゥエルガルの場所と比べているようだ。

 今もしここにトラジャがいたらなんて言っていたんだろう。



“静か過ぎると思わない?”


 そんな中、キャロが見回しながらつぶやく。



「キャロの言うように確かに静か過ぎる。 でも『(オーラ)』は感じられないな」

「それはつまりハズレ、ここではないということか?」

「わからない。 セドリック、ロミオ・イ・フリエタは広いの?」

「そりゃあもう、ドワーフの王国ですからな」

「そっか、なら彷徨いてみよう」


 ロミオ・イ・フリエタは光苔をふんだんに使っているようで、灯りがなくても見渡すことができた。

 セドリックも今はランタンのシャッターを下ろしている。


 ロミオ・イ・フリエタの中にはトラップの類はないというから俺が先頭を進むことにした。

 まぁ町というか王国にトラップなんか設置するはずはないからね。

 で、隣にはキャロが浮遊しながらついてきていて、すぐ後ろにガーゴ、最後尾にセドリックとディルムッドがついてきている。


 時折足が止まるような建造物があって、少しだけ観光気分になってしまう。

 かなり破壊されて跡地のようになっている【鍛冶の神スミス&トニー】様を祀る神殿に、ドワーフといえば鍛冶場、今は火も消えてあちこちに鉄が転がっていた。

 そこでちゃっかりセドリックは使えそうなものを勝手に持っていったのは見ないことにしておいた。



「あそこがロミオ・イ・フリエタのドワーフの王、コイーバが住む城ですな」



 そう言われた先には行き止まった場所に巨大な城が見える。 その手前には地下であるにも関わらず見事な庭園があって、地下だというにも関わらず床が青々としていた。




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