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突破口

「よぉっし! オル君、ドラゴンブレス行っちゃえー!」


 セーラムの掛け声でオル様が下降しながら、大きく息を吸いだして通り過ぎざまにドラゴンブレスを吐きだす。

 真下に向かって吐き出された炎のブレスが、オル様が通過した地面を焦がし、ブレス範囲にいたゼノモーフたちも焦げていく。



「やっぱりドラゴンの吐くブレスは強烈ですなぁ!」

「まだまだ行くよーーー!」


 一度ドラゴンブレスを吐き終えて、オル様は上昇させて旋回すると大きく馬車が揺れるから落ちないように身近なものにしがみつく。



「あと2回じゃ全然足りそうにないなぁ……」

「何が?」


 ドラゴン種が吐く強烈なドラゴンブレスには日に3回までしか吐き出せないという制限があるのだという。

 確かに今のオル様のブレスを目の当たりにして思ったのは、もし町にドラゴンが襲ってきて無尽蔵にあんなブレスを吐き続けられたらひとたまりもない。


 だけど今、大山脈に集結しているゼノモーフの数はそれでも僅かに減った程度でしかなかった。



「これじゃあまるで蟻の巣から這い出た蟻の群れを相手にしているようですな」


 セドリックの言う通りだ。 しかも俺たちは今からその蟻の巣のようと言った中に入り込もうとしている。


 状況の厳しさを見て全員の顔が曇る。 まぁガーゴは表情はわからないけど。


 そうこうしてる間にオル様が2度目のドラゴンブレスの体制に入り、その後制限である3度目も吐き終えてしまう。



“どうするセーラム? 馬車を下すスペースすら確保できないよ?”

「もぉぉしょうがないなぁぁぁ……」


 セーラムが俺の方を向いてくる。



「ここは私とオル君で入口を死守するから、みんなは中に入ってくれる?」

「え!?」


 あの数のゼノモーフを相手に大山脈のロミオ・イ・フリエタへの入口を死守するなんて言い出す。



「無理だよ、一度戻って他の手段を考えよう!」

「マイセン、そんな猶予はないかもしれない。 見てみろ」


 ディルムッドに言われて下を覗き込むと、ゼノモーフたちの姿に変化が訪れる。



「まさかあいつら!」

「どうやら飛ぶ気のようだな」


 背中から昆虫のような半透明な羽を広げだし始めた。

 もしここでやらなければ今度はゼノモーフは空からも各地を襲いだし始めてしまう。



「適応していっているんでしょうな」

「迷っている暇はなさそうだ」


 くそっ……



「わかった。 オル様とセーラムに外は任せる。 俺たちだけでなんとしてでもゼノモーフの女王(クイーン)を倒そう」





 話が決まるとセーラムは馬車から身を乗り出して飛び降りる。

 全身金色の鎧と翼をマナで紡いでオル様と並走しはじめて何か話し合っているようだ。



「行くよ! チャンスはたぶん一度きり、外の奴は中に絶対に入れないから、中の奴はなんとかしてね!」


 セーラムが馬車の横を飛びながら叫んできたから頷いて返す。



「みんな戦闘準備をして! 中にどれだけいるかわからないけど、今俺たちがやらなかったらこの世界はゼノモーフに間違いなく支配される! 俺たちにかかっているんだ!」


 頷いてくるみんなの顔を1人づつ見ていき、最後に並走しているセーラムに向けて頷いてみせた。




 パンッ!


 セーラムが一度手を合わせて鳴らしたあと、ソーサラーのように普段詠唱なんかしないはずのセーラムが印字を組み始めた。


 すると巨大な魔法陣のようなものが入口上空にいくつにも重なって現れだす。



「魔の原初にして元なる魔法。 今その力を解き放たん。 原初の力を顕現す。 雷よ。 反応を引き起こし光の刃となって駆け抜けろ。 連鎖雷撃(チェインライトニング)!」


 セーラムが俺が今まで聞いたことがないほど長い魔法詠唱と発動詠唱を唱えた。



 次の瞬間、空中に現れた魔法陣からものすごい轟音と閃光を発しながら、雷が地上にいるゼノモーフに向かって落ちる。

 そして地上に落ちた雷は、そこを中心にして次々とゼノモーフを伝って流れ広がっていってバリバリと音を立てている。



「みんな、降ろすよ!たぶん少しは入口の中にも流れてるから減ってると思う!」


 驚いてみている俺たちにセーラムがそう言うと、ガクンと急下降しはじめる。



“衝撃に備えて!”


 オル様からも声がかかってしっかり掴まる。


 ぐんぐん降下して行って地面に差し掛かったところで馬車を手放したようだ。

 2回転ほど馬車が転がって止まる。


 俺は変な格好でひっくり返ってしまっていた。



「イッテテテテ……みんな大丈夫?」


 見回すと俺以外全員問題なさそうだ。

 セドリックはいつの間にか身体をロープを巻きつけてあり、リセスドも鞭で固定していた。

 ディルムッドはそもそも衝撃が来るときに瞬間移動を繰り返していたようで、ガーゴも尻尾と手で器用に掴まっていたから問題なさそうだった。


 ……ズルいんでない?



 馬車から這い出て辺りを見回すと、足元は地面ではなくゼノモーフの死体で埋め尽くされていて非常に歩きにくそうだ。



「入り口に急ごう!」


 ゼノモーフの死体で歩きにくい。

 入口まで辿り着いて、全員を確認したあとセーラムの姿を探す。



 目と目が会うとセーラムはピースしてニッコリ笑顔を見せたと思うと、迫り来るゼノモーフに紡いだ槍を次々と投げつけていた。



「ここはセーラムに任せて俺たちは進もう」


 この時点で俺とセドリックは、リセスド、ディルムッドにガーゴだけになっていた。




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